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王を問う  作者: 大石安藤
13/31

13・落ち合う

「成果はあったか」

「よく、わかりませんでした」

 落ち合ってすぐに尋ねられ、つい出した半ば負け惜しみのような言葉に、山之師さんのしは「見栄を張るな」と言いながら、コウの肩を軽く叩いた。

「なんにせよ、龍に関する物があればお前にはすぐわかる。私はその意味を教える。それらがコウを王に導く。王となる者は龍を見つけに湖へ行く。この国の龍気は今はお前にしかわからない。それだけは確実なんだ。焦らなくていい」

「……はい。それらしき感じはしませんでした」

 コウはしゅんと肩を下げて呟いた。役目に追われるようで気が急くのだが、龍気はいつものようにふわりふわりと巡っているようで、時折強く香る。

 それは父が生きていた時と変わらないため、コウはなぜあの時、父の気配が消えた時、龍気を見失ったのだろうと思う。壬京じんきょうのこの中心部辺りは特に龍気が強く、とても残滓とは思えない。

「王が居られた都なのだから、龍気が強いのは当たり前だろう」

 山之師はコウに乾いた葉で包まれた弁当を渡しながら続けた。

「今晩は冷めた飯で我慢しておくれ。茶も冷たいが瓶にあるだけ飲んでいい。どうやら王の崩御の事はまだ市井にまでは回っていないようだが、王城は警備が増えたと怪しんでいる者もいたから時間の問題だろうなぁ。もっともあれだけ元気な王がいきなり身罷ったとは誰も考えないんだろう」

「父上のお体はいまはどこでしょう。……わからなくて」

 それは確かなのだ。生きていた時は父の事をふと思うだけでどこにいてもすぐにわかった。父の気配は龍気に似て、誰よりもはっきりとしていた。だが体だけとなってしまったら、もうまるっきりいけない。わからない。

「……あの侍従なら大丈夫だろう。悪いことにはしていまい。どちらにしても警備が固いし、真織宮まおりのみやは存外しっかりと統率をしているから王城に近寄るのは危ない。宮の滝に無ければ壬京より先に当たった方がいい場所がいくつかある。そこへ行こう」

「都を出るのですか」

「ああ。コウは真織宮で誰に会った?」

大橘妃だいきつひ様と玉緒宮たまおのみやの兄上、あと月斎げっさい。衛士も何人か会いました」

「龍に関する気配を感じた者はいなかったのだな」

「はい」

「なら恐らく真織宮も次代の王ではない」

 コウはなんとなくそう思っていたが、いざ言い切られると胸が痛んだ。兄がどれだけ懸命に父の補佐をし、王太子として働いてきたかを知っている。だがそれらは全部無駄だと言われたような気がしてしまった。

「こればかりはどうしようもない。さぁ、優しい師父しーふーがこの美味い果物の皮を剥いてあげるからそんな顔しなさんな」

「ありがとうございます。山之師」

「だから師父って呼んでいいって言ってるのにー」

 山之師はまったく頑固な娘だと言いながら、固い柑橘の皮を丁寧に剥いてはコウの小さな手に落としていった。








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