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白薔薇園の憂鬱  作者: 岡智みみか
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第4話

「そりゃ怒られるよね。やり過ぎだったと、もちろん今では思ってるよ。だからその晩はたっぷり叱られて、僕たちはもうあの灯台に近づけなくなってしまったんだ」

「だからリンドグレーン氏は、あんな大がかりな仕掛けを作ったんですか?」

「そう。父はもう一度、僕たちにあの灯台で遊んでほしかったんだ」


 夏はあっという間に過ぎ去る。

学校が始まると、充さんはこの場所を離れ、アニタはスウェーデンに帰ってしまった。

次に二人が再会したのは二年後の冬で、もう一緒にいたずらをする年齢ではなくなっていたんだって。


「だけどやっぱり、落とし穴はまずいよね。あそこは塞ぐか、せめて滑り台にしておこう」


 充さんは楽しそうに笑っている。私は誰よりも怒ってみせた。


「そうですよ。卓己が落っこちたんですよ! 卓己に何かあったら、どうしてくれるんですか」

「えぇ! 卓己が落ちたの? そりゃマズかったね。分かった。じゃああそこは、滑り台に作り直しておくよ」

「充さん。ぜんっぜん反省する気、ないですよね」

「もしかして、紗和ちゃんも一緒に落ちたの?」

「私なんかより、卓己が……」


 その瞬間、玄関の呼び鈴が鳴った。

勢いよく扉が開く。


「ミツル! 来たよ!」


 元気よく飛び込んで来たのは、白銀のショートヘアに緑の目をした、背の低いかわいらしい女の子だった。


「アニタ!」


 車いすの充さんが、飛び上がるほど驚く。


「アニタ! 日本に来るのは、来月だって言ってなかった?」

「ミツルを驚かせようと思ったんだよ。びっくりしたでしょ?」

「だけど、来るなら連絡ぐらいしてくれたって!」

「あはは。ミツル、会いたかった」


 ここの一族は、とにかく人を驚かせないことには、生きていけないらしい。

アニタは充さんの頬にチュッとキスをした。


「ミツル。元気そうでよかった」


 充さんも彼女に腕を伸ばす。

2人はしっかりと抱き合った後で、顔を上げた。


「アラ、皆サン、ミツルのお友ダチ?」


 そこからアニタは、時々おかしくなる日本語で弾丸のようにしゃべり続けた。

彼女はその間にも、充さんの髪に触れ肩に触れ、こめかみにキスをする。


「二人とも、とっても仲良しなんですね」


 千鶴がため息まじりにそう言うと、彼は照れくさそうに笑った。


「僕が車椅子になって、アニタが世話をしてくれることになったんだ。彼女がここへ来るまでに、灯台を開ける方法を見つけておきたかったんだ」

「あなたたちが、鍵を見つけてくれたの?」


 アニタは私より、少し背が低い。

くるくるよく回る表情で、私を見上げた。


「ありがとう。すごく、うれしい。感謝します」


 彼女の目は清らかに澄み切り、子供みたいにキラキラしている。


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