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白薔薇園の憂鬱  作者: 岡智みみか
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第2話

「やっだ~! 先輩、開かずの灯台なんだったら、肝心の絵が見れないじゃないですかぁ」


 千鶴はのんきに、あははとか言って笑っている。

が、笑っている場合ではない。

キッとした私に、卓己はハラハラしている。

のんびりと充先輩は続けた。


「まぁ、開かないのなら、開かないままでもかまわないんだけどね。でもちょっと、そのままにしておくのは残念な気がして。できれば僕も、もう一度あの中に入ってみたいんだ」

「どうして開かずの灯台になったんですか?」


 私の問いかけに、彼は静かに微笑む。


「父によって、封印されてしまったんだ。それ以来、誰も入り口のドアを開けられない」

「あー。じゃあ、えっと、例えばの話ですが、ブルドーザーとかで入り口をぶち壊すとか?」


 私の心からの真剣な提案に、充先輩と千鶴はキョトンとしている。

卓己が答えた。


「紗和ちゃん。そんなことをしたら、あんな小さな灯台は、そのまま倒壊してしまうよ」

「業者に頼むとか。あ、もしかして鍵でもかかってるんですか? 鍵屋さんなら、すぐにネットで検索できますけど」

「紗和ちゃん。そういうことなら、先輩は僕たちを呼んだりしないよ」

「窓を破って、侵入するとか」


 真剣に充先輩に詰め寄る私に、千鶴が笑った。


「ホントだ。卓己の言ってた通り、紗和ちゃんって、おもしろーい!」


 先輩も一緒になって、くすくす笑っている。

笑われようが笑われなかろうが、そんなことは関係ない。

私はおじいちゃんの絵が欲しいだけだ。


「どうすれば、三階にたどり着けるんですか?」

「それを考えて欲しくて、君たちを呼んだんだ」


 白く小さなかわいらしい灯台が、突然難攻不落の要塞に見え始める。

物理攻撃が無理なら、いっそ空からパラシュートで飛び降りて侵入するとか? 

千鶴が改めて充先輩に尋ねた。


「で、どうして先輩のお父さまは、あの灯台を封印してしまったんです?」

「実は僕には、仲良しの従兄弟がいてね。女の子なんだけど、その子とよくこの別荘で遊んでいたんだ」


 彼は黒くさらさらした前髪を、遠くに見える灯台へ向けた。


「ところがある日、彼女があそこから落ちた」


 え? どういうこと? 

静かなリビングが、より一層静かになる。

潮風が優しくシュロの葉を揺らした。


「それ以来、父はあの灯台を封印してしまったんだ。その日から、あの中へ誰も入っていない。それは突然の出来事で、中はそのまま、当時の状態のままになっている」


 彼の口調は、あくまで穏やかだった。


「そこにあったものは、なに一つ取り出すことが出来なかった。そんなことをする余裕さえ、その時の僕たちには残っていなかったんだ。そうやって三上恭平の作品は、あそこに取り残されてしまった」


 灯台は海を見下ろす、険しい断崖の絶壁に立っている。


「だからもう一度、出来ればあの灯台を開いてあげたいんだ」

「なるほど、分かりました」


 そういうことなら、これは正攻法でいくしかなさそうだ。

私はギュッと灯台をにらみ上げると、覚悟を決めた。


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