表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白薔薇園の憂鬱  作者: 岡智みみか
51/85

第2話

 黄色いオープンカーは走り出した。

初夏の澄み切った空が、海沿いに続いている。

なんの曲だか分からない洋楽が車内に流れていた。

これは千鶴の選曲なんだって。

だからきっと、お洒落な曲に違いない。


「紗和ちゃん、ごめんね。急に私もついてくることになっちゃって」


 そう言った後部座席の彼女を、私は振り返った。


「ううん、全然。むしろ邪魔してるのは、私の方だし」

「ふふ。卓己が紗和ちゃんと並んでるの、初めて見たー」


 卓己め。

普段私のことを、仲間内でどんなふうに話しているんだろう。

にやにやと笑う千鶴に、ちょっとうんざりしている。

その千鶴が言った。


「紗和ちゃんは、充先輩と会うのは初めてなんだよね」

「そ、そうなの。どんな人なのか、楽しみー」


 彼女は後ろに座っているから、顔の表情が読み取れなくて、どういう返事の仕方をすれば正解なのかが分からない。


「あはは。面白い人だよ。私も久しぶりに会えるから、楽しみなの」


 その充先輩こと長谷田充さんというのが、これから私たちの訪ねていく人だ。

卓己の一つ年上の先輩で、先日のアートフェスに卓己たちが来ていたのを見かけ、声をかけようとしたけど、人が多すぎてその場ではあきらめたんだって。

千鶴は風に流される黒く長い髪を手で抑える。


「卓己と三上恭平が知り合いだったってのは、私たちも知ってたんだけど、まさかそのお孫さんが、紗和ちゃんだとは思わなかったなー」


 卓己がおじいちゃんの弟子だったっていうのは、比較的世間に知られていることだ。

そのフェスの会場で三上恭平の実の孫が来ているという話しを耳にした充さんは、ふと自宅に置きっ放しになっている、おじいちゃんの作品を思い出したらしい。


「僕と紗和ちゃんが知り合いなんだったら、恭平さんの作品を紗和ちゃんに返してもいいって、言ってくれたんだ」


 そういう経緯を経て、今回のこのドライブが決行された。


「紗和ちゃん。充先輩の前では、ちゃんと大人しく、いい子にし、してるんだよ!」

「分かってるって。余計なお世話よ」


 赤信号で車が停止したその瞬間、卓己はもの凄く心配そうにこちらをチラリと盗み見る。

私はプイとそんな彼に顔を背けた。

卓己は何かを言いかけたようだけど、青になり、そのまま車を走らせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ