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白薔薇園の憂鬱  作者: 岡智みみか
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第5章 第1話

 宇野家にとって、大切な取引先であり一人娘の恋人候補である私の会社の上司、佐山CMOこと佐山颯斗氏が邸宅内で襲われた。

命に関わるような大けがとかでもなんでもなくて、かすり傷一つついてないんだけど、とにかく佐山CMOは怒っている。

それは宇野家にとって、大問題だった。


 その瞬間、家にいたのは私と佐山CMO、宇野家の家長である孝良氏と、その弟の篤広氏、孝良氏の息子である学さんと娘の詩織さんだ。

全員がリビングに集まる。


「詩織、お前がやったのか!」


 最初に口を開いたのは叔父の篤広氏だった。


「お前はずっと嫌がってたもな! こいつとお付き合いするのを!」


 え~、さすがにそれはないわぁ~と思ってたら、やっぱり佐山CMOが口を開いた。


「……いや、襲ったのはあなたですよね。すっとぼけてますけど。あなたはバレてないつもりかもしれないけど、普通にバレてますから」


 リビングのソファによこになり、額に乗せられていた冷たいおしぼりを外しながら、彼は体を起こした。


「詩織さんが部屋から出て行ってすぐに、突然部屋の明かりが消えました。真っ暗な部屋の中でも簡単に移動が出来たのは、あなたが彼女の部屋をよく知っていたからではないのですか?」


 佐山CMOは、ゆっくりと視線を詩織さんに向ける。


「女性が護身用のスタンガンを持つ場合、普通なら外出時に携帯するはずだ。安全なはずの家の中では、使う必要がないからね。それなのによく使う鞄の中ではなく、机の引き出しに入れてあったということは、家庭内に身の危険を感じる場面があった……。ということではないですか?」

「叔父の度重なる身勝手なセクハラ行為には、心底嫌気がさしていました」

「詩織、お前は何を言ってるんだ! 小さいときから、あれほどかわいがってやったのに! あんなのはセクハラじゃない、単なる接触だ、スキンシップだ、常識の範囲内だろ!」


 それで詩織さんの恋人候補になっている佐山CMOに焼きもちをやいて、スタンガンで襲ったってこと? キンモっ!


「次に私の嫌がることをしたら、そのスタンガンで抵抗するつもりでした。本気で嫌がっているんだってことを分かってほしくて」


 詩織さんの細い肩が怒りと恐怖に震えている。


「いつか一線を越えられるような気がして、恐ろしくて……。彼に相談したら、それを用意してくれました。私が自分のことを安心して相談出来るような相手は、あの人しかいません」

「あの男か!」


 今度は父の孝良氏が大声をあげた。


「あの男はダメだって言っただろ!」

「もう子供じゃないんだから、私の好きにさせてよ!」

「詩織!」


 孝良氏は突然、私を怒鳴りつけた。


「お前が黒幕か! 詩織と颯斗くんの仲を引き裂こうとしているのは?」

「えぇ~? なんでわたしぃー!」

「そうじゃなきゃ、こんな所にまでのこのこやってきて、余計なことをしたりしないだろ!」

「余計なことなんて、なんにもしていません!」


 飛んだとばっちりだ。

他に攻撃できる相手がいないからって、いくらなんでも酷すぎる。

孝良氏はぎりぎりと歯を食いしばった。


「じゃあどうして、詩織からカップを奪うようなことをさせたんだ」

「は? カップを奪う? 私が詩織さんに? なにそれ意味分かんない。そんなことしてません!」

「分かったぞ、お前と詩織がグルになってるんだ。詩織はあの男に騙されている。お前は颯斗くんに近づきたいがためにカップを口実にした。お前が詩織を言いくるめてカップを奪い取り、それで二人の仲を引き裂こうとしたんだ!」


 あぁ、どうしてこう、自分に都合のいいようにしか物事を見ようとしないんだろう。

だから詩織さんがこれだけ苦悩していることに、全く気がつかないんだ。


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