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二人のトワイライト  作者: ニシロ ハチ
35/37

エピローグ 3


 笛の音。

 単調なリズムを繰り返す太鼓。

 赤く燃える提灯。

 鉢巻に、下手な踊り。

 発電機の音と鉄板と焼きそば。

 ソースの香り。甘い匂い。人の匂い。

 あとは、人。人。人。

 汗。

 浴衣に扇子。

 三百円のかき氷を販売している出店は、シロップを入れている容器がべとべとになっていた。

 右手の綿菓子は、一瞬で無くなってしまった。

 左手のお父様は、上を見上げると、必ず目が合い、微笑み返してくれる。

 二人は、太鼓と笛と踊りから遠ざかる方向に歩いている。どこを見ても、人だらけなので、真っすぐ歩くことが出来ない。

 でも、はぐれない様にと、お父様と手を繋ぐことが出来る。彼女はそれが嬉しかった。

「なにか食べたいものはないか?」お父様が優しく話しかけた。

「今、探しています」彼女は答えた。

 彼女はキョロキョロと周りを見渡したが、何年も同じものを使いまわしているのがわかる、簡易式の出店のビニルに書かれた文字しか見えない。ここは、人が多すぎるのだ。それに。同じ店が何件もある。焼きそば屋は既に四軒あり、かき氷は五軒、イカ焼きは二件、から揚げは五軒、くじ引きが三軒もあった。その文字が見えれば、隣のお店を見る。左右どちらにも出店があるので、首を振るのが大変だ。偶に、行列が出来ているお店もあり、その列は、人の流れを遮る様に、並んでいるので、そこで、人口密度がさらに高くなった。人の熱気で、彼女は汗をかいた。

 どこでも食べられるものしか置いていない。でも、綿あめは、初めて見た。お父様にきけば、砂糖だと答えた。凄く大きかったので食べきれるか心配だったけれど、食べると、口の中で溶けて、僅かにザラザラとした食感が残った。

 人の隙間から、りんご飴という文字が見えた。さっきも文字は見えたけれど、肝心の商品が人に遮られ見えなかった。でも、今回は見ることが出来た。

「綺麗」彼女は思わず立ち止まった。

「これはなんですか?」彼女はきいた。こんなに大きな飴は見たことがない。口の中に入らないほど大きいのだ。食べきるのに掛かる時間を計算した。

「これは、りんご飴と言って、りんごの周りに飴を付けている」お父様は答えた。

「中にりんごが入っているのですか?」

「そうだよ」

「食べてみたいです」彼女は思わず言った。前に三人ほど並んでいたが、すぐに掃けていった。既に調理済みだから、料金を支払うだけでいいらしい。

 お父様が支払い、りんご飴を彼女に手渡した。

 持ってみると、持ち手の棒の部分が割り箸で出来ていた。一杯に入ったグラスを持つ様に、真っすぐに持たないと、りんごの重さで、割りばしが折れてしまいそうだ。

 真っ赤で綺麗なりんご飴を眺めていた。舐めてみると、甘くて美味しいと彼女は思った。りんごを食べようと、噛んでみたけれど、飴が硬く、そして大きいので、口をいっぱいに広げても、力が上手く伝わらなかった。四メートルくらいの人がいれば、大きな口で噛み切る事も出来るのだろう。

「あっ、お父様、面白い変化がありました」彼女は言った。「私は、飴が綺麗で美味しそうだから、これを食べたいと言いましたが、今は、中のりんごが食べてみたいと思っています。りんごの味は、既に知っているのにです。とっても不思議ではありませんか?」彼女は、感想を言った。彼は優しく微笑んでいた。

 これの類似はないかと、思考を巡らせた。なにか使えそうな閃きがあったからだ。彼女はしばらく考えながら歩いた。

 周りの人間は、風景となり、ノイズとなり、やがて消えた。

 音も遠ざかり、聴こえない。

 食べるのも忘れて、歩いていた。りんご飴が重くて、邪魔だった。

 左手だけは、まだ、温かい。

「美味しくなかったかな?」お父様の声で、彼女は、自分の体の存在を思い出した。

「いえ、少し考え事をしていました。とても、美味しいです」彼女は、飴を舐めた。さっきと同じ味がした。思考は、保留にしたまま、後で考えることにしようと、彼女は思った。

「お魚がいます。あれはなんですか?」彼女はきいた。

「金魚すくいだよ。ポイというもので、別の容器に入れたら、その金魚が貰える」

「えっ?金魚が商品なのですか?」彼女は驚いた。

肉や魚や野菜が販売されているのは知っている。でも、それは、蘇生も出来ない、既に死んだ食材だ。これとは明らかに異質だ。

 これは、ペットに近いのだろう。でも、ペットなら、自分で好きな子を選びたいのではないだろうか?この販売方法では、気にいった子が必ず手に入るわけではない。この祭りで何度も見た、くじ引きに近い仕組みだろう。でも、この魚たちは、今も、生きているのだ。そこが違う。生命をギャンブルの景品にしている様なものだ。

 それに、儲かるシステムでもない。魚は多ければいいというものでもないし、ちゃんと大きさや模様を選びたいはずだ。不合理な販売方法だ。

「もしかして」彼女は、あることを閃いた。「金魚は美味しいのですか?」

 とてもそうは見えないが、それなら少しだけ納得だ。少し残酷で、あまり想像したくないけれど。

「食べ物じゃない」お父様がそう答えた。

 安堵と疑問がソフトクリームみたいに渦を巻いた。祭りというのは、今回だけでは無いのだろう。それなら、今回売れ残った金魚たちも、次回にまた同じような機会がある。

 でも、次の祭りまで、これだけの魚を飼育するのは大変なのではないだろうか。何度も何度も、売れ残ってしまうと、飼ってすぐに寿命を迎えることになる。

売れ残った金魚は、まとめて売れば、買い手がいるのだろうか。でも、もしかしたら、その間に死んでしまう子もいるかもしれない。ここにいる大勢の人が、それを容認している。

自分の中の、周囲の人間への認識のギャップを修正した。マイナスの方向へ動いた事になる。どうして、それをマイナスだと感じたのか、その自分の認識も興味深い。

「金魚には、親や兄弟と一緒に暮らす生態はないのですか?」彼女はきいた。

「さぁ、どうだろうね。私にもわからない」お父様は答えた。

「離れ離れになってしまっては、悲しむ子もいるのではないですか?」

 お父様は、彼女の問いには答えず、大きな左手で彼女の頭を優しく撫でた。少し、恥ずかしかったので、彼女は目を閉じた。そして、その大きくて暖かい手の感触を確かめた。

 彼女は、水槽の中の金魚を見た。

「これをやってみてもいいですか?」彼女は言った。

「ああ。いいよ」彼女の父親は、お金を支払い、店主から、ポイとお椀を受け取った。彼女は持っているりんご飴と、彼が持っている道具を入れ替えた。彼女は、ポイの紙の部分を手で触った。今にも破れてしまいそうな紙だと思った。そして、彼女は水槽の前に屈んだ。

「待ちなさい」お父様がそう言ったので、彼女は待った。お父様は、彼女の裾を器用にめくってくれた。浴衣というものを初めて着る彼女だったので、大きな裾が自分の体の一部とは思えなかったのだ。

「ありがとうございます」彼女は、改めて水槽を見た。

 すべての金魚に目を通した。気になる金魚を見つけた。水槽を回って、その金魚の近くに行った。

「この中の魚なら、好きなのを選んでいいよ」店主は、水槽を移動した彼女に言った。

 左手のお椀は、傾けて金魚が入りやすいようにして、さっき見つけた金魚を探した。すぐに見つかる。

 彼女はイメージ通り、金魚をすくった。紙が破れる事もなく、簡単にとれた。

「これでいいのですか?」彼女は店主に確認した。

「えっ?ああ。そんなのが混じっていたか?すぐに…」店主が眉を寄せて言った。

「私はこの子が欲しいのです」彼女は店主の発言を遮った。「水槽の中の金魚ならどの子を選んでもいいはずです」

「……ああ。まぁ、そうだけど。……ポイが破れるまで何度でもやっていいよ」店主は答えた。

「いえ。この子だけで十分です」

 店主は、ビニル袋に水と金魚を入れて、彼女に渡した。気味が悪いという表情を、店主は隠そうとはしなかった。彼女は礼儀正しくお礼を言って、その場を離れた。

 彼女はまた、お父様と手を繋ぎたいと思ったが、金魚が入ったビニル袋とリンゴ飴があるので、両手がふさがってしまった。彼女はこれを後悔した。りんご飴はすぐには食べきれないからだ。彼女は、ビニルに入った金魚を眺めながら、りんご飴を舐めた。

 こういう販売方法は、例えば、犬や猫なら、問題になるだろう、と彼女は考えた。その境はどこにあるのだろうか?

 鳥はどうだろうか?それもやはり反対という人が多いはずだ。でも、既に死んで調理された食材としてなら、日常的に行われている。例えば、くじの景品として、牛肉が受け入れられているのだ。死んでしまったら、その生物は保護されなくなってしまう。生死というのは、重要なファクタとなるはずだ。

植物も許されるのではないだろうか?花を景品としても誰も問題にしないだろう。恒温動物は、殆ど駄目だろう。同じ哺乳類でも鯨はどうだろうか?見た目は殆ど魚である。でも、別の問題として、あの大きさでは、誰も欲しがらないはずだ。でも、大きさというのも、重要になってくるのではないだろうか?例えば、恒温動物でも、昆虫の様に小さければ、もしかしたら、受け入れられるかもしれない。

 あとは、鳴き声があるかどうかも関係するはずだ。これは、鳴き声があれば、人間が意思の疎通が出来ると勘違い出来るからだ。もしくは、ほんの僅かにも知能があると、考えられるのかもしれない。あとは、動き回るかどうか。そして、天然か人口かというのも大切だろう。

「お父様、一つ思いついたことがあります」彼女は言った。「金魚すくいの様な販売方法が許される生き物とそうでない生き物の違いですが、一つは恒温動物であるかどうか、二つ目は、鳴き声があるかどうか、三つ目は、嫌がっている素振りがあるかどうか、最後に人間が繁殖させたかどうかだと思いです」

「どういうことかな?」彼は言った。

「恒温動物が容認されない理由としては、私たち人がそうだからです。きっと、自分に近い存在だと勘違いしているのだと思います。そして、温かい生き物が死んで冷たくなってしまうと、それは、動かなくなるだけでなく、温度の変化もあります。これが、昆虫の死との違いです。温度を失うことが、それ以上に大きな損失と考えているのではないでしょうか。そして、鳴き声と嫌がる素振りというのは、それを人が認識出来るかどうかが、重要となってきます。やっぱり、相手が生きる為に拒否反応を示したり、苦しそうな仕草をされると、可哀そうだと思ってしまうのだと思います。例えば、お米が人間と挨拶を交わす事が出来れば、人は、誰もお米を食べなかったと思います。そして、自然界で生きている生命を捕獲して販売するというのは、その命を奪うのと同じことです。命の数がマイナスとなってしまいます。ですが、人間が繁殖させた場合は、その種の数を増やした事にもなるので、結果的には、プラスマイナスゼロになる、もしくは、プラスとなるはずです。それが、罪悪感を緩和させているのではないでしょうか。この四項目にあてはまらない生き物は、同じような販売方法でも容認されるのではないでしょうか?勿論、その他の判断材料があるはずですし、この項目にも程度があります」

「それを今考えたのかな?」お父様が言った。

「はい」

「私にも、よくわからない。でも、そうやって考えるのはいいことだ。時間が経つとまた、考えが変わるかもしれない。だから、何度も何度も考える事だ。それに、今のは、面白い考え方だね」

 彼女は、褒められて少し嬉しかった。金魚は、狭いビニル袋の中で、浮かんでいる。

「お父様。人間以外の生き物は、自然界で生きていくのと、人に飼われて生きていくの、どちらが幸せだと思いますか?」

「それは、どんな環境で育ててあげるか、どれくらいの愛情をもって接してあげるかによるだろう。でも、どんなに相手を思っても、本当に幸せかどうかは、決して人にはわからない。私にもわからない、難しい質問だよ。でも、さっきと同じように何度も何度も、相手の事を考えていれば、相手も幸せだと思ってくれるのかもしれない。相手が幸せだと、自分も嬉しくなるものだよ」

「私は、この子を大切にしたいです。それに私は…」彼女は恥ずかしくて、お父様を見た。彼は優しく微笑んでいたので、彼女も笑った。またの機会に伝えようと、彼女は思った。

「ところで、どうして、死んでいる金魚を選んだのかな?」お父様は、ビニル袋の中で浮かんでいる金魚を見て言った。

「生きている金魚は、あの水槽の中で、既に見ました。それだけで十分です。それに私は、この子の生死に興味がありません。この子が泳いでいる姿を見た事はありませんが、想像は出来ます」

「どういう意味かな?」

「この子が生きている状態と死んでいる状態、どちらも私に与える影響は等しいという事です。それは人間と人形にも置き換える事が出来ます。全ては、私がなにを考え、なにを思うか。この子は、たった今から翼を生やして空を飛ぶことも、何倍にも体を膨らませる事も出来ます」彼女は、微笑んで金魚を見つめた。「そうね。名前はキャンディなんてどうかしら」

 そう言って、彼女はりんご飴を舐めた。

 周囲の人は、少なくなっていた。遠くで太鼓と笛の音が聴こえる。行列もないので、スムーズに歩く事が出来た。そうなると今までの人混みの異常さが露になる。環境が変化する事で容易に気付く事もある。

 風が吹いた。

 彼女は目を閉じ全身でそれを感じた。

 目を開けてお父様を見た。

 目が合う。

 彼女は笑い、お父様も微笑み返した。

 もう、笛の音は聴こえない。

 振り返ると、誰もいなかった。

 初めから、誰もいなかったのではないか?

 自分の両手を見た。

 そこにはまだ、金魚とりんご飴があった。

 たった今、この世界に創られたのかもしれない。

 隣を見た。

 きっと、お父様は隣にいた。

 お父様?

 誰?

 ……………。

 目が覚めた。

 彼女は汗をかいていた。

 また、あの日の夢だ。

 昨日も同じ夢を見た。

 原因はおそらく……。

 部屋の中に、人がいた。暗くてよく見えないが、私のエンプティドールだと、シルエットでわかった。水を飲もうと体を起こすと、そのシルエットが動いた。

「いつ寝てるの?」彼女は言った。「ああ、そうか、ネオンじゃないのか?」

「違う」エンプティドールは答えた。

 彼女は、自分の頭が回っていない事を自覚した。水を飲む為に、端末のあるデスクまで移動した。水を飲むと体の中に水分が染み渡る様な感覚があった。よく出来た仕様だといつも思う。彼女は、ベッドに戻り腰かけた。

 あれは、ここに来てから、山を下りた最初で最後の日だ。

 お父様が連れて行ってくれた。昔の形式に拘っている祭りらしい。

 あの祭りの後、キャンディが入ったビニルを、いつも眺めていた。

 でも、段々と、体が腐ってしまったのだ。

 毎日、濁った水を捨てて、綺麗な水を入れた。

 キャンディの体から千切れた一部を、どう処理するのかで迷った。人間の体から切り落とした爪や髪の毛みたいなものだ。背びれの一部や、体の一部。それは、キャンディではないはずだ。

 でも、ある日、キャンディは、体を保てなくなった。

 そして、キャンディを庭に埋めた。

 土を掘る時に、涙が流れたのを覚えている。

 もっと、泳ぎたかったよね?

 空を飛ぶみたいに、優雅に滑らかに。

 大丈夫だよ。

 私が…。

「ねぇ、ラムネは、昔の夢とかみる?」彼女はエンプティドールに言った。

「寝たら」素っ気ない返事が返ってきた。

「考え事してたら、眠気がどっかいっちゃった。いつもは外を散歩してリラックスするんだけど」彼女は嘘を付いた。こういえば、話し相手になってくれるだろう、と考えたからだ。

「まだ、日が昇っていない」

「明るくはなってるんじゃない?」彼女は、時計を見た。

「見る」ラムネは答えた。

「それって現実に起こった事を、そのまま再現されている?それとも一部だけがリアルで後は、勝手に補正が入ってるのかな?」

「一般的には後者が大多数」

「ラムネは?」

「どちらも」

「正直に話して欲しんだけど」彼女はそこで長い間を置いた。「お父様が死ぬのは、いつだと思う?」

 部屋の中は暗くて静かだ。窓はなく、間接照明の僅かな明かりしかない。彼女はそれが好きだ。

「今日」質問してから三秒後にラムネが答えた。

「どうして?」彼女が思っていたよりも早い。

「武器の運搬や準備にそれだけの時間が掛かるから。それ以上早くはならない」

「もっと遅い可能性は?」

「可能性は限りなく低い。敵にそのメリットが無いから」

「昨日の昼みたいに、撃退出来るかもしれないけど」

「出来ない武器を運んでくるだけ」

「……そっか」

 だったら、それが残された時間だ。

「お父様に会って話したい事がある」彼女は言った。

「寝顔でも見るの?」ラムネが答えた。

「起きてからだけど」

「いいんじゃない」

「えっ?止めないの?」

「起きている時なら、ベルの仕事だから」

「ふーん。そっか。止められるかな?」

「確実に」

「どうしたらいいと思う?」

「買収すれば」

「冗談?」彼女は少し笑ってしまった。

「さぁ」

「最後に会いたいって言ったらわかってくれると思うけど、どうかな?」

「可能性は低い」

「どうやったら確実に会えるかな?」

「死んでから会えば?」

 ラムネの言葉に、彼女は息をのんだ。

 夢と同じだったからだ。

 でも、それじゃ間に合わない。

 欲しいのは、自分の答えではなく、お父様の答えだからだ。でもそれは、自分になんの意味があるのだろう?

 矛盾している。

 昔から。

 ずっと。

 キャンディを庭に埋めた。

 でも、キャンディの体の一部は、濁った水の中に溶けていただろう。

 千切れた細かな背びれだって、キャンディだったはずだ。

 それらは、捨てた。

 庭に埋めたのは、臓器と骨と大きな塊だ。

 それだけが、キャンディじゃない。

 それを知っているのに埋めた。

 それに、キャンディは、最初から死んでいた。

 でも、生きていたって、餌を食べて、泳いで、細胞分裂を繰り返すだけだ。

 綺麗な状態を長く維持出来る程度の差。

 死んでしまったら、腐ってしまう。

 腐るよりも早く、新しい細胞を自ら生み出すのが、生きている状態だ。

 自分には、なんの影響もない。

 影響がないはずなのに、涙が溢れたのだ。

 矛盾している。

 思考と行動が一致していない。

 キャンディを思い出す。

 綺麗な赤と白の体。

 お父様を思い出す。

 あの祭りでの、優しい顔。

 それだけで十分なはずだ。

 なのに、どうして埋めたのだろう?

 なのに、どうして会いたいのだろう?

 わからない。

「冗談なんだけど」暗闇からラムネの声が聞こえた。


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