表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人のトワイライト  作者: ニシロ ハチ
3/37

第一章 2


 失敗は許されない。

 失敗したなら、不安定な状態で立っている積み木から、軸となっている部分を取り除く事になる。積み上げた時間も努力も、一切顧みる事なく、あっという間に、崩れてしまうだろう。崩れてしまった後は、瓦礫が邪魔して、修復どころじゃなくなってしまう。

 だから、今回の依頼は特別だ。

 モニタには、青い水の中を、気泡が下から上に昇っている映像が流れていた。

「今回の件で、新しい情報はない?」僕は、イオに言った。

 イオは、AIだ。この部屋での会話なら、全て拾う事が出来るので、方向も気にする必要はない。物凄く小さな声で囁く様に呟けば、流石に聴こえないだろうが。

 すぐに、モニタに要点のまとまった記事が、いくつも表示された。広告をカットされているのが一番優れている所だろう。でも、今回は知りたい情報は一切なかった。それは、イオの情報収集能力の問題ではなく、情報そのものが漏れていないということだ。

 イオは、僕の知りたい事を調べてくれるだけじゃなく、この部屋や僕の体のメンテナンスまで、全てを任せている。僕よりも、僕の体に詳しいだろう。

 モニタを見ると、気泡の映像に切り替わっていた。僕が記事を読んでいない事を、瞳の動きや呼吸から察して、イオが切り替えたのだろう。

 時間を確認すると、もうすぐだった。

 要人警護の経験はない。エンプティの操作になら自信はあるが、それはゲームみたいなもので、実戦経験は数える程だ。ネオンも経験はないと言っていた。あるのは、ラムネくらいだろう。ラムネにアドバイスを求めたが、返って来た答えは、「周囲の全てを犠牲にしてでも、対象を守ればいい」とのことだった。ラムネが言っていた事は極端だが、優先順位は決めておいた方がいいだろう。

 今回は、リンゴを守るだけじゃなく、もう一つの目的がある。

 長時間のダイヴに備えて、準備が必要だ。ブラックボックスと呼んでいる金庫が部屋の隅にある。中の荷物を取り出すのに、幾つもの手順が必要だ。ブラックボックスは、内径が二メートルの立方体なので、中に人が隠れる事も出来る。当然、その中に大切な物がある。今回の任務に必要な物を取り出して準備をした。いつもは、飲み物をグラスに移して、デスクの上に用意しておくが、今回は、ボトルと空のグラスを用意した。

 マツリノ氏が用意したエンプティは、一応はプロ仕様のボディだ。ステーションにいる量産型よりは性能は優れているが、もっと上のエンプティもある。最上位のモデルは、莫大な費用が掛かるのに、普通の人ならその能力を発揮する事が出来ない。これは、カメラや車や端末にも共通するだろう。でも、あのクラスのエンプティを持っているのは、大富豪だからだ。

 椅子のリクライニングを倒して、楽な姿勢になった。

「イオ、例の件は大丈夫?」

「その質問は三回目です。今回の依頼は精神的な負担が大きいと考えられる為、休息を提案します」

 僕は思わず笑ってしまった。

 でも、その通りかもしれない。少しだけ緊張しているだろう。

 あの時は失敗した。もう、これ以上の失敗は許されない。

 もう、後が無いのだから。

 大きく息を吐いた。そして深呼吸。

「そうだ。なにか素敵な映像を見せてよ」僕は言った。

 モニタには、望遠鏡で覗いた様な大きく丸い月が既に映っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ