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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一日で悪役令嬢が婚約破棄され、追放され、幸せになる話

作者: 月宮 かすみ

「いきなりだが、君との婚約を破棄させてもらう」

「えっ?」


 突然婚約者である第一王子に婚約破棄を告げられる。いったいどうしてなのだろうか?


「そんな、どうしてですか!? わたくし、破棄される心当たりなどないのですが……」

「理由はな、君が悪役令嬢だからだよ。そしてこの人が僕の新しい婚約者のヒロインだ」

「よろしくお願いしますわ」


 第一王子の隣には昨日学園に転校してきたヒロインさんがいた。いつの間に。


「一目惚れしてね。だから婚約は無かったことにしてもらいたい。それに、君はヒロインをいじめていたそうじゃないか」

「えっ!? それは、確かに庶民が貴族の学園に入学したので多少の嫌味は言いましたが、いじめについてはまだ……」

「それでも予定はあったんだろう? 悪いけどこの話はここまでだ。出て行ってくれ。これからヒロインとイチャラブチュッチュをしなければいけないからな」

「ちょっ、ちょっと待ってください! わたくしの話を――」


 無理やり兵士に連れられ、城を追い出されてしまう。展開が早すぎて頭がついて行かない。とりあえず今日は帰宅して、明日また第一王子に話を聞きに行こう。



 重い足を引きずるようにして、家まで帰った。



 * * *



「悪役令嬢、お前は追放だ。我が家から出て行ってくれ」

「えっ!? どうしてですかお父様!?」


 家に着くなりお父様に離縁を言い渡された。どういうことなのかついて行けない。


「第一王子に婚約を破棄されたそうじゃないか。そんな奴を我が公爵家に置いておけるわけがない」

「たっ、確かに破棄を言い渡されましたが、明日また理由を訊きに――」

「いいから出て行ってくれ。使用人にお前の荷物と多少の金を渡してある。それをもって遠くへ行ってくれ。私の目の届かないところにな」

「ちょっ、ちょっと待ってください! わたくしの話を――」


 帰るなり早々に家を追い出されてしまった。本当に訳が分からない。まるで坂道を転がり落ちるように話が進んでいく。いったい何があったのか。



「はぁ、あっという間にすべてを失いましたわ。わたくしが何をしたといいますの?」


 門の前で途方に暮れる。わたくしはどこに行けばいいのだろうか。


 ――刹那、元我が家に隕石が落ちる。


「えええええええええ!? いったい何がありましたの!?」


 爆風により飛ばされそうになるが何とか耐えた。悲鳴や怒号で一気に騒がしくなる。


「領主様の部屋に隕石が落ちた! 誰か医者を!」


 先ほどまでお父様と話していた部屋、そこに隕石が落ちたらしい。無事だろうか?


「まあ、わたくしにはもう関係ない話ですわね」


 思えばろくでもない父親だった。娘を政治の道具としか考えていなかったような人だ。


「こういうのを【ざまぁ】というのかもしれませんわね」


 生死を確認する前にその場を立ち去る。肉親が死んだというのに、悲しいという気持ちは無かった。そんな自分に嫌気を感じながら。


 ――瞬間、城が謎の爆発をした。


「えええええええええええ!? ちょっと、ちょっとですの!? 謀反ですのよ!?」


 もはや自分で何を言っているのか理解すらできなかった。頭の中に浮かんだ単語を吐いただけだ。


「いっ、いったいこの国で何が起こっているというの? いえ、わたくしの周りでなにが……」


 たった数時間のうちに婚約が破棄され、家から追放され、我が家が無くなり、城が無くなった。これはもはや呪いではないだろうか?


「まっ、街から出る前にお祓いを受けようかしら? なんだか怖くなってきたわ」


 寒くもないのに体が震える。自分を抱きしめながら街道を歩いた。たしかこの先に行きつけの教会があったはずだ。そこでお祓いをしてもらおう。



 * * *



 教会への道を黙々と歩く。教会の後はどこに行こうかと考えながら。


「誰も知らないところで農業をするのもいいかもね」


 小さい頃はお花を育てるのが好きだったのを思い出した。今は亡き母と一緒に。あのころは楽しかった。どこで道を間違えたのだろうか。


 わたくしの横を豪奢な馬車が通り過ぎる。


 馬車か、お母様と行く買い物は楽しかったな。特に欲しいものとかは無かったけれど、一緒に居るだけでいい思い出になったものだ。


 溜息を吐きながら歩く。状況が落ち着いてきて頭の整理がつくと現実が付きつけられていくのがわかる。もうわたくしの人生はここで終わりなのだろうか? どうせあがいても小娘一人が生きていけるような時代ではないことは裕福だったわたくしでもわかる。ならばいっそ苦しむ前に――


「ちょっとそこの美しいお嬢様」


 後ろから声を掛けられた。振り向くと先ほど通り過ぎた馬車が止まっており、そのすぐ側に一人の美丈夫が佇んでいた。


「なにか? わたくし急いでいるんですけど……」


 特に急いでいるわけではない。ただ今は誰とも話したくないだけだ。 


「これは失礼。私は隣国の第一王子と申します。突然で申し訳ございませんが、お嬢様に一目惚れをしちゃいまして、是非とも私と結婚をしていただきたく――」

「よろこんで!」




 こうしてわたくしは幸せになった。



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