赤べこ
会話文オンリーです。
「赤べこになりたい」
「なんで?」
「イエスマンになりたい」
「あー……(なにかあったのかなぁ)。首振り人形じゃダメなの? ボブルヘッドだっけ? ニコニコ笑ってるやつ」
「ダメ。あそこまで終始外面とりつくろえない」
「うわぁ……(わかるぅ)」
「口答えすることもなく、普段は半歩後ろを黙ってついていきたい。重たい荷物も肩代わりしたい」
「えー……そこまで従順だと辛くない? 鳴きたくならない?」
「鳴かない。いや、やっぱりちょっとは鳴くかも」
「だよねぇ」
「でも別にいいの。ドナドナせずに一緒にいてくれれば」
「はぁ、なるほど(?)」
「だけど赤べこだから、最終的にはおいしくいただかれたいかな」
「いやいや、いただかれるんかい」
「どうせ牛に生まれたならね」
「なるほどぉ(赤べこ木製だから、虫くらいしか食べないんじゃないかなぁ)」
「でも誰でもじゃダメ」
「そここだわりあるんだ」
「丁寧に解剖して、真心こめて調理して、骨の髄まで残さず平らげてくれる人じゃないとダメ」
「急にサイコな話になったね」
「お墓も作ってほしいし、月命日にはお花も供えてほしい。わたしより先に死なないでほしい。でもわたしが死んでも、絶対幸せに生きてほしい」
「(あ、そういう)ワガママなイエスマンだなぁ」
赤べこは福島県の郷土工芸品です。名前通り赤い牛の置物で、首が上下に揺れます。




