しゅうまつ、なにする?
「明日世界が終わるとしたらどうする?」
「なんなの、急に。……アンタと二人でいるんじゃない?」
「ごめーん。俺、今夜実家帰るから」
「なんでそんなひどいこと言うの!?」
「部屋の中が荒れてるからじゃね?」
そう言って、男は室内を見渡した。テーブルがひっくり返り、あっちこっちに物が散乱している。理由はなんだか忘れたが、口論の末に女がちゃぶ台をひっくり返し、そこから物を投げ合う大乱闘にもつれ込んだのだ。二人の間ではよくあることだった。
「許してワン」
女はそばに転がっていた柴犬型のクッションを両手で持ちあげ、男に向かって突き出した。柴犬の鼻が男の鼻先に触れる。男はフンと鼻で笑うと、柴犬の顔を押しのけた。
「俺はそんなに安い男じゃねぇよ」
そう言い捨てて立ちあがる。女はクッションを抱きしめてうつむいた。
「なにしてんの? なんか言い返せよ」
「だって……」
「だってじゃわかんねぇよ」
ぴしゃりと言いのけると、鼻をすする音が聞こえてくる。男はため息をついた。
「俺たち死ぬまでずっとこんな感じなんだろうな」
「え?」
男が呟くと、女はやっと顔をあげた。目元が涙でぬれていた。
男はその場に腰を降ろし、トレーナーの袖で女の顔を乱暴に拭う。「いたい……!」という訴えは無視した。満足がいくまで涙と鼻水を拭いとり、ブサイクな女の顔を見て深く頷く。
「よし」
「よしじゃないよ!」
「確かによくない」
女の反論に今度は男も同意を示し、再び部屋の中を見渡して肩をすくめた。この状態はよろしくない。ぐちゃぐちゃになったトレーナーの袖をまくり上げる。
「部屋もきれいにしないとな」
そう言って女に向かって手を差し出す。彼女はおずおずとその手を掴んだ。相変わらず柴犬を抱いたままだが。
「ごめんなさい」
「俺も悪かったよ」
頭を下げあった二人の視線が再び重なり合う。女は上目遣いにたずねてきた。
「部屋片付いたからって、実家に帰ったりしないよね?」
「それはムリ。だいぶ前から決めてたし、親にも伝えてるから変更不可」
「なんで!?」
あっさりした男の返答に、女は絶望的な顔をする。男はゆるみそうになる顔を引きしめ、あくまで無造作に、女の額へデコピンを放った。「いたい……!」小さな悲鳴と共に、女の腕から柴犬が転がり落ちた。
「お前を連れてくからだよ」




