それでいいのにゃ?
二匹の猫が並んで川をのぞきこんでいた。尻尾の長い黒猫と、尻尾の短い白猫だった。
黒猫が言った。
「おなかすいたなぁ」
まんまるに開かれた金色の目が、水面を泳ぐ魚を追いかけてギョロギョロと動き回っている。
すると白猫はこう返した。
「あの魚をつかまえようよ」
「そうだね! そうしよう!」
すごい名案だと、黒猫は耳と尻尾を空に向かってピンと伸ばした。けれどすぐに首をかしげる。
「でもどうやって?」
猫達は水に入るのが大の苦手だ。水面までは少し距離があるし、脚を伸ばしたくらいじゃ到底魚を捕まえられそうにない。
さっきまでの元気はどこへやら、黒猫は耳と尻尾をしおらしく垂らした。地面の上でへたれてしまった長い尻尾を、白猫は前脚でパシパシ叩いた。
「キミの長いシッポに虫をくくりつけて川にたらすんだよ」
「どうしてさ?」
「そうすれば、虫につられた魚がキミのシッポに食いつく。そうなったらこっちのもんさ。キミがシッポをひっぱりあげれば、魚もいっしょについてくる。ボクらはごはんにありつけるってわけさ」
「人間が川辺でよくやってる『つり』ってやつだね!?」
「そのとおり。この方法なら水につからなくても魚をつかまえられるだろ?」
白猫の話を聞いた黒猫は元気を取り戻して、また耳と尻尾をピンと立てた。
「それじゃあさっそく『つり』をしてみよう!」
黒猫はそこら辺を飛んでいたトンボを素早く捕まえると、丈の長い草を使って自分の尻尾にくくりつけた。けれどすぐには釣りに取りかからず、白猫にたずねた。
「ぼくが『つり』をしているあいだ、きみはなにをするんだい」
「ボクはうしろでまわりをみはっておくよ。魚をよこどりするような、わるいヤツがちかづいてこないようにね」
白猫が答えると、黒猫はようやく納得して川に向き直った。キラキラと瞳を輝かせて、尻尾を水面へ垂らす。
楽しそうな黒猫の背中を横目に白猫は欠伸をする。そしてその場で丸くなった。
「ボクのしごとはもうおしまいさ」
あとは寝て果報を待つだけだ。




