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第十五魔「真相」


「ご主人。ご主人よ。お主がなぜ『最弱』なのかと言われたのかよくよく分かった。理解(わか)ったぞ」


「は? 今はそんなことよりアイツを倒すことを――」


「ご主人。ご主人よ。我がご主人よ。この状況において儂を見くびっておるご主人よ。

 改めてその眼で眼前に広がる惨状を目撃せし、その歪な眼球で舐め回してみよ」


 確実に、こちらを殺そうとしてくる殺意の全てを器用に。華麗に躱しながら九尾はそう言う。

 眼前て。


「あやつら、のう。死んでしまったやつのことなんて儂は大して気にしない性質ではあれども、抉れた肉体や地面をよく見よ」


「…………抉れているけど」


「のう、ご主人よ。形に違和感もないかのう」


 確かに、犠牲になった人の中には原型が残った状態のものもある。

 その中で、傷跡。

 いや、衝撃波の跡は歪で形としても不形であった。


「大きな弾丸にぶち抜かれたみたいな傷口だな」


「うむ、及第点じゃ。では、あやつの攻撃手段も大体想像できるじゃろ」


「……え」


 肉体も。

 地面も。

 まるで何か大きな弾丸がぶち抜いた――通り過ぎたような状態。

 それは弾丸のような形状よりも、まっさきに思いついたのは。


「アイツ、目玉を飛ばしてきてるのか……?」


「うむ、ご明察じゃ。そこまで言わなければ分からなかった時点で落第かもしれんが、まぁ儂に免じて及第点じゃな」


 何様だコイツ。

 いや、それにしてもアイツの攻撃手段が判明したとしてそれでどうなるというのだ。


「む、ご主人は目に見えるものしか信じない愚か者ならば、あやつが飛ばしてきているものが()()な時点で連想できないとしてじゃ。

 遠方からの攻撃を得意としているやつが、近接を怠らないわけがないじゃろ」


「いや、でも、詰め寄ればなんとかいけないか」


「じゃから『最弱』なんじゃよ」


 飛んでくる殺意に規則性もない。

 前から後ろから、横から。上から下から。

 ありとあらゆる方向から飛んできているものを、九尾は顔色一つ変えず、むしろ、俺に対して侮辱を込めた双眸で見つめるほどに呆れる余裕まである。

 そんな余裕があるなら、詰め寄ったら一撃でいけないのか。


「関連じゃよ。関連。ご主人よ。

 あやつの体。攻撃手段。遠方からの攻撃に執着している姿勢。その全てを小さき脳みそでこねくり回して考えてみよ。あやつに近づくことがどういうことか」


 目玉が攻撃手段なのは理解している。

 目玉でできた体なのも理解している。

 そして、近づけばどうにかできるという心理を刺激している戦法というのも理解している。


 奴は、隙をついて。もしくは無茶してまで近づいてくる者がいざ攻撃を加えようとした瞬間。

 爆発するのだろう。

 その身体中に張り付けた目玉を四方八方に散らして、全方位を。東西南北上下を。

 そうやって、致命傷――もしくは絶命させるつもりなのは理解している。


 理解している。


 だが、それを危惧している九尾が理解できない。


「あやつは恐らく、儂が近づいた瞬間に爆ぜるつもりなのじゃろ。そうすれば、この()()()()攻撃と人体を貫通するほどの素早さに儂の体は木っ端微塵になってしまうじゃろう。

 そうなってしまっては、ご主人を守ることだってできなくなる。ゆえに、安易に近づくことは避けて遠方から応戦するべき作戦を考えた方が些か有用かという話なんじゃが――」


「別にいいだろ」


 恐らく、時間が止まった。

 一瞬だが、確実に。

 九尾の時間は止まった。


「…………は?」


 目を見開いた九尾。それでも理解できていないような姿勢に向かって、俺は契約主だと誇るように。

 無表情で。

 さも当然のように。


「アイツが爆ぜるつもりなら、爆ぜさせればいいだろ。爆発でもなんでも。それでお前が傷ついたとしても、それはお前が近距離の攻撃すら躱せない未熟者てだけだ。

 死んだら契約は強制的に破棄されるし、俺としてはお前が死のうがどうなろうが気にならないし、気にもとめない。

 ――だから、行けよ」


 

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