第10話 郁磨の悩み事2
「い、い、郁磨!私と付き合いなさい!」
郁磨は思考が一瞬ショートした。
(付き合うって?!何?!こいつの事だし、本気ではないのかも·····)
チラッと萌夏を見る。
下を向いてて顔の様子は分からなかったが、耳がすごく赤かった。
(これマジモンやーん!)
郁磨は自分が今置かれている状況をようやく理解した。
(ど、どうすればいいんだ!これ?!)
郁磨はモテる。だから告白も日常茶飯事のこと。
いつもは相手に関して微塵も興味が無いため得意の毒舌で振ってきた。
けど、今回は違う。
ちゃんと思いを寄せてる人から来たのだ。
でも、郁磨は思った。
(男なら自分から言ってなんぼなんじゃないんか?受けるだけで良いのだろうか)
悩みに悩んだ結果、1つの答えをだす。
「か····買い物にか?それなら全然付き合うぜ!いつにするか?明日土曜だし明日でもいいよ!」
動揺してるのが分かるほど早口で言ってしまった。
そして、萌夏は。
「え、あ·······それでいいよ」
少し拗ねた様子で郁磨の返事を呑んだ。
「じ、じゃあ詳細は後でLINEしとくわ!」
そう言ってササッと郁磨は帰る。
ポツンと残された萌夏は、
「そういう意味じゃ無いっての·····バカ」
郁磨は、
「明日俺から告白する、男として!」
双方異なる思いを抱くのであった。
郁磨は家に着くと急いで階段を駆け上がり姉の部屋へと向かった。
「姉ちゃん!ちょっと相談が······」
扉を思い切り開けると、そこには·····
「真弥ちゃん·······」
「桃寧ちゃん·······そこは·······」
「はい、ストーップ!!」
何かよからぬ展開になりそうだったので郁磨は慌てて2人を制止した。
「い、郁磨?!」
「郁磨くん、急に入ってこないでよ!」
2人は慌てて乱れた服をなおす。
「それで、何しに来たの?」
桃寧が顔を逸らしていた郁磨に聞く。
「明日萌夏と出かけるんだけど、その時に告白······しようと思ってて·····」
「「きゃー!!」」
2人は抱きついて飛び上がった。
「うぅ·······やっと、郁磨にもそんな時期が···」
「つい、この間までお姉ちゃん!お姉ちゃん!って甘えてきてたのに······」
2人は思い出を振り返りながら泣いていた。
「いつの時だよ!それは!」
郁磨はすかさずツッコミを入れる。
「郁磨、お姉ちゃん達に任せなさい!」
桃寧と真弥は郁磨の手を握って微笑んだ。
「任せたよ、お姉ちゃん!」
郁磨もニコッ笑ってこたえた。
「てことで、お姉ちゃん達はさっきの続きしてるから入ってこないでね♡」
郁磨はポイッと部屋から出されてしまった。
「なんなんだよ、もう!」
郁磨は少し不安になったとさ。
◇◇◇◇◇
来る土曜日。
郁磨は5時にセットしていたアラームを止め、姉の部屋に行く。
「姉ちゃん!服どうしよう!」
バンっと扉を開けて中へ入ると。
桃寧と真弥は体を寄せ合いキスをしていた。
それはもう濃厚な。
つーっと唾液が伝い、桃寧はすごくトロンとしている。
「真弥ちゃん······もっとぉ······♡」
「桃寧ちゃんかわいい······」
真弥は桃寧のほっぺをモチモチしながら濃厚なキスを交わす。
郁磨はその光景に言葉を失い、そっと扉を閉めるのであった。
何とか服を選び待ち合わせの場所に走って向かう。
「まだかしら····」
腕時計はもうすぐで集合時間を指すところだ。
「萌夏ー!おまたせー!」
萌夏は郁磨の声を聞くと素早く髪をセットする。
「おはよう、遅いじゃない。遅刻スレスレよ」
「ごめんごめん、服選ぶのに手間取っちゃってさ。じゃあ行こうか」
「うん·······」
萌夏は服を選ぶのに手間取っていたと聞いて
(男子が服を選ぶのに手間取っだってことは今回の買い物に意識してたってこと!?)
萌夏は少し顔を赤らめてニヤけた。
「何ニヤけてんだ?」
「内緒♪」
「ていうか、俺どこ行くか決めてないんだけど·····」
「それなら大丈夫よ、私の買い物の荷物持ちになってもらうから」
そう言って最初に連れて来られたのはランジェリーショップだった。
「も、萌夏······ここは俺が入る場所じゃないよな?」
「もちろんついてきてもらうわよ」
「いやいや!お前の下着選びに俺が付き合えるわけないだろ!」
萌夏は突然郁磨の腕をギュッと掴み。
「か、彼氏のフリしてれば大丈夫よ」
郁磨はめちゃくちゃ心臓の鼓動が早くなった。
腕には程よく柔らかい触感を感じて動けなくなっている。
「じ、じゃあ私試着室で着替えてくるから前で待ってて」
そう言って萌夏はカーテンを閉めた。
「柔らかかったなぁ······」
郁磨は腕に残る触感の余韻に浸っていた。
ふと店の外を見るとクラスの女子がこちらへ来るのが見えた。
郁磨は焦って
「萌夏!中に入れてくれ!」
「え?ちょっ?!」
萌夏の返答を待たずして郁磨は試着室の中へ入る。
クラスの男子がランジェリーショップにいるなんて知られてしまったら郁磨のイメージが最悪となってしまう。
「ありがとう、も·····」
振り返ると先程選んでいた水色にフリルのついた下着を萌夏は身につけていた。
「あ、あんまり見ないでぇ······」
「ご、ごめん!悪気はないんだ!」
郁磨ほサッと目をそらす。
「こ、これサイズが少し小さくて······」
郁磨はそれを聞いてチラッと見てみると確かに少し”それ”を包むには小さい気がする。
「お前·······でかくね?」
「べ、別に太ってないから!」
「いや、そういうことじゃないんだけど·····」
(目のやり場に困んだよ!)
郁磨は頭の中で理性と激闘を繰り広げていた。
「それで······これ似合ってる?」
萌夏は顔を赤らめながらも郁磨に感想を求めてきた。
「に、似合ってるんじゃないか」
郁磨はプイと目を逸らして答える。
「ありがとう、じゃあこれ買って来るね」
萌夏が着替えようとした時、下にある服に足を取られ滑ってしまい
「キャッ!」
「危ない!」
郁磨は手を伸ばしたが間に合わず押し倒す形で転倒してしまった。
郁磨は自分の手のひらにある感触に疑問を覚えた。
「柔らかい······」
「郁磨、ダメ······んっ····!」
郁磨は萌夏の胸を思い切り掴んでいたのだ。
「ご、ごめん!!」
すぐに手を離す。
「郁磨のエッチ·····」
二人は気まずいまま店を出る。
「お昼でも行くか?」
萌夏は若干拗ねている。
「お前の好きなデザート奢るからさ、許してよ」
「それなら·····まぁ」
髪の毛をいじりながら答える。
郁磨はホッとした。
近くの喫茶店に入り、席に着く。
「サンドイッチのセットをください。ドリンクはアイスコーヒーで」
「わ、私はこのケーキセットをください。飲み物はアイスティーで」
店員さんは「かしこまりました」とキッチンへ向かっていった。
郁磨は店員さんが離れたことを確認して萌夏の方へ向く。
「萌夏、後で大事な話がある」
「ここじゃダメ?····」
「ここだと、人が多いかな·····」
「今、人はあの女性客しかいないよ」
確かに角の席の方に二人組の女性しかいない。
郁磨は覚悟を決めた。
「萌夏······俺、萌夏のこと好きだ」
店の中はシーンとしている。
「私も······郁磨が大好き」
萌夏は泣きながら答えてくれた。
郁磨は恥ずかしくて顔を隠す。
二人は会計をして外へ出た。
外はもう薄暗くなっていた。
萌夏は郁磨の手をそっと握り
「これからよろしくね、郁磨!」
「こちらこそ、萌夏」
二人はそっとキスするのであった。
お久しぶりの更新で申し訳ないです。
今回のお話はどうだったでしょうか?
郁磨の告白の時にいた女性客は皆さんも気づいていたであろう、桃寧と真弥ですね。
次回はいよいよ夏休み編を予定しております!
イチャイチャ度もどんどんUPさせていきたいと思います!
それではまた今度!