第1話 百合とはこういうことだ
ある日の朝、清々しいほどよく晴れた空。
そんな爽やかな朝を背景に彼女たちは·······
「桃寧ちゃん·······お〜き〜て」
ベットで寝ているのはそれはそれは純粋無垢な女の子。
そんな女の子の上に乗っかり発育の良さを伺える体を擦り付けながら頬を触っていた。
「ん〜あと5分〜」
布団をザッと被り抵抗する。
現在の時刻は午前8時。日曜のため学校はないものの、出かける予定を立てていたので起こしに来ていた。
「あぁん!隠れないでよぉ〜」
寝ている女の子。櫻井桃寧に乗っかっていた女の子は何を思ったのかおもむろに同じ布団の中へと入っていった。
「へへ、あったかぁい」
布団の中は、一言で言えば天国だった。
寝巻き姿ではあるものの、ボタンが所々外れあられもない姿になった女子高校生2人が同じ狭い布団の中で密着しているのだ。
世の中のオタクは大歓喜であろう。
「真弥ちゃ〜ん?」
眠気まなこで入ってきた女の子。三山真弥を見つめる。
「桃寧ちゃん··········」
鼻と鼻がふれあいそうな距離で2人は静かに見つめ合う。
そしてゆっくり近づき··········
「いや·····何してるの?」
すんでのところで桃寧の弟。櫻井郁磨がはいってきた。
「な?!な、なにもしてないよぉ?」
「何で疑問形なの?真弥姉」
郁磨は真弥のことも本当の姉ではないが姉呼びをしている。
郁磨の本当の姉。桃寧はと言うと。
「あ、おはよぉ郁磨·······」
「姉ちゃん、髪ボサボサ。布団の中で何してたの?」
郁磨がジト目でこちらを伺ってくる。
視線が痛かった。鋭すぎる。
「まぁ、いいや。朝ごはんできてるから、真弥姉も食べていいよ」
「え?!ほんと?ありがとう〜」
「それより、色々見えてるから、着替えて·····」
郁磨はサッと視線を逸らし、顔を赤らめた。
郁磨は中学3年生。思春期真っ只中であるから、花のJK2人があんな姿になっていたら嫌でも恥ずかしくなってしまう。
「あれ〜?郁磨くんもしかして照れてる〜?」
真弥がからかう。
「うっせ!さっさと下こい!」
そう言ってバンッ!と扉を閉めて言ってしまった。
「真弥·······」
後ろからギュッと桃寧が抱きついてきた。
真弥の背中には暖かく柔らかい感触が伝わっていった。
(ほわ·········幸せ······)
一瞬でトロ〜とした顔になる。
「やっぱり大好き!桃寧ちゃん!」
振り返りこちらもギュッと抱き締め返した。
「さっさと下こーい!」
郁磨の下からの叫びにも気づかず甘い朝を過ごしたのであった。
◇◇◇◇
不機嫌な郁磨との朝ごはんはとても気まずく。さっさと食べて真弥は隣の自身の家へ帰って、出かける準備を始めた。
「桃寧ちゃん······どんな服装なら喜んでくれるかな?」
クローゼットから服を引っ張り出して、ベットに並べる。
「もしかしたら······桃寧ちゃんとあんなことや、こんなこと〜」
下劣な妄想を広げながら選んだ服に着替える。
そして、玄関から外へ出ると。
「遅い·······真弥」
「ごめんね〜服選ぶのに手間取っちゃって」
そこまで言うと真弥は目を見張った。
桃寧の服装は黒をベースとした、ワンピースで少しばかりおめかしをしているようだ。
元がいいため、おめかしするとより美しさが際立っていた。
「桃寧ちゃんかわいい〜」
真弥は完全にメロメロだった。そして抱きつこうとすると。
「外だからやめて·······」
嫌そうに顔をしかめ跳ね除けた。
普段家ではほよほよした感じで真弥に甘えてくるのだが、外では完璧美少女として振舞っている。
(ツンデレなんだよな〜)
真弥は遠い目をして思うのであった。
真弥と桃寧が向かったのは電車で少し行ったところにある遊園地だった。
数十分電車に揺られながら、目的の地へ着いた。
「着いたー!」
「おぉ········!!」
桃寧も久しぶりの遊園地にテンションが上がっているらしい。
「と、とりあえず何から乗ろうか?」
真弥がテンションMAXの桃寧に聞く。
ジェットコースターの轟音と人々の笑い声、はしゃぎ声が響くなか2人は1つ目のアトラクションへと向かった。
「やっぱ、遊園地来たらこれだよね〜」
2人がやってきたのは、ジェットコースターの列だった。
並んでる途中にも聞こえてくる、阿鼻叫喚の、叫び声。これがまた恐怖を煽ってくる。
「·············」
桃寧は黙って震えていた。
「桃寧?怖いの?」
「そ、そんな訳ないでしょ。こんな子供だましの乗り物なんて」
外での桃寧は変に強がって負けず嫌いな所がある。
そんなこんなで順番が回ってきた。席は1番前だった。
そして、ジェットコースターはキャストの声とともにレールを上がっていく。
カタカタカタという音もまた恐怖を煽る。
「何かドキドキしてきちゃった·····」
真弥がチラッと隣を見ると。
「大丈夫·······バー掴んでれば大丈夫······」
何か呪文のように唱え、震えていた。
そんな桃寧を見た真弥は。
「真弥·········?!」
真弥は桃寧の手をそっと握った。
「大丈夫だよ·······」
そう言ってそっと微笑んだ。
それと同時にジェットコースターはてっぺんに着き、急降下する。
『きゃぁぁぁぁ!!!』
2人揃って叫ぶ。
2分後········スピードが落ち、最初の位置に戻ってきた。
「あ〜面白かったぁ。大丈夫?桃寧ちゃん」
隣を見ると、桃寧は静かに涙を流していた。
2人は近くのベンチで休むことにした。
桃寧はだいぶ酔っていたようで、顔色が悪かった。
「大丈夫?桃寧ちゃん?」
「うん········大丈夫、じゃないかも······」
真弥はその様子を見て何かを思いついた。
「真弥···········?」
真弥は桃寧の頭に手を回し、自分の膝へと引き寄せた。
「?!」
真弥は黙って頭を撫でる。
「真弥······ここだと恥ずかしい·····」
「いいの、いいの·······ここのベンチはあまり人も来ないし」
「でも·········」
桃寧はそう言いながらも身を真弥へ委ねる。
終始2人は沈黙だった。
すると桃寧は辺りをキョロキョロと見回し、誰も周囲に居ないことを確認すると。
真弥の頬を触り始め·········顔を引き寄せると·······
「??!!」
桃寧はそっと真弥にキスをした。
「桃寧ちゃん······人来ちゃうよ?」
「今は真弥ちゃんとイチャイチャしたい〜」
桃寧がデレモードに入ってしまった。
こうなると桃寧は止まらない。
「ねぇ〜真弥〜ちゃんと集中して·······」
桃寧は真弥に乗り、さらにキスしてくる。
「〜〜っ!」
真弥は緊張で体を固くする。耳には桃寧の吐息と口の中で舌が絡め合う音だけが響く。
数十秒間キスした後、息が続かなくなり唇を離す。
ツーと唾液が伝う。桃寧は顔を真っ赤にしていた。
そして、我に返ったのか。さらに赤くなった。
「ご、ご、ごめんなさ〜い!!ちょっと気分が高揚しちゃって、それで、あんなこと!!」
「落ち着いて、桃寧ちゃん。それに私もう、嬉しかったし········」
2人して顔を赤くし俯く
そして、真弥は桃寧の腕に自分の腕を回し。
「帰ろっか」
その言葉に桃寧はそっと頷き、手を握った。
真弥はしっかりとその手を握り返す。
2人の後ろにある夕日は2人の影を鮮明に映し出していた。
どうも作者の天音ココアです。
事の発端はLINEのオープンチャットでした。
「やっぱ百合っていいよな〜」
「ほんとそれ!」
(百合か〜いいな〜そうだ!百合小説書こう!)でした。
何とも単純な発想でしたね。
ま、3作品同時連載でキツイですがゆっくり頑張っていきます。