95 金星 1
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
王都を救い、最強機体の設計図を届けた直後、これまで協力者だった騎士が豹変。
機体を破壊され危機に陥った一行だったが、ジンが新たな機体で敵を殲滅した――。
敵の迎撃部隊を突破した、その翌日。
ジン達は朝から格納庫を見に行った。
「とりあえず皆、生きてはいるようだな」
ジンの前には格納庫一面に倒れている整備員達がいる。
昨日とは各人の位置が違うので、起きて作業してまた倒れたのだろう。寝息や鼾が聞こえるので、死んでいない事は確かだ。だから良しとしていいのかどうかはともかくとして。
ナイナイが困った顔で考えこむ。
「魔法で元気にしてあげたりできないのかな……?」
「回復魔法を使ってるからここまでできたんだよ」
そう教えるリリマナ。
魔法を使い過ぎて倒れた治療術師がニ~三人、混ざって倒れているし、三人の機体は修理が終わってハンガーに立っていた。
自機の前でクレーンの操作盤にもたれて寝ているクロカを眺めながら、呟くジン。
「これで負けたらあの世で集団リンチされるな、俺は……」
ダインスケンが「ゲッゲー」と鳴いた。
機体が使える事を確認したジン達はブリッジに上がった。
現場がどうなっているのか、それを確認するためだ。
ブリッジには既にヴァルキュリナが入っており、ジン達を見るや、付近のMAPを宙に映す。
「設計図の動きが止まった。その手前に敵の部隊が展開している」
それを聞いたナイナイの顔に緊張が走り、ゴブオは面倒臭そうにため息をつく。
ジンは軽く肩をすくめた。
「あちらさんもやる気満々だな。地獄の一丁目に到着ってとこかい」
格納庫に戻り、待機するジン達。
待つ事しばし、ヴァルキュリナからの指示が出た。
『鬼甲戦隊、出撃!』
「了解。こちらジン、出るぞ!」
母艦から真っ先に飛びだすジンの新型機・Sサンダーカブト。ナイナイとダインスケンの機体もそれに続いた。三機が母艦より僅かに前へ出て、敵軍と対峙する。
敵は山間部の谷の前に、奥への道を阻む形で展開していた。量産機達を前に出し、後ろに控えている隊長機は――ディーンの乗る白銀級機、槍を持つ巨人騎士!
「ディーン! 貴様が戦うのか?」
訝しむジン。
黄金級機設計図の反応は谷の奥からである。それを届け終え、もうディーンの手からは離れたという事だ。
(仕事を終えたあいつに、危険を冒して俺達と戦う理由があるとは思えないがよ……。敵と一緒にさっさと国外逃亡するならわかるんだが)
だがジンの疑いなどお構いなく、ディーンは高揚した声を張り上げた。
『そう……今の私は魔王軍親衛隊最強の戦士、マスターディーン! 鬼甲戦隊等と名乗ってここまで来たのがお前達の運の尽き! 次元を超えて異世界へ来たお前達が次に行くべきは、地獄の底だ!』
『なんだか様子がおかしくない?』
ナイナイも違和感を覚えてジンに訊いてくる。
ケイオス・ウォリアーにジン達を乗らせずに攻撃してきた、姑息で慎重な男だと思えない態度だ。
「妙な術でもかけられてるのかもな。裏切り者には似合いの末路かもしれねえが……」
ジンの言葉にディーンは笑った。
『まるで私がここで終わるかのような物言いだな。だが私は昨日までの私ではないぞ。さあ、見ろ!』
そう言うとディーンの機体に無数の亀裂が走り、装甲が砕ける。
「え? 壊れるの?」
戸惑うリリマナ。
だが通信機からクロカの声が響いた。
『ゲェーッ! 違う、あれはオーバーボディだ!』
砕けた装甲の下から新たな装甲が現れた。
それはまさに脱皮……鎧は同じ白銀だが、騎士の外観は消え去り、禍々しい蜘蛛の頭が八つの瞳を輝かせる。
背中からも節くれだった二対四本の節足が現れる。
『これが! マスターディーンのケイオス・ウォリアー! Sマンベレスパイダー!』
声高に名乗るディーン。
ジンはブリッジへ急いで通信を入れた。
「クロカ! お前、寝不足のままブリッジに入ったのか」
『そうだけど、今それ別にいいだろ! 目の前の敵の変化に注目しろよ!』
怒鳴るクロカ。
一方、ディーンは「ククク……」と含み笑いを漏らす。
『いくら目を凝らしても私の恐ろしさは変わらない。お前達はまさに蜘蛛の網にかかった羽虫なのだ』
そして魔王軍の兵士に号令をかけた。
『前進! 隊列は乱すな!』
兵士達――その全ては不死型の骸骨兵・Bシックルスカルであった。
(全機が一種に統一されているだと? 奇妙だな……)
不自然に感じ、前進してくる敵機にジンはスピリットコマンド【スカウト】を放ち、その能力を探る。
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護衛兵 レベル30
Bシックルスカル
HP:5500/5500 EN:200/200 装甲:1380 運動:110 照準:169
HP回復(小)
射 ダガーショット 攻撃2800 射程1―4
格 デスサイズ 攻撃3100 射程P1
HP回復(小):一定時間ごとにHPが最大値の10%回復する。
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(ウザい雑魚だが特に問題は……む?)
敵機の能力を見て、大した相手ではない事にむしろ疑問を抱くジン。
だが……敵兵士が「魔王軍兵」では無い事に気づいた。
初めて見る敵兵士の名前に、ジンは急いでステータス画面を切り替える。
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護衛兵 レベル30
格闘175 射撃175 技量205 防御155 回避115 命中133 SP97
援護防御1
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「こいつら! 全員が援護防御を持ってやがるのか!」
ジンは察した。
なぜ敵が密集陣形をとり、全機が固まって動いて来るのかを。
『ククク……気づいたか。そう、再生能力のある機体が互いにカバーしあいながらお前達に迫る。そして私は、その後ろから貴様を好きに狙わせてもらう!』
得意満面といったディーン。
ジンは彼にも【スカウト】を放った。
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ディーン レベル32
Sマンベレスパイダー
HP:23500/23500 EN:245/245 装甲:1970 運動:125 照準:180
射 クラレシュリケン 攻撃3000 射程1―7 装甲低下2
格 ヘルファイヤアチャクラム 攻撃3500 射程P1ー4 装甲低下1
射 クモベノムフンガムンガ 攻撃4500 射程1―8 運動性低下2
ディーン レベル32
格闘202 射撃186 技量216 防御161 回避126 命中146 SP100
ケイオス4 援護攻撃2 H&A
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「最強武器しかいらんだろって武装かよ……」
呆れるジンの前で、敵の白銀級機が四本の節足に武器を構える。
三本の曲がった刃が突き出た、信じられないほど邪悪な見た目の投げ短剣だ。
(アフリカ投げナイフ!?)
驚くジンに、ディーンは言う。
『一応、この最強武器が弾数で言えば79発で最少なのでね。真ん中が89、最弱が99とバランスもいい』
話している間にも、敵軍はジン達へ遠慮なく間合いを詰めてきた。
『勝つのは私だ! 負けるのはそれ以外だ! この世界は私の手にあるのだ!』
ディーンは高らかに笑っていた。
アマプラの月額コーナーにAクロバンチが来ていた。
しかしやはり凄い外観だ。何をモチーフにしてどんな方向を目指したのか全くわからない。
まぁ番組自体はIンディージョーンズがやりたかったのだろうと、だいたい想像がつくが……。




