91 雷甲 5
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
王都を救い、最強機体の設計図を届けた直後、これまで協力者だった騎士が豹変。
彼は魔王軍の間者だった。機体を破壊されたジン達をさらに敵が襲う――。
「僕が行く。足止めしてくるよ」
そう言ったのはナイナイだ。
「おい……!」
慌てて止めようとするジン。
BCバイブグンザリはかろうじて動けるだけで、数分の一のパワーしか出ないのだ。
だがナイナイは必死な視線をジンに向けた。
「怖いよ。勝てないのもわかってる。けど……僕もこの世界に、大切な人がいるから」
そして事実、誰かが捨て石になるしか打開策は無いだろう。
それはジンにもわかった。
「きっと行く」
だから、それしか言えなかった。
そんなジンに、ナイナイは笑顔を見せる。精一杯、強がって。
「うん、待ってる」
そしてナイナイはブリッジを走り出た。
ナイナイ機が艦から飛び出す姿が、すぐにモニターに映った。
その後ろにもう一機いるのも。
「ダインスケン!? 私は聞いていないぞ?」
慌てて通信を入れるヴァルキュリナ。
『ゲッゲー』
応えはいつもの、全く変わらぬ鳴き声だった。
艦の戦闘MAPに敵影が映る。
20を超える数の部隊。先頭にいるのは見覚えのある白銀級機。
マスターウインドの乗るSフェザーコカトリスだった。
「あいつが居るのか……!」
強敵の存在に思わず歯軋りするジン。
敵軍の機体が前回程度に強化改造されている事も容易に想像できた。今のナイナイとダインスケンには、それをどうにもできない事も……。
そして暗雲の下、戦闘が始まった。
「うわ、うわぁ……!」
リリマナが顔を覆う。
艦のモニターには戦場が映っていた。ほとんど一方的である。
ナイナイ機もダインスケン機もまともに出力が上がらない。動きも鈍いし、少しの被弾ですぐに装甲が剥がれる。そこに敵は容赦なく雨霰と攻撃を撃ち込んできた。
敵の半数は重装甲砲撃機のBカノンピルバグであり、射程の長さと頑丈さが今の二人とは相性も悪い。
それでも撃墜されず持ち堪えているのは、元が徹底的に強化改造された機体である事、防戦を重視して立ち回っているが故だ。
もはや戦いとは言えないこの状況を、後ろで攻撃指示を出しながら、マスターウィンドはSフェザーコカトリスの操縦席で眺めていた。
(我ながら見下げ果てた物だ。既に空戦大隊には私を始末するよう指令が出ている。そこをジェネラル・アルタルフに拾われ、とどめを刺してこいと任務を与えられたが……騙し討ちして弱らせた相手を嬲り殺す仕事、か)
自らは攻撃に参加しない。それだけが彼の最後の意地なのかもしれない。
(もう一人、いただろう? 奴はどこだ)
ジンの機体を探してモニターを見るマスターウィンド。
あいつが来れば何かが変わる――そんな期待をしている事を、彼自身気づいているのかどうか。
だが、ついに限界が来た。
ナイナイ機の足が折れかけ、膝をつく。
それでもナイナイは悲鳴一つあげなかった。押し殺した呻き声が小さく漏れはしたけれど。
それをダインスケン機が庇い、片腕が吹き飛ぶ。
その様子が映るブリッジでは――
ジンからただならぬ気配を感じ、ヴァルキュリナがそちらを見た。
だがその形相を見て、一瞬で目を逸らし、慌ててモニターへ視線を戻す。
ジンの右拳が固く握られ、震えていた。
そしてブリッジに通信が入る。
『ジン! すぐに格納庫へ来い!』
クロカだ。
それ以上、誰が何を言うより前に、ジンはブリッジを飛び出した。
「ちょ、待ってェ!」
リリマナが空を飛んでそれを追う。
少し後、戦場にて。
荒野を乾いた風が吹き抜ける。
その中に倒れる二機の巨人――ナイナイとダインスケンの機体。動こうともがくが立つ事すらままならない。
少し離れた所で見下ろしながら、マスターウインドは部下達にとどめを指示しようとしていた。
『完全に破壊するのだ。攻撃開――』
だが言い終える前に、戦闘MAPに増援が映った。
全速力で突撃してくる艦。見間違える筈も無いCガストニアである。
(来たか。だが二機を捨て駒にして時間を稼いだという事は……)
何かがある。それをマスターウインドは察していた。
果たして、艦が戦闘可能距離に入る直前、そこから飛び出す機体が一機……!
見覚えの無い機体である。
だがマスターウインドにはわかった。
この状況で乗り込んでくるのはあの男しかいない。
『新型か。それを調整していたのだな。だが超個体戦闘員の真価はあくまで同族との連携――』
そこまで言った時、彼の予想通りの声で返事がきた。
「鬼甲戦隊……オーガリッシュアームドフォース。このジン=ライガ、今日よりその隊長をはらせてもらう。この白銀級機・Sサンダーカブトでな」
灰色の濃い雲の下、黒いボディを包む鎧が赤と銀に輝いていた。
スマートながら屈強――以前のずんぐりした体型とはまるで違う。だが胸部と肩部の装甲は厚く、マッシブなフォルムを見せている。
両手両足を守る装甲には、各3つずつの半透明な球体が並ぶ。その球体は臍にも、そして頭部にもあった。
その頭部には複眼でできた鋭い目と、球体が設置された大きな角があった。Y字型に割れた大きな角の形状を見れば、この機体がその名の通り、カブトムシを模って造られた事は明らかだった。
『戦う度に生まれ変わるようだな。貴様は……』
そう呟くマスターウィンドは、どこか喜んでいるようなフシもあった。
虫型ロボといえばGUレートマジンガーにそんな将軍いたな、とふと思い出す。
だが全話視聴したのにどんな奴だったのか全然思い出せない。
なんせまだセオリーというものが固まってなかった時代なんで、七大将軍ことごとく最終回で適当に処理されてたからな。
作品はSUパロボ参戦最古参なのに、一度もユニットになってない将軍が三人ぐらいいるし。




