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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
84/353

84 王都 7

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

最強機体の設計図を届けるべく旅を続け、ついに王都のすぐ側まで来た。

王都は敵の襲撃を受けていたが、ジン達はそれを完全勝利で退けたのであった――。

 魔王軍を打ち破ったジン達は王都へ入った。

 戦艦Cガストニアを今まで見た中で一番大きなドックに入れると、ブリッジに使者が大急ぎで駆け込んでくる。彼によってジン達は王城へ――その謁見の間に、引っ張られるように向かった。


 吹き抜けかと思うほど高い天井、陽の光に輝くいくつものステンドグラス。居並ぶ騎士や大臣達。豪華な長い絨毯の奥に設置された玉座に座る、長い顎髭をたくわえた老人が、スイデン国の現国王だった。


 豪華な装飾の施されたローブを纏い、頭上には上品な宝飾で彩られた王冠を頂く、『王様』という単語をそのまま形にしたような王……なのだが。


(人のいい爺さんには見えるが、あんまり仰々しい威厳みたいな物は感じねぇな……)

 失礼だとは思いつつ、ジンは正直、そう感じた。

 少なくとも乱世に覇を唱えるなどという大げさな言葉とはかけ離れた印象だ。ただ、このお爺さんなら悪い事はしないだろうと思わせる雰囲気はあった。


 王の前で膝をつくヴァルキュリナ。

 ジン達三人はその後ろで彼女のマネをし、膝をついている。

 そんな一行に、王は上機嫌で笑いかけた。

「膝んどつかんでよいよい! 見事じゃ! まことに見事じゃ! そなた達こそ真の英雄よ!」

「はっ。ありがとうございます」

 ヴァルキュリナは王の言葉に従い立ち上がる。

 ジン達もそれに倣って立ち上がった。

「うむ、英雄は堂々としておかんとな。そして讃えられねばならん。よって今夜は祝勝会をひらこう! ヴァルキュリナ殿、そして三人の聖勇士(パラディン)殿。もちろん讃えられてくれるな?」

「は、はい! 身に余る光栄です」

 上機嫌の王に、ヴァルキュリナは緊張しながらも応える。

「ゲッゲー」

 ダインスケンはいつも通り鳴いた。

「おう、そうかそうか。大いに楽しんでくれ」

 王はどちらにもにこやかに声をかけた。


 複眼のリザードマンを見て、周囲にいた騎士や大臣は警戒と困惑を見せていたが、当の王様は全く気にしていないようで、人間相手と変わらぬ態度であった。

(大物なのか適当なのか、判断に困る爺さんだな。まぁこちらとしてはありがたいが)

 失礼だとは思えど、それがジンの正直な思いだった。



 その夜。

 城内有数の大きな部屋で夜会は行われた。

 立食形式のテーブルが所狭しと並びながらも、部屋の中央は広く空間が確保され、楽団の演奏とともに多数の男女が輪をかいて踊る。それら皆この国の名士、貴族や騎士だ。

 (いくさ)ばかりで日々を送って来たジン達にとって、幻想的でさえある華やかな会場である――筈なのだが。


 ヴァルキュリナはいつもの鎧を脱ぎ、純白のドレスに着替えていた。

 均整のとれた体は引き締まっていながらも女性らしい優美な物であり、上品でありながらも肩や胸の上半分が露出したドレスが清楚と艶めかしさを両立させている。

 今回の戦いの功労者という事もあり、騎士や貴族の男性に次々とダンスパートナーを申し込まれていた。

 戸惑いながら慣れないダンスを一生懸命踊る彼女のぎこちなさも、また男性達を虜にする一因になっているようだった。


 だがその一方。


 やはり功労者である筈のジンとダインスケンは、壁の側で近くのテーブルから料理をつまんでいた。

 周囲には誰もいない。会場の者達は近寄り難そうにちらちら見はするが、話しかけて来る者はいなかった。


(ま、予想はしていた事だがよ)

 ジンは甲殻に覆われた自分の右腕を見る。上品な服の袖など通る筈もなく、おかげで今も部分鎧で武装したいつもの格好だ。

パーティ会場では絶望的に浮いている。


 ダインスケンの方はいつもの短パン一丁だ。上等なタキシードを貸してはもらえたが、尻尾を通す穴が無いのでズボンは衣裳部屋に置いてきた。上着は袖を首の辺りで括って留め紐にしてマントのように羽織っている――衣装を借りたはいいが、どう着るのか根本的に理解していないのだ。

浮いているとかいうレベルではなかった。


 一人、ナイナイだけは貴族のお嬢様方に囲まれていたが。

 小柄なだけで服を着るのに問題のある体ではないので、ゴシック調の礼服を貸してもらえた。黙っていれば貴族家の少年に十分見える。


 まぁ本人はそんな格好にも人の注目を浴びるのにも慣れておらず、恥ずかしさと戸惑いで狼狽えていたが。


 そんなナイナイを囲んでいた娘達は、十代中頃の子ばかり。魔王軍相手の活躍がどんな物だったか、目を輝かせてナイナイを質問責めにしていた。そうしながらも小さな英雄がおどおどした一面を持つ可愛らしい少年である事を楽しみながら。


 ……だったのだが、今はどこかに姿を消してしまっている。一度、女の子達の包囲網から脱出したナイナイがヘトヘトになって戻ってきたのだが。


「どうした。麗しいお嬢さん達が名残惜しくてたまらんようだぞ」

 少女達を横目にジンがそう言っても、ナイナイは困るばかりだった。

「そんな事言われても……」

「ならドレスでも着るか。そっちも抜群に似合う事は間違いねぇからよ。俺と踊ってくれる女もいねぇし、相手してくれるならありがたいぜ」

 からかうジンに、ナイナイは頬を膨らませた。

「ジンはすぐ変な事言う」

 そう言ってプイとそっぽを向いた。ジンは笑って、適当な料理に手を伸ばし――そして気が付くと、ナイナイはどこかに姿を消していたのである。


(ちと怒らせたか。ま、後で謝るとしよう。今はゴブオとクロカへの土産でも詰めるか)

 ジンは風呂敷に包んでいた箱を開け、美味かった料理を適当に詰め込んだ。

 もちろんますますパーティ会場では浮くが、もう気にしても仕方が無いのも確かだ。


 そんな二人の頭上を舞う小さな影。

「せっかくパーティなのに、なんでこんな隅にいるのよォ」

「おう、来てたのか」

 いつの間にか入り込んでいたリリマナを見上げるジン。

「ま、辛い所を突いてくれるな。世の中みんながモテモテというわけにもいかねぇからよ。なぁ?」

 そう言われたダインスケン、「ゲッゲー」と鳴く。

 

 リリマナは「仕方ないなァ」とつぶやき、ジンの肩に停まった。

「ねぇジン、これからはどうするの?」

 ジンは肩を竦める。

「俺が訊きたいからよ。黄金級機(ゴールドクラス)設計図を届ける目的は果たしたからな……以前の話だとヴァルキュリナが食わせてくれるという事だったが、あれをまだ覚えているかどうか」


「ディーンに結婚する意志がないなら、ジンがお婿入りする事はできると思うけど……」

 ヴァルキュリナのかつての婚約者、その弟。その名を出すリリマナ。

「ケイドの家……クイン公爵家か。そこが納得しないんじゃねぇの。なんだかんだで弟さんが一緒になると思うんだがな」

 両貴族家同士が婚姻にどの程度重きを置いていたかは知らないが、片方が死んだからといってもう片方がすぐ別の誰かと一緒になる事が許されるのだろうか。

 ジンはそこに疑問を感じていた。


 そんなジンに横から声がかかる。

「私にその意思はありませんがね」

 それはディーン――ヴァルキュリナの婚約者の弟――本人であった。

トップクラス漫画家の先生が言ったそうな。

主人公ばっかモテまくりなのが正しい在り方だと。

まぁそんな大先生ほどの実力者がそう言うのなら……。


という事は、主人公がモテまくっていると「奴も堕落した。リンボの向こうの存在だった。KUSOGA」と感じて脇役の方を応援したくなる自分はマイノリティって事だな!

まぁ別にかまわんが。

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