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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
81/353

81 王都 4

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

最強機体の設計図を届けるべく旅を続け、ついに王都のすぐ側まで来た。

だが王都は敵の襲撃を受けていた――。

 星空の下をひたすら進む戦艦Cガストニア。

 ブリッジにMAPが映るとはいえ、夜の闇の中では当然視界が悪い。黒々とした影でしかない山の間を抜ければ、ただただ黒く広がる平原に出た。天と地を分かつのは星の瞬きの有無だけだ。


 当然、前進速度は落ちる。日中の半分程度の速度で移動を続ける竜型艦……それでも停まる事はできなかった。

 王都は今攻撃を受けており、最も近い外部からの援軍がこの艦なのだから。


 朝日が大地を照らし始める頃、ようやく長大な防壁が見えてきた。

 白く高い壁が地平線に現れ、その向こうには輝く城の尖塔が。中央に見える塔はひと際高く、腕か翼かのような装飾が左右に飛び出し、頂点は丸い顔のようで都へ向かう者を見下ろしているようだった。


 だがその壁の、最も大きい門の周囲では何十体もの巨人が戦っている。

 都を襲う魔王軍と、防衛する王都の軍。二派のケイオス・ウォリアーがぶつかりあっているのだ。


 王都ともなればこの国で最も強固な防衛部隊がいそうな物だが――巨人兵士、Bソードアーミーが次々と撃破されている。

 それらを攻撃する魔王軍の半数は上空にいた。ジン達もこの間戦った、半人半鳥、カラスの頭を持つBボウクロウである。地上から攻撃する半数は巨大な骸骨兵士・Bシックルスカル。


 ジン達は傷の治療を済ませ、その様子をブリッジで見ていた。

「魔王軍にやられてるよ……青銅級機(ブロンズクラス)同士なのに、どうして?」

 ナイナイが不安も露わに言うと、側に座っているクロカが苛々と頭を掻く。

「魔王軍側はどの機体も2段階は強化されているみたいだ。首都を攻めるだけあって金かけた部隊を回してきたな。だから魔王軍側の方が高性能になってる。それに……BシックルスカルにはHP回復能力があるから粘り強い。それを飛行型で上空から支援しているから、陸戦機中心の王都軍にはますます不利だね」

 その分析を聞きながら、ジンはモニターに見覚えのある機体を見つけた。

「あいつは!」


 輝く鎧の白銀級機(シルバークラス)。女の貌に長い髪、一際大きな翼。だがその両腕・両足には剣呑な鉤爪。

 その爪と羽手裏剣で次々と防衛軍を切り刻んでいるのは、かつて倒した親衛隊員マスターコロンの乗機・Sフィルシーハーピーであった。


「三人とも、すぐ出撃してくれ」

「了解!」

 ヴァルキュリナからの指示に、ジン達三人はブリッジから駆け出る。



 既に防衛部隊でまともに戦える機体は数機しか残っていない。

 もはや全滅かというそのタイミングで、ジン達の三機は戦場に駆け込んだ。

「そこまでだ。諦めてお縄につきな!」

 叫ぶジン。


 モニターに見覚えのある顔が映る。金髪のロングヘアに白い肌、舞踏会に使うような半仮面。やはりマスターコロンだった。

『あ、あんたら! マスターウインドが始末する筈なのに!?』

 上ずった声で狼狽する女親衛隊。

「それをアテにしての襲撃か。上手く逃げ出せたってのに、まだこの国で悪さしやがって」

 呆れるジンに女親衛隊が苛々と怒鳴る。

『好きで出てきたんじゃないわよ! 私だって、こんな敵地のど真ん中で……』

 目元を隠していても美女であろうと察する事のできる顔立ちだが、こうも怒りと焦りを露わにしては魅力も何もなかった。


 少々気圧されて呟くナイナイ。

『なんか……追い詰められてるね』

「敗戦のツケで首都攻めやらされて、ここでも負けたら処刑とかなんじゃねぇの。悪の組織にはよくある事だ。一回だけでも汚名返上の機会があるだけ温情なのかもしれないしよ」

 ジンのその想像が正しかったのか、女親衛隊は小さく歯軋りした。

『クッ……ともかく貴様らから息の根を止めてやる!』

 彼女が何やら操作すると、魔王軍がその矛先をジン達へと切り替える。

『こちらは全機、前回より強化改造してある! 今回はあんたらも平原にいて、街の地形効果に頼る事もできない! 前と同じと思わない事ね!』


 ぞろぞろとジン達に迫る魔王軍。

 ジンは――

「スイデン軍の皆さんよ、ここは俺達に任せて下がってくれ」

『我々は黄金級機(ゴールドクラス)設計図を届けにきた部隊だ! 後は私達が戦う!』

 Cガストニアも戦場に乗りこみ、ヴァルキュリナが防衛部隊に通信を送る。

『わ、わかった。我々は後退して態勢を立て直す』

 壊滅状態に追い込まれていた防衛部隊はそう返信し、防壁の内側へと駆け込んでいった。


「さぁて……やり易くなったからよ」

 (うそぶ)くジン。巨大な骸骨兵士どもの群れは目の前に迫っている。

「ぶちまかしてくれ!」

『うん、任せて!』

 ジンの声にナイナイが応えると、BCパンゴリンから放たれた魔力の結界が敵群を包み込んだ……!


『いきなりMAP兵器!?』

 驚愕するマスターコロン。

 四対のアンテナから放たれた高周波振動の魔力により、範囲内のシックルスカルはことごとく爆発し、吹き飛んだ。


「さっすがァ! とことん強化してるだけあるね!」

 ジンの肩ではしゃぐリリマナ。

 満足げに頷くジン。

「取得したスキルもバッチリだな」

設定解説


超個体戦闘員 ダインスケン


海戦大隊親衛隊の一人が、新型の強化兵士として完成を目指した「超個体戦闘員」の試作体。

戦闘力強化型の一つであり、筋力・敏捷性・反射神経・持久力・耐久力・感覚器精度の全てを高いレベルで持ち合わせる、総合力重視の高次元バランス型。

再生能力と魔法抵抗力も高く、その戦闘力を過酷な環境下でも発揮できるよう設計されている。


ケイオス・ウォリアーは操縦者と一体化して動かすので、操縦者自身を強靭にする事は兵器戦での戦力向上にも繋がる。


試作体16体のうち半数の8体は能力の異なる戦闘力強化型であり、筋力や生命力など一点においてはダインスケンより高い能力を有していた物もあった。


ダインスケン自身は「恐竜から進化した人間・ディノサウロイドが地球住民であった世界」から召喚されており、本来は爬虫類の眼球をもち、言葉も喋る事ができた。

声帯が不器用になり「言葉」を作れなくなったのは、試作体ゆえの不具合であり、意図された設計ではない。

超個体戦闘員相手ならば、同族の共感能力がある故に、鳴き声で意思を伝える事も可能。ただし多少の慣れはお互いに必要となる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 強化してきた? たったの2段階ですかwww
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