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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
80/353

80 王都 3

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

最強機体の設計図を王都に届けるべく旅を続け、無限の増援を繰り出す敵をも打ち倒した。

ついに王都のすぐ側まで来たものの、幾度も戦った強敵が立ちはだかる――。

 田舎村の片隅に、突如として生まれた血みどろの地獄。

 屋台の陰で頭を抱えて震える店主以外、村人は全て逃げ去っていた。ゴブオも一緒に逃げてしまってどこにもいない。

 その戦いの中、夜空に退避していたリリマナが悲鳴をあげた。

「ジン!」


 マスターウインドの鋭く素早い連続蹴りを受け、ジンがほぼ真横に吹っ飛ばされたのだ。

 ぶつかったテーブルが派手な音を立てて壊れる。


 だが――マスターウインドもまた吹っ飛ばされ、地の上を転がっていた。

 身を起こすも、胸を押さえて膝をつく。

 そこに入ったジンの一撃が、それだけのダメージを与えたのだ。


「こ、この男……!」

 呻き驚くマスターウインド。

 以前は優勢だったというのに……この場で互いに与えたダメージは互角だ。


 ジンも少々ふらつきながら立ち上がり、改めて身構える。

「まさか、手加減してるだとか様子見だとか今から本気出すだとか……しょっぱい事は言わないな?」

 ジンは理解していた。いまだにスピードではマスターウインドに分がある事を。


 だから多少防御に隙ができても、敵の攻撃へ捨て身でぶつかっていったのだ。相打ち覚悟で攻撃をぶつけ合わないと、ジンの拳はまともに命中しないと踏んで、だ。

 そして――ジンの思惑は大体当たった。


「まぁ言論は自由だから、言うのはあんたの勝手だが」

 ジンはマスターウインドへ大股で近づく。

 マスターウインドはギリリと歯を食いしばって立ち上がった。

「随分と、腕をあげたものだな……」

 その形相にもはや余裕は無い。

 一方、ジンは不適な笑みを浮かべた。

「ちょっと前に敵千匹斬りで鍛えましたからよ」


「ええい!」

 叫んで跳躍するマスターウィンド。夜空へ、周囲の家屋などより遥か高く跳び上がる!

「はぁっ!」

 ジンも跳んだ。敵を追って跳んだ!

 天空で激突する両者!


 また一匹、魔王軍の兵士が首を刎ねられて倒れた。

 もはや半数をきった敵群を前に、ダインスケンが「ケケェーッ!」と吠え声をあげる。

 彼自身、無傷では無いのだが――兵士達は見た。その体に刻まれた傷が、新たな鱗と皮に覆われて急速に塞がるのを。

「こ、こいつ、再生能力(リジェネレイト)持ちか!」

 有角の鬼戦士が(おのの)いて叫んだ。


 ジンとマスターウィンド。空中で交差した二人が着地する。

 マスターウインドは……地面に降り立ったものの、また膝をついた。

 対峙するジンは……よろめきはしているが、立っている。

 互角のダメージをぶつけ合う両者に、徐々に、だがはっきりと、差が生まれつつあったのだ。


 荒い息を吐きながら立ち上がるマスターウインドを前に、ジンは言う。

「言論は自由だから勝手に言わせてもらうが……既に俺の勝ちだからよ」

「なにぃ!?」

 怒りでジンを睨みつけるマスターウインド。


 耐久合戦となれば互いに消耗は避けられない。

 だが――ジンにもダインスケンほどでなはいにしろ、再生能力(リジェネレイト)があったのだ。瞬時に傷が塞がったりはしないが、打撃からの回復は本人が思っている以上に早かった。

 この能力が、今、二人の形勢を傾けている……!


 今まで本人さえ気づいていなかったが……重傷から安物のポーション一つで回復したのも、十数時間の戦闘をこなせたのも、毒への抵抗力も、酒程度のアルコールで酔えないのも、全てこの能力があったからだったのだ。


 この能力をようやく自覚したものの、しかしジンが勝利を確信しているのは、むしろ別の理由だ。

「こっちは三人だぞ。俺一人と五分な時点でお前に勝ちは無いだろうが」

 そう言ってチラと仲間を横目で見るジン。

 魔王軍は最後の兵士がダインスケンと戦っている最中だった。後ろ回し蹴りを受けて吹き飛ばされている兵士の命など、もはや風前の灯火であったが。


(バカな!? 以前のこいつらなら確実に仕留める事ができた筈……!)

 避けられない敗北を前に愕然とするマスターウインド。

 ジン達と直に手合わせした経験から、必勝を確信した戦力である。それがこうも完全に敗れるとは?

「俺は……こんな所で死ぬわけにはいかん!」

 余力を振り絞り、マスターウインドは構えた。


 対するジンの右腕が炎を吹いた。

 いや……違う。右腕を覆う甲殻に亀裂が走り、そこから紅に輝く粒子が噴き出している。炎のように、霧のように、煙のように。

 甲殻が割れた。砕けて落ちた。脱皮した下から出て来た新たな腕は、肩と拳が赤く染まっている。それが紅炎(プロミネンス)のような粒子を纏っていた。


(こいつは……これまでの経験で、己の力を完全に使えるようになったらしいな)

 それがわかってなお、マスターウィンドはジンへと走る。


舞葬琉拳(まいそうりゅうけん)奥義・死酷鳥飛来!」

 両の手刀が刃と化しジンを襲った!

「こちとら難しい名前は思いつかんからよ。バーニングパンチ……で、まぁいいだろう、よっと!」

 敵に対し、ジンは真正面から拳を繰り出す!


 刃と炎が激突した!


 手刀は鎧を裂き、敵の両肩を斬ろうと食い込む。

 炎は敵の胴体のど真ん中を打った。


 そしてマスターウィンドは吹っ飛んだ。

 ほとんど地面に水平に。人間の体が、真横に、どこまでも。

 それは後方にあった納屋にぶつかり、壁をブチ破り、反対側から飛び出した。

 納屋の裏にあった川へ、水柱を立てて落ちるマスターウィンド。

 波紋が広がり――静かになった。


 ジンは傷口を押さえ、敵が浮かんでこない事を確認する。

 その後ろで、最後の魔王軍兵士が投げナイフを受けて倒れた。


「か、勝った……勝ったじゃん、ジン!」

 宙で安堵と喜びにはしゃぐリリマナ。

 一方、ジンは傷口を押さえたままじっと黙っている。

 ナイナイがジンを見上げた。

「ジン? 何を考えてるの?」

「うん、いや……既にスイデン国内に入っているのに、厄介な奴と連続で遭遇するもんだと思ってな」

 前回戦った無限増援の使い手・マスターコルディセプスの事も、ジンは思いだしていたのだ。


(敵の幹部クラスがほいほいうろつけるって、どういう事だ? 抜け道でも造られてるんじゃねぇのか)

 実際にどうなのかはわからない。

 だが安全圏に入ったというヴァルキュリナの言葉が、完全に覆された事はわかった。ジンの悪い予感が当たった事になる。



 店もメチャクチャでもはや食事どころではない。ジン達は艦へと戻る。

 だが帰還を報告するためにブリッジへ入るや、ヴァルキュリナが焦りながら大声をあげた。

「すまない、急いで支度してくれ! これより王都へ急行する!」

「あ、ああ。別にいいが……そんなに慌ててどうした?」

 戸惑うジン達に叫ぶヴァルキュリナ。

「王都が! 襲撃されているんだ! 魔王軍に!」


 最奥の最重要拠点へ、敵の軍が直接乗りこんできたのである。


「はあぁ? マジでこの国の防衛はどうなってんだ!?」

 ジンは思わず叫ぶ。

 悪い予感が二度も続けて的中した。

魔力値9999無詠唱魔法ドカーン!とか今のファンタジーの主人公がやってるのを見て

「それに劣らぬ強さをワシも主人公に持たせてやらんとな。どうせならもっと直感的に分かり易い物にしたいが、さて……」となり

頑張って考えた。


バーニング弁当ガツガツ!ゴールドよりも光る一瞬を!破壊する!深く息を吸う!

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― 新着の感想 ―
[一言] この技、ロボにも搭載しないんですか?(←Gガン脳)
[気になる点] バーンナックルなのかと思って読んでました。
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