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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
79/353

79 王都 2

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

最強機体の設計図を王都に届けるべく旅を続け、無限の増援を繰り出す敵をも打ち倒した。

ついに王都のすぐ側まで来たものの、幾度も戦った強敵が立ちはだかる――。

「魔王軍親衛隊に、新たな強化兵士を造ろうとした者がいてな。魔物を含む幾多の生物の細胞を用いて新種を合成した。用いられた細胞には……魔王軍が召喚した聖勇士(パラディン)のうち、能力的に劣る個体の物もあった。そうした試作体を16体造り、それらからデータを集め、新型強化兵士を完成させるつもりだったそうだ」


 それが行われた場こそが、ジン達が眠っていた砦だったのだ。


「16人の基となったのは全員別の世界の者。また改造には様々な生物も、16人以外の聖勇士(パラディン)の細胞も使われている。だが()()()()の細胞だけは必ず共通して使われており、遺伝子にも組み込まれた。いわば――16人は全員、人工の兄弟姉妹。能力も容姿も違えど同じ一族」


 ジン達三人の共通点――ケイオスレベルの上昇速度やエースボーナス等――は、同族であるが故だったのだ。


「同じ一族であり、ある種の感応能力を有して連携する。それでいながら能力自体はある程度多様化され、様々な役割を個々が受け持つ。交配も可能であり、繁殖して次世代以降の人員を確保する」


 各個体が集団を一個とするための存在であり、分業するための機能を持って部品として生まれる。それはアリやハチといった、真社会性の生物も有する能力である。

 合体技を容易く成功させたのも、その体質が生み出す一種の感応能力が補助していたからである。

 

「魔王軍のために、新たな魔物の種族を品種改良して生み出す。それが超個体(スーパーオーガニズム)戦闘員(コンバタント)計画らしい」



 マスターウインドの、長くはあっても淡々とした説明。

 それを聞いてナイナイは小さな声で呻いた。

「そんな……僕らの、人の体を勝手に……」

 しかしマスターウインドがそれに応えて言うには――

「お前達三人の体は、まだある」


「16人の聖勇士(パラディン)が使われたと言っても、細胞が少しあれば事足りたらしい。お前達の元の体はまだ残っている。()()()()()は、本来とはまた別の体なのだ」

 そう言われて自分の体を見下ろすジン。

「今の体は元の体をクローニングして改造した物……そんな所か。そうなると、本物の俺がまた別にいて、俺として生きている……と?」

 だがそれには「いいや」と言って、マスターウインドは否定した。

「元の体は生ける屍になって保管されているはず。人造のその体が本人として覚醒しているのは――魔術により、本人の魂を移動させたからだ。俺は魔術の事はよくわからんが、お前の魂はこの世に一つ……という事を変えられんらしい。言い換えれば、お前達三人には元の体に戻るチャンスがある。今ならまだな。だがここで逆らえば、本物の体は処分されてしまうだろう」


 改めて、低くはっきりとした声でマスターウインドは問う。

「もう一度言おう。これが最後のチャンスだ。魔王軍に来い」


 少しの間、場は静まり返った。

 リリマナが困惑して訊く。

「どうするの、ジン……」

「ナイナイ、ダインスケン。お前らはどうだ?」

 ジンは他の二人に訊いた。


「ぼ、僕は……」

 口籠るナイナイ。

「この変な体は、嫌だけど……でも……」

 迷ってはいた。

 だがそれでも、意を決して言う。

「元の体を人質にされて、悪い人達のいいなりになるのは、それも嫌なんだ……もっと嫌だ!」


 ダインスケンは「ゲッゲー」と鳴いた。


 ニヤリと笑うジン。

「そうか。なら決まりだな。マスターウインド、やはり俺達はお前らの軍門には降れねぇ」

「ジンはいいの?」

 リリマナが訊くが、それにははっきりと頷く。

「髪がふさふさで若返ってて活きが良くて髪もふさふさで腹も引っ込んでて飯も大量に食える。気にしてはいなかったが髪もふさふさだ。この体が元の体に劣っている所がマジで一つも無いからよ。魔王の手先になってどこぞの国へ侵攻する道とじゃ、選択肢として成り立ってねぇ」


 兵士達を制止していた手を、マスターウインドは降ろす。

「そこまで腹を括ったならもう言葉は無用か。ならば今一度見せるしかあるまい……殺人闘技舞葬琉拳(まいそうりゅうけん)の神髄を、今度こそ全てな!」

 鋭い声で己の流派を名乗りながら、拳法の構えを見せた。


 そして――夕闇の下で戦いが始まった!



 血飛沫があがった。

 最初の犠牲者は先頭にいたワーウルフ。顔面を縦に両断された狼男は悲鳴もあげられずに絶命する!

 そいつを仕留めたダインスケンは、自分を取り囲もうとする魔物の群れへと背を低くして身構えた。

 その背後へ回ろうとした魔族の戦士が、飛んできたナイフを肩に受けて剣を落とす。盾にしたテーブルの陰からナイナイが投げた物だ。


 手強しと見て、ダークエルフが呪文を唱える。

「『光熱の領域、第三の段位。炎は塊り球となる。球の炸裂は敵を焼き払う』――ファイアーボール!」

 その手に炎の球が生じ、ジン達へと飛ぶ。見る間に膨れ上がり、火球は宙で燃え広がった。炎がジン達を舐めるように襲う!


 だが「ふん!」と気合一発、ジンは右拳を繰り出した。

 その隣でダインスケンが尻尾ではたく。

 二人の加撃は炎を打ち、魔力の火炎は霧散し宙に消えた!

「なにっ!? 呪文無効化能力(スペルセービング)か!」

 驚愕するダークエルフ。


 魔物や強力な魔法の武具には、害を為す呪文を打ち消す力をもつ物もある。

 ジン達はそういった魔物の細胞も持っていたのだ。


 たじろぐダークエルフにダインスケンが跳びかかる。

 夜空にまた新たな血煙が舞った。

ちとわかり難い箇所なのでこんな所で補足してしまうが


ジン達三人の体は

A・各人の本来の体の細胞

B・魔王軍が飼ってる、ある魔物(ボス級の個体)の細胞

C・魔王軍が集めた何種類かの生物(魔物含む)の細胞

D・魔王軍が入手した、何人かの聖勇士の細胞

A~Dが使われて造られている。

ACDは各人バラバラだが、Bが全員共通の素材なので「兄弟」と表現されている。


という設定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] そのボス級の魔物が出てきたときに 「弟よ~」 とか言って逆洗脳できそうな(笑)。 (↑バ●ルフィーバー的に) いや、ポジション的にはこっち側が「子」なんでしょうけど。
[一言] つまり、キメラってことだね。(一言)
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