76 無限 8
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
王都へ向かおうとする彼らだが、先に助けて欲しい街があると告げられた。
そこでジン達を襲う、敵親衛隊の無限増援。だが長時間の激戦の末、ついにそれを撃破した――。
勝利の翌日。
ジン達は食堂で朝食を摂りながら、改めて今後の予定を話し合った。
「なぁ、ジン。これは一体……?」
料理の詰まった折詰を前に困惑するヴァルキュリナ。
「夜の街で呑んできたからな。それよりも……2~3日はここに滞在するだと?」
魚の切り身を口に放り込むジンに、ヴァルキュリナは戸惑いながらも頷く。
「そうだ。一日仕事でフル稼働させていた修理・補給装置の整備。集めた資材による改造作業、保守点検。各自の疲労の回復。おそらく二日でここを発てるが、一応の予備日を見ると三日だ」
ジンは周囲を見渡した。
「そう言うならまぁ仕方ねぇか。なら操縦者側の能力を確認したい。あれだけ敵を撃墜すればCOCPもかなり手に入っただろ。スキルの獲得もしないとな」
折詰から卵焼きを食べつつ、ナイナイは小首を傾げる。
「僕はそこら辺、よくわからないなぁ。ジンが決めてよ」
ダインスケンもそれに続いて「ゲッゲー」と鳴いた。
「そう言うなら、まぁ考えてみるか……」
答えながらジンは頭の中でいくつかプランを練る。
「昨日稼いだCOCP? だいたい一万だね」
うんざりした顔で答えるクロカ。
格納庫で朝一番に捉まった彼女は、不機嫌を隠そうともしない。
もちろんそんな事は全く気にせず、ジン達三人はその使い道を相談し始める。
「アイテムの作成もあるから、全部スキルの習得に使うわけにもいかねぇな。安くて有用な物を全員に配る方針で考えたい所だが……そのためにも今のステータスを見せてくれるか」
ジンが頼むと、クロカは黙ってバインダーを操作した。表面にメニュー表が映る。
「ねぇねぇ、前から思ってたけど、どうしてこの板にはまず僕の顔が映るの?」
ナイナイが訊いた。
メニュー表にはナイナイの顔がバストアップで映されているのだ。
訊かれたクロカは「ん?」と訝しむ。
「知らなかったのか? 撃墜数がこの部隊トップだからだけど。他のメンバーが……今、200と数十機。ナイナイだけ400オーバーしてるから、順位はもう変わらないだろうね」
ジンは「ふむ」と呟く。
これも昔プレイしていたゲームと同じシステムだ。ついでにちょっとした疑問を訊いてみる。
「あざといカワイイ服に着替えたら、この画面も変わるのか?」
クロカは肩を竦めた。
「登録してある画像を変えればな。で、どんな変態スケベ衣装にするんだ?」
「しないよ! ジンはすぐ変な事言う」
むすっとふくれるナイナイ。
「案が歪められてから俺に怒られてもな……」
微妙に納得いかないジン。
ジンが怒られる事で機嫌が治ったのか、クロカはかろやかな操作でバインダーにジンのステータスを映した。
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ジン=ライガ
レベル30
格闘206 射撃204 技量222 防御190 回避127 命中152 SP120
ケイオス5 底力7 援護攻撃1 援護防御1 H&A
【スカウト】【ウィークン】【ヒット】【プロテクション】
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「おお、一気にレベルが8も上がったな! ケイオスレベルも5になったか。だがスピリットコマンドに新習得は無いな……」
喜び半分、がっかり半分のジン。
実はかつてない大量の敵を倒した事で、何か物凄いチートが発揮されブッ壊れキャラになれる事を少し期待はしていたのだが。
確実に強くはなったものの、割と地味な成長である。
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ナイナイ=テインテイン
レベル30
格闘192 射撃206 技量219 防御166 回避152 命中155 SP120
ケイオス5 底力5 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【フォーチュン】【トラスト】【コンセントレーション】【フレア】
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「僕もナントカコマンドが4つのままだね。ジンと同じだ」
自分の能力を確認するナイナイ。
ジンは微妙に疑わしい目つきで表示された数値を眺める。
「ケイオスレベルも同じペースで成長か……なーんか俺ら三人、妙にお揃いになっているような気がするんだがよ」
ダインスケンも「ゲッゲー」と鳴いた。
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ダインスケン
レベル30
格闘208 射撃188 技量221 防御168 回避153 命中149 SP120
ケイオス5 底力6 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【ヒット】【フレア】【アクセル】【ダイレクトヒット】
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「こいつもケイオスレベル、コマンド数が同じか。エースボーナスまで同じ……こりゃ偶然じゃねぇな」
そう呟くジンだが、ならばなぜこうなっているのかはわからない。
「お揃いならいいじゃない?」
ナイナイは嬉しそうだった。
「次、私ね!」
「はいな。了解」
リリマナにせがまれ、クロカはそのステータスを映し出す。
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リリマナ レベル30 SP89 スピリットコマンド【サーチ】【ガッツ】【ウィークン】【フォーティテュード】【エナジー】
【サーチ】隠された物のあるMAP上のポイントを発見する。
【ガッツ】自機のHPを最大値の30%回復する。
【ウィークン】敵1体の戦意を10低下させる。
【フォーティテュード】次に被弾した攻撃のダメージを87.5%軽減する。
【エナジー】操縦者の戦意を10上昇させる。
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「やった! 私はコマンド5個目だァ!」
はしゃぐリリマナ。宙でジンを見下ろし、勝ち誇って胸を張った。
それを見上げて考えるジン。
(やはり個人差はあるんだよな……それが当然か。ならなぜ俺ら三人はこんなに共通点が多い?)
かといってステータスやコマンドの内容まで同じわけではない。だがその半端さが逆におかしい気がしていた。
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ヴァルキュリナ
レベル30
格闘202 射撃189 技量221 防御174 回避103 命中148 SP120
ケイオス3 指揮官3 援護防御2
スピリットコマンド【プロテクション】【ホープ】【エフォート】【チアー】
【プロテクション】短時間の間、被ダメージを75%軽減する。
【ホープ】味方一機に有効。HP50%回復、状態異常を解除。次に倒した敵からの獲得資金と経験値が200%になる。
【エフォート】次に倒した敵からの獲得経験値が200%になる。
【チアー】味方一機に有効。戦意を10上昇させる。
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「おお! 味方の戦意増加! 支援能力に拍車がかかったか!」
目を輝かせるジン。
「しかしこの世界じゃ、隣接する4機を激励するわけじゃねぇのか。まぁ離れた所にいる奴に使える事を活かして……」
ジンは腕組みして考え出すが、彼が何を言っているかイマイチわからず、周りの者は首を傾げる。
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クロカ レベル30 SP89 スピリットコマンド【アナライズ】【フォーサイト】【ヒット】【アクセル】【ディスターブ】
【アナライズ】敵1機に有効。短時間の間、被ダメージが110%、与ダメージが90%になる。
【フォーサイト】味方一機に有効。一度だけ敵の攻撃を確実に回避する。
【ヒット】次の攻撃を確実に命中させる。
【アクセル】短時間、自機の移動力を増加する。
【ディスターブ】短時間、敵全ての最終命中率を半減させる。
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「クロカもコマンドを5個覚えているね。私のライバルかな」
リリマナが嬉しそうに言う。
「おう、優秀なのは間違いねぇ。流石だ。俺の頭も思わず下がるからよ」
物理的には下げずに言うジン。
「そ、そうか? まぁそうかもな」
それでもクロカは嬉しそうに照れ笑いを隠し切れない。
「ところで優秀なクロカさんよ。グレートエースってのはどんな効果があるんだ?」
ジンが訊くと、クロカはバインダーを何回かタップした。
それは用語や項目の解説を呼び出すための操作であり……表示された解説をクロカは説明する。
「60機撃墜してエースになると、エースボーナスを得たな? 実はそれに加えて、初期戦意が5、敵を撃墜した時の獲得資金が10%上がるんだが……」
そこで一度ジン達を見渡し、それから続きを読み上げた。
「80機以上撃墜したグレートエースになると、初期戦意がさらに5、獲得資金がさらに10%上がる。合計10上昇と20%増加になるわけだ」
ふむ、と納得するジン。
「この世界だとそういう効果か。なるほどな……」
そう呟きながら、各人が習得すべきスキルは何か考えていた。
その考えも、すぐにまとまりつつあったのだが。
撃墜数最多のキャラの顔をインターミッションに出すシステム自体は良いと思うが、MAサキ・アンドーの顔をアップにする機能にしかなっておらんな……。
SAイバスターは今回いないから大丈夫と思った作品では、ZEオライマーのパイロットの顔がアップになる機能になってて「こいつはMAサキだったかMAサトだったか?」になるだけだった。
もうMAP兵器の範囲自体をアップにしとけばいいんじゃねぇかと思ったりも。
これをなんとかしようと思ったらプレイヤーに任意キャラの画像をセレクト・登録させるしかないだろう。
まぁそうなったらチカ(GUランゾンの鳥)とかモコナとかエキセドル参謀とかばっかり選ばれる気がするが。




