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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
74/353

74 無限 6

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

王都へ向かおうとする彼らだが、先に助けて欲しい街があると告げられた。

街は既に諦めの境地。ついたジン達を敵親衛隊の無限増援が襲う――。

 空に星が瞬き始めた頃。


『貯まった! フル改造費用ができたぞ、ジン! 行け! もう異論は聞かない! 行って敵の隊長を倒せよおぉ……』

 クロカが叫んだ。後半、ほとんど泣きそうな声で。

 それを聞いて声をあげるジン。

「よっしゃあ! 行くぜ!」

『やっとだよぉ……』

 疲れ果てた声を漏らすナイナイ。

『ゲッゲー』

 いつも通りのダインスケン。

 そして三機は街から飛び出す! そこへ戦艦も――気持ちよろよろと――続いた。


 山の斜面をかけ登って来る先頭のマスクドアントへ、ジンは出合頭のメイスを叩きつける。

『ジン!? 蟻を倒したらまた増援が……』

 疲れきった声で焦るヴァルキュリナ。

 だがジンは叫んだ。

「奴は蟻が全滅しないと増援を出さねぇ! ここまでずっと守られて来たパターンだ! だから包囲されないよう一匹だけ残す。それ以外は倒す!」


 なぜ蟻が全滅する前に次の蟻を出さないのか、それはジンにもわからない。

 召喚術にそういう制限があるのかもしれないし、無尽蔵に増援を呼ぶためにペース配分が必要なのかもしれない。

 だが理由はどうあれ、その制限を破る事ができないのだろうとジンは長い戦闘の間にふんでいた。


 そしてジンの思った通り、一匹だけ残った蟻を尻目に白銀級機(シルバークラス)Sカイメラアントへ挑むと、マスターコルディセプスは蟻を呼び出そうとはせずに、ついに機体を動かして迎え撃つ。


 だが激突する前にジンは叫ぶ。

「リリマナ! 俺と【ウィークン】! クロカは【アナライズ】だ!」

「おっけー!」

『わかったよ……コンチクショウ……』

 二人の了解の声。

 そしてSカイメラアントをスピリッコマンドが襲った。その戦意(モラール)は大きく低下し、続いて装甲の薄い箇所がジン達のモニターに映し出される。


 相手を射程に捉えるや、ジンは叫んだ。

「待たせたな! 受けろ! トライシュートー!!」

 機体の足が止まると同時に、一糸乱れぬ連携で撃たれる三射撃。

 それは狙い過たず魔王軍の親衛隊を撃ち抜く! 火花とともに砕けて散る装甲!


 モニターに表示されるダメージが9300を超えた。

 スピリットコマンドの効果にエースボーナスの補正を加え、その威力はかつてないほど高まっている!


 もちろんマスターコルディセプスとて黙って立っているわけもない。

 笠のような頭部から薄緑色の霧が散布された。それは悪意と凶悪な威力をもってダインスケン機を狙う。生体・金属の区別なく全てを腐食させる毒の胞子、それによる霧!



格 毒胞子 攻撃4500 射程P1―3

気力105 消費EN20 条件:ケイオス2

特殊効果:装甲ダウンLV2



「悪いがその相手は俺だ!」

 吹きつけられる胞子の霧に、ジンのBCカノンピルバグが割り込んで食い止める。ダインスケン機に変わって全身が浸食され、装甲が変色した。胞子の毒素には装甲を腐食させ、崩壊させる効果があるのだ。


 だが、ジン機に装備された【フルコーティングアーマー】の防御能力は長時間の残留を許さず、毒素を排出する。

 それでもダメージそのものは決して小さくない。3400以上の値がモニターに表示されている。

 だが長期戦の中、こまめに修理を繰り返していたカノンピルバグは、それにも耐えきった。


 一方、20000のHPを一撃で半分近く持って行かれ、Sカイメラアントは膝をついていた。

 その隙を見逃すわけもなく、ジン達は至近距離へ駆け込む。

「長い付き合いだったな。だが金の切れ目は縁の切れ目、この世界でもそれは変わらないからよ!」

 叫ぶジンの機体がメイスを打ち込み、ナイナイ機の打撃が続き、ダインスケン機が跳んだ。


 津波のごとく流れ込む怒涛の三連打、トリプルウェーブ!


 鞭を握るSカイメラアントの腕が千切れ飛んだ。強打を食らった頭が仰け反り、装甲の割れた体が仰向けに倒れる。

 表示されたダメージは先ほどを上回り、10800以上……!


 白銀級機(シルバークラス)はもはや立ち上がる事なく、傷口から火を吹きながら動かなくなった。

 そして――爆発!

 今までで最も頑丈な敵を、ジン達は二度の波状攻撃で倒したのだ。



(脱出は? しなかったようだな……)

 燃える残骸を眺める機体の、それと一体化したジンの目には、敵機から飛び出した脱出装置は見当たらなかった。

 ジンが様子を窺っていると、精魂尽き果てた声でヴァルキュリナからの通信が入る。

『さ、作戦終了……。ジン、今日は一体どうしたんだ。何かおかしかったぞ』

「かもな。だがこれからの戦いを考えると、ちょっとな……」

 あまりに極端な戦法に文句を言われ、ジンは言葉を濁す。

 だがモニターに青い顔で目だけがギョロついたクロカが割り込んできた。

『ちょっとじゃねぇだろ! アホボケカスナスタコマヌケ! お前のトーちゃんチンドン屋! お前のカーちゃんデベソ……』

 そこで力尽きてズルズルとモニターの下に消えていく。


 ジンは「はあ」と溜息を一つ。

 そんなジンの機体の横にナイナイ機がやってきた。そこから通信が入る。

『ジンは必要だと思ったんだよね?』

 もちろん、さっきまでの無限増援潰しの事だ。

 ジンははっきりと答えを返す。

「ああ。それは確かだ。勝つために必要な事は全部やる。それは今でも変わってないからよ」

 くすり、とナイナイの声に笑いが混じった。

『うん、わかった。でも疲れて眠いよ。帰ろ?』

「それに異論はねぇな」

 ジンとて疲労は濃い。自分で予想したよりは遥かに体力が残ってはいるが。そんなジンの横にダインスケン機も来て『ゲッゲー』と鳴く。

「ああ、戻るぞ」

 ダインスケンにもそう促し、三機は戦艦へと向かった。

機体解説


Sカイメラアント

妖虫型の白銀級ケイオス・ウォリアー。三度笠のような兜を被ったアリのような頭部をもつ。

鞭を武器として使うが、腐食性の胞子を大量に含んだ毒霧を吹きつけて攻撃する事もできる。

だが最大の武器は召喚魔法の補助能力で、ある特定種の魔物を召喚する魔術の負担を極度に軽減する事が可能。

なおカイメラとはキメラの事であり、合成生物を指す事に使われる場合も多い語だが、この機体がアリ以外の何を混ぜこんだつもりなのかはいまいち不明。

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[気になる点] ナイナイ、お前メインヒロインになるのか……?
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