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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
71/353

71 無限 3

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

王都へ向かおうとする彼らだが、次に向かうよう依頼されたのは鉱山の町シャミル。

そこは魔王軍の断続的な攻撃に晒され、瀕死の状態にあった――。

 Cガストニアはすぐに出撃した。旅立てるよう準備してあったのが幸いしたのは怪我の功名というものだろう。そこから飛び出したジン達は、山の斜面を登って来る敵軍を見た。

 岩場を、あるいは小さな森を抜けてくる敵影……戦闘MAPに映るは十体ほど。その後ろに控える機影が1機――これが隊長機だろう。

 しかしそれがけしかけてくるのは――


「なんだ? ケイオス・ウォリアーじゃないだと?」

 街の外周、廃墟となった通りから山の斜面を見下ろし呟くジン。

 迫って来るのは家屋ほどもある巨大なアリなのである。

 だがそのアリどもの頭は、半分がた気味の悪い薄緑の苔に覆われ、大きな複眼が完全に隠されてしまい、さながら覆面をしているようだった。



魔獣 レベル22

マスクドアンツ

HP:5000/5000 EN:180/180 装甲:1400 運動:80 照準:145

射 アシッドブレス 攻撃2700 射程1―5

格 牙       攻撃3000 射程P1



【スカウト】でモニターに映したステータスを見てジンは呟く。

「ちょいタフで接近戦を挑むタイプか。まぁ俺らが後れを取るような奴でも無いが……」


 それが聞こえたのか、そうでもないのか。

 最奥にいる敵隊長機から通信が入った。

『オレは魔王軍魔怪大隊最強の親衛隊……マスターコルディセプス……』

 陰気で静かな声。ターバンのような布で顔をぐるぐる巻きにしており、人相は全くわからない。声で男だとはわかるが、年齢などは知る由も無い。

 その機体はアリ人間のごとき半人半虫の姿だが、頭には三度笠のような兜を被っていた。右手にはこれ見よがしに長い鞭を握っている。


「今度は魔物使いか。魔王の軍勢らしいじゃねぇか」

 ジンはそう声をかけたが、相手は何も答えない。ただ鞭で地面を叩だけだ。

 それが合図なのか、巨大アリどもがその進軍速度を速める。


『あのアリ共も普通のモンスターじゃないね。初めて見る魔物だよ』

 母艦Cガストニアからクロカの声が届いた。

「カビてる大型モンスターはやっぱり魔王軍がいじった変種か。今までの予想通りじゃねぇか」

 そう言いつつ、ジンは敵隊長機のステータスも調べる。



マスターコルディセプス レベル25

Sカイメラアント

HP:20000/20000 EN:200/200 装甲:1500 運動:90 照準:155

射 アント軍団 攻撃4000 射程1―7

格 毒胞子   攻撃4500 射程P1―3



「今さら苦戦しそうな奴でもないな。そこが逆に怪しいが……」

 嫌な予感にジンは襲われる。これまでの親衛隊より微妙に強力ではあるが、さほどの差は無い。

「きっと私たちをナメてるのよ。こっちの強さを思いらせてやろ!」

 肩の上でリリマナが気楽な事を言う。


 しかしジンは疑っていた。

(ただ弱いだけの敵が楽な戦いをさせてくれるために出てくる、なんてあるか? 騙されねぇからよ。絶対に何か企んでるぞ……)


『シャミルの街を攻めるつもりで、私達の存在は予想していなかったのかもしれない。だが各自気を抜かないように!』

 ヴァルキュリナが指示を飛ばす。

 話している間に、敵のアリどもはすぐそこまで迫っていた。

「いくぜ!」

 胸中の暗雲を払うべく、ジンは叫んで敵へ砲弾を撃ち込んだ。


 艦のファヤーブレスが敵を焼き、援護で飛んだナイナイ機のソニックショットが巨大蟻を粉砕する。

 猛攻を潜り抜けて街の外周――崩れた壁が虚しくも所々に残っている――へ潜り込もうとした個体を、ダインスケン機の鰭刀・スラッシュレザーが切り裂いた。

 蟻どもも蟻酸を吐きながら大顎で噛み付いてくるが、強化されつつある装甲や運動性により致命傷などそう受けない。そして……


「よっしゃ、頼むからよ!」

『まかせて! いくよ!』

 ジンの指示に元気よく応え、ナイナイはBCバイブグンザリ単体の最強武器・MAP兵器デストロイウェーブを放つ。

 魔力の輝きに覆われ、範囲内の蟻どもは次々と分解され、砕け散った。


『よし。アリは全滅したな』

 現状を確認するヴァルキュリナ。

 手堅く戦ったジン達の完全な勝利である。


 ……筈だった。


 だがマスターコルディセプスが陰気に呟く。

『抗うか。だが無駄なこと』

 その言葉ととも鞭が地面を叩く。すると彼の機体周辺の地面がボコボコと盛り上がった。

 いくつもの土饅頭が膨れ上がり、次々と新たな蟻どもが姿を現す!


『て、敵増援!』

『地面から出てきたよ!?』

 警告するヴァルキュリナに、ナイナイが狼狽えた声をあげる。

「落ち着け。問題ない相手だろ。さっきの要領で戦えば負けないからよ」

 そう言いながらも、ジンは何か違和感を覚えていた。


 そして街に迫る蟻たち。

 ほとんど同じ展開で戦闘が再開された。

 撃たれる弾丸、潜り抜ける巨大蟻、そしてMAP兵器の炸裂――


 ジンの言った通り、蟻達は晒す躯を増やしただけだった。


 だがしかし。

『抗うか。だが無駄なこと』

 マスターコルディセプスが陰気に呟き、鞭が地面を叩いた。

 いくつもの土饅頭が膨れ上がり、次々と新たな蟻どもが姿を現す!


『再度、増援だ!』

 焦って叫ぶヴァルキュリナ。

 ジンはブリッジへ通信を送った。

「……なあ。あの巨大アリの改造元になったモンスターがどんな奴らか、わからないか?」

『確定はできないが、想像はつくな……』

 答えたのはクロカだ。

 ジンは再度尋ねる。

「そいつらはうじゃうじゃと数で圧すタイプか?」

『まあね。さっさと全滅させないと延々仲間を呼ぶモンスターの一種さ……あ!』

 喋っている途中、クロカは気づいた。


 敵の戦法に、その狙いに。


 ジンは再度尋ねる。

「全滅しても召喚する奴がいる場合、どうなる?」

 質問ではあるが、わからないから訊いているのではない。

 己の想像が事実かどうか確認しているのだ。

 クロカは苦々しく答えた。

『召喚術師のMPが尽きるまで、いくらでも追加されるだろうね……』


 追加された敵増援は街のすぐ側まで迫っていた。

モンスター解説


マスクドアンツ

巨大モンスターの一種、ギガントアンツの近縁種。頭部の半分を苔のような膜に覆われているのが特徴。

現魔王軍の活動後に発見されたので、人工的に改造された種であろうと推測されている。

元となったモンスターは同サイズの中では大した強さではないが、戦闘に入ると周囲の仲間が集まって来る習性があるため、時として甚大な被害を人里にもたらす事がある。

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