64 帰郷 4
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
魔王軍の将軍からの攻撃を辛くも生き延び、ジン達はヴァルキュリナの故郷に着いた。
しかし息つく暇なく、食事に毒が盛られ、次の魔王軍親衛隊が街を襲う――。
「ジン、どうするの? 実質二人しか戦えないよォ!」
肩の上で弱りながら、泣きそうな声をあげるリリマナ。
「チッ、とりあえず街から出て……」
ジンがそう言った時、通信機から割り込む声があった。
『いや、出なくていい』
聞きなれた声だ。それが誰なのか、ジンには一瞬でわかった。
「ヴァルキュリナ!」
ドックから戦艦Cガストニアの巨体が足音を立てて出てくる。
『すまない。話は聞かせてもらった。私の実力不足だ』
モニターにヴァルキュリナの顔が映った。
「それは今さらいい。それより戦えるのかよ?」
そうジンが言ったのは、映った彼女の顔色もナイナイに劣らず悪かったからだ。疲労困憊した時のような、精力の無い顔。
『私も力が出ないな……艦の乗員も最小限だ。だから街の地形効果を利用する』
それは街に籠り、防壁や建物を盾として利用するという事だ。
以前の通り、ジンはそれに難色を示した。
「いや、それだと住人が巻き込まれるからよ……」
しかし苦しいながらもヴァルキュリナは毅然と言い放つ。
『ここは国を守るための砦でもある。住人もそれは承知だ。非戦闘員は街の防空壕に避難した。そしてこの街には補給・回復に使える資材が豊富に備蓄されている。それを使いながら戦うんだ!』
言われたジンは戦闘MAPで街の地形データを確認する。
「確かに……砦や基地としての地形効果だな、これは……」
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【防衛基地】回避率:+20% 防御率:+20% HP回復:+10% EN回復:+10%
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修理や補給に使える資材も容易に入手でき、それゆえ回復効果さえある。
さらにモニターにクロカまで映った。
『あんたらの機体の装備も再調整しておいた。BCバイブグンザリには、前みたいにレスキューマシンナリーを装備させてある。修理と補給はできるよ』
クロカも苦しそうに汗を流していたが、そう言ってニタリと笑ってみせる。
「よし……壁の穴から街まで後退、そして防衛だ。近づいてきた奴の残骸で壁を埋め直してやるからよ!」
彼女達の精一杯を目の当たりにし、ジンはこの街を利用させてもらう事にした。
仲間二人に指示を飛ばす。
「ダインスケン! 俺と並べ! ナイナイとヴァルキュリナはその後ろで援護と修理だ!」
穴の縁に機体を立たせ、宙を舞う敵機のデータをスピリットコマンド【スカウト】で探り、モニターへ映す。
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魔王軍兵 レベル20
Bボウクロウ
HP:4000/4000 EN:170/170 装甲:1200 運動:95 照準:145
格 ダガー 攻撃2500 射程P1―1
射 ロングボウ 攻撃2600 射程1-5
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「カラスが夜飛んでるんじゃねぇよ」
言いながら照準を合わせるジン。
巨大な矢が降り注ぎ、周囲の壁を削り、破壊し続ける中、敵機へロングキャノンを撃ち込んだ!
鳥空型ケイオス・ウォリアーは全て飛行可能で、敵地へ素早く攻め込むのには適している。だが反面、このタイプの量産型は脆い。
カノンピルバグのロングキャノン一撃でほぼ瀕死、援護攻撃が重なった時には容易く撃墜された。
対してそのロングボウはピルバグに当たっても小さな傷しかつけられない。モニターに表示されるダメージは400少々。強化の進んだ装甲と遮蔽物の多い街の地形が強固な守りとなっていた。
撃ちあいは不利とみて街へ突っ込む機体もあるが……
「悪いな。近接武器も強化済みだからよ!」
「ケケーッ!」
ジンのピルバグとダインスケンのクローリザードが跳び、ナイフで斬りかかる敵を叩き落とす。
二機とも空適応はB……空中戦はできず、宙の敵への命中率は下がる。
だが強化改造された照準値と、弱ったりとはいえ必死に敵の動向を伝達するヴァルキュリナの【指揮】技能。これらがあれば雑兵ごときにそうそう攻撃を外す二人でも無かった。
そして二機とも、単機での最強武器は近接武器――その一撃は援護の必要さえなく、半人半鳥のケイオス・ウォリアーを容易く撃破した。
『チッ……張り切ってくれちゃって、まぁ』
部下が次々と片付けられるのを見て顔をしかめるマスターコロン。
ジン達の存在は知っていたが、自信作の毒を盛れば戦闘不能――無理をして戦場に出ても衰弱して気力は下がり、まともに戦う事などできぬと踏んでいたのだ。
だが三人中二人が耐え抜き、こうも抵抗するとは……彼女が得ていた情報は、やはり不完全だったらしい。
(超個体戦闘員……おかしな物を造ろうとするからこんな面倒な事に。しかも計画を任されていた奴が勇者に討たれて、細かいデータが残っていないって何よ?)
苛々と見ているうちに、部下はほぼ全滅させられてしまった。
(流石にこちらの親衛隊を何機も葬ってきただけあるわ。仕方ない、嫌だけど私自身が手をくだしましょうか)
戦線にたどり着く頃には部下は一機も残っていないだろうが、それは彼女にとってどうでも良かった。
自分単機でも勝てる自信は、依然として揺らいでいなかったのだ。
最後のボウクロウを撃墜したジンは、敵隊長機が真っすぐ飛んで来るのを機体の眼で見る。
その敵にも【スカウト】を放ち、その性能をモニターに表示させた。
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マスターコロン レベル23
Sフィルシーハーピー
HP:15000/15000 EN:200/200 装甲:1400 運動:110 照準:155
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(機体性能は大した事ねぇな。運動性の高さが厄介か)
今まで白銀級機と戦い、倒してきた事で、この程度の性能には既に動じなくなっていたジン。
それでも敵機の長所は認めつつ、操縦者の能力も確認する。
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マスターコロン
レベル23
格闘190 射撃190 技量210 防御150 回避135 命中135 SP96
特殊スキル
ケイオス4 気力+(DEF) 見切り2
※戦意+(DEF):被弾・回避すると戦意が余分に上昇
※見切り3LV:戦意130以上で命中・回避・クリティカル率+15%
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(パイロット……は、今までで最高の回避力だな。それをさらにスキルで高める、定番にして手堅い構成……と。命中にスピリットコマンドを使って一気に叩きたい所だが……合体技にはナイナイの戦意が足りねぇ。どうするか……)
戦闘によりナイナイの戦意も上がってはいるが、最低の状態から始まったので、MAP兵器も合体技も使える値では無い。
決定打を欠いたまま敵隊長機と戦わねばならない事に若干の焦りを感じつつ、ジンは敵の武器データを確認した。
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射 ダーティフェザー 攻撃3000 射程1―6 戦意低下1
格 ダーティクロー 攻撃3500 射程P1-2 戦意低下2
格 ダーティサイクロン 攻撃4000 射程1-3 戦意低下3
※戦意低下1:敵の戦意を5下げる
※戦意低下2:敵の戦意を10下げる
※戦意低下3:敵の戦意を15下げる
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全てが戦意減退効果を持つデバフ武器である。
「なんだこのクソ武器は!」
怒鳴るジン。
マスターコロンは実に愉快だと言わんばかりの高笑いをあげた。
『アハハハ! ハーピーには魔力で敵を弱らせる種も多いのよ』
「普通は歌とか呪いでやるんじゃねぇのか!?」
表示されている武器は物理的に敵を叩くシロモノばかりだ。
そんなジンの抗議を、彼女はフンと鼻で笑った。
『何いってるの。原点は食卓を汚して犠牲者を苦しめる魔物よ、歌なんかどうでもいいわ。オリジナルに倣った能力で敵に全力を出させないのが私の戦い方。抜けきった力の中であんた達は死ぬの! かわいそうにねぇ!』
嘲笑いながら迫るSフィルシーハーピー。
悪臭を放つ劇薬を滴らせた爪が、ジン達を狙っていた……!
ジェイDEッカーが仲間になるの2面やったわ!
ワシの中で30はもう名作枠に入ったで。
後はタイガーファングがブレサガぐらい強い事を祈るのみ……。
機体解説
Sフィルシーハーピー
白銀級の鳥空型ケイオス・ウィリアー。女のマスクと巨大な翼を、両手両足には大きな鉤爪を持つ。
翼からは鋭利な羽を手裏剣のように飛ばす事も可能。
爪にも羽にも「毒腺」が設けられており、ここから敵機へ劇薬を注入する事が可能。操縦者自らが調合するこの薬は猛烈な悪臭も放ち、敵機と一体化している操縦者にも悪影響を及ぼす。その臭気は生命力の弱い者ならば意識を失う威力を持ち、それに耐えても行動能力は確実に低下する。
また翼をフルパワーで羽ばたかせれば竜巻を生み出す事も可能。毒腺からの噴霧により、悪臭放つ劇薬の竜巻となって敵機を切り刻む。
友軍の同胞でさえ共同戦線を拒む者の多い、恐るべき機体である。




