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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
55/353

55 新生 2

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

この世界最強の兵器の設計図を運ぶ彼らを襲ったのは、その最強兵器に乗った魔王軍の将軍だった。

絶体絶命の状況から辛くも生き延びたジン達は、生き延びるために新たな手段を探る――。

「予定では白銀級機(シルバークラス)のSランスナイトを修理して使う事にしていたらしいが、あれは俺達の三機を強化する資材にしてもらう。ついでに今まで倒した敵白銀級機(シルバークラス)のパーツも、流用できる物が残っていたら使ってくれ」

 それがジンの案だった。


「はいはい。了解~。できるよ、できますともさ!」

 諦めて、ふざけたようなヤケになったかのような返事をするクロカ。

 まぁ両方なのだろうが。


 実際、別の機体への部品や材料の流用は難しくはないのだ。

 構造だけなら、ほぼ全てのケイオス・ウォリアーは同じなのである。また各パーツの接続部も共通の規格で作られている。

 ただ実際にパーツや武装が稼働するかどうかは、人工頭脳――基本動作プログラムや各種適応値との相性があるので、無制限というわけにはいかない。共有できる物と個別の専用装備に分かれるのだ。

 だが……


「せっかくの白銀級機(シルバークラス)がジャンクパーツ扱いだよ。こいつらの誰かが乗るだろうと思って回収させたのに……」

 愚痴るクロカ。

 この世界の住人にとって、白銀級機(シルバークラス)はただの武具ではない。名のある名刀、武家に伝わる甲冑のような物だ。

 それらを扱う鍛冶屋にあたるのが、開発・整備する技術者達である。だからそれら職にはこの時代になってもドワーフ族が多い。


 つまりジンの指示は、欠けた名刀を修理せずヘシ折り、無銘の刀を補強する材料にしろというのに近い。

 この世界の職人には嫌がられて当然なのだが、文化に則した感情なので、ジンにはいまいち理解できないのだ。


 肩を落とすクロカを他所に、ジンはさらに話を続ける。

「戦力の増強というより確認なんだが、ヴァルキュリナの今のステータスも見せてくれ。クロカ、あんたもだ」

「私も!? なんか私に要求多くね?」

 驚くクロカ。

 だがジンはさらりと言う。

「艦長の許可は得ている」


「え? そうだったか……?」

 戸惑うヴァルキュリナ。

 はっきりと頷くジン。

「昨日、好きにしろと自分で言ったろうが。なら俺の求める言葉を頼めば言ってくれる筈だな。結果が確定してるから過程を一部飛ばしたからよ」

「そこ飛ばすなよ!」

 クロカが怒鳴った。



ヴァルキュリナ レベル17

格闘177 射撃168 技量201 防御147 回避85 命中121 SP94

ケイオス2 指揮官2 援護防御2

【プロテクション】【ブレス】


【プロテクション】短時間の間、被ダメージを75%軽減する。

【ブレス】味方一機に有効。次に倒した敵からの獲得資金が200%になる。



クロカ レベル17

【アナライズ】【フォーサイト】【ヒット】


【アナライズ】敵1機に有効。短時間の間、被ダメージが110%、与ダメージが90%になる。

【フォーサイト】味方一機に有効。一度だけ敵の攻撃を確実に回避する。

【ヒット】次の攻撃を確実に命中させる。



「なるほど。思った通りだ」

 宙に投影された二人のステータスを見て考えるジン。

「二人の能力を知ってたの?」

 不思議そうに訊くナイナイ。

 ジンは(かぶり)をふった。

「そうじゃねぇ。俺の知らない能力を持っていたんだな、という事だ」

 言ってため息を一つ。

「能力で劣る奴らが、味方の手札もよく知らない……じゃ、まぁ負け戦は当然だ。やっぱ俺らは必死さが足りてなかったんだな。心のどこかで他人事だと思ってたのかもしれねぇ」

「言っちゃなんだけど、あんたら聖騎士(パラディン)は元々他所者だからな。帰る手段さえあればさっさと帰る奴だって多いだろ」

 クロカのその言葉に、ジンは頷いた。


「その通りだ。だからここからは意識を変える。これは俺が買った戦いだ。勝つためにできる事は全部するからよ」

 そう言って視線をクロカへと落とした。

「次の戦闘からは、お前さんもブリッジにいてくれ。副官だか参謀だか、建前は何でもいい」

「おいィ!? その流れで何で私への要求になるよ!?」

 仰天して叫ぶクロカ。


 ヴァルキュリナも首を傾げる。

「ジン? クロカは整備班の人間で、戦闘は専門外なんだが……」

「ああ。だから指揮は今まで通りヴァルキュリナがとる。ただメカニックの観点からアドバイスできる事も見抜ける事もあるだろ。そこら辺は現場で判断して――スピリットコマンドを活かしてくれ」

 うーん、と悩んで眉を顰めるヴァルキュリナ。

「言いたい事はわかるが……ちょっと変則的だな。私に上手くやれるだろうか」

「そこは頑張ってくれとしか言いようがない。俺の求める事はやってくれる筈だな?」

「お前、いくつ要求すんだよ!」

 憤慨するクロカ。

 真面目な顔でそれにいけしゃあしゃあと応えるジン。

「このミッションを突破するまで――王都に黄金級機(ゴールドクラス)設計図を届けるまで、いくつでもだ。勝つためにできる事は全部するとさっき言ったからよ」

「お前がするんじゃないのかよ!」

 クロカの目が吊り上がった。

 だがジンはキリリと表情を引き締める。

「要求するのも俺のアクションのうちという解釈だ。ブリッジのピクシーになってくれ、クロカ」

「酷い屁理屈聞いたぞ! 帰投した機体の修理補給はどうすんだ?」

 青筋を立てるクロカに、ジンは真顔を崩さない。

「お前さんが合流するまでも問題なくやっていた。この艦の修理班が著しくレベルダウンでもしていない限り、問題ない筈だ」

 いよいよクロカは頭を掻き毟った。

「戦闘中の修理に私は要らないってか! クソ!」 

「そうだな。その気持ちはわかる。だが今はいいんだ。重要な事じゃないからよ」

 二人の意識の差がここまでとは誰も思わなかった……!


 クロカが引付を起こしかけて仰け反り、ヴァルキュリナがそれを支えて「しっかりして!」と励ますのを尻目に、ジンはナイナイとダインスケンに呼び掛ける。

「そして俺達の方だ。こちらは新たなコンビネーションを編み出す。構想自体はもうある。ナイナイ、ダインスケン。今からでも特訓に入りたいんだが」

「ジンがしたいなら、僕はいいよ」

「ゲッゲー」

 二人に異論があろうはずも無かった。

また評価をつけてくださった方がいたようで、どうもありがとうございます。

どうやら思ったよりは大勢の方に見ていただけたようですな。

楽しんでいただけているなら幸いであります。


ここら以降からようやく主人公達の機体もパワーアップして普通に強くなりますので、まぁ最後までおつきあい願えれば、と。

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