53 魔城 6
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
この世界最強の兵器の設計図を運んでいる艦の護衛を続けるジン達は、巨大艦を集めて作られた基地へやってきた。
だが、そこに魔王軍が奇襲をかける。伝説の黄金級機も出現し、基地は消滅した――。
最も巨大な大陸に、険しい山々が連なる壁で文明圏から隔絶された地がある。
一年中吹雪が吹き荒れ、それが止んだ時だけ白銀に輝く美しくも生の無き死の幻想世界が姿を現す大地が。
雪と氷と暗雲が覆う、標高四千メートルを超えた、平地としてはこの世界でも最高度となる、誰も顧みない僻地の中の僻地。
そこに巨大な城塞があった。
禍々しく、ねじくれ、悪意と邪悪で塗り固められた、途方もなく巨大な城塞が。
この世界にある国家全ての敵である魔王軍……その首領が住まう城が。
石柱が立ち並ぶ、暗く巨大な、神殿のごとき部屋。
そこに四つの人影があった。
そのうち三つはフード付きのローブを身に纏い、顔かたちは全くわからない。背と体格は全く同じに見える。
その三つの側で柱にもたれ、不敵な笑みを浮かべているのは……口髭をたくわえターバンを巻いた浅黒い肌の精悍な男。曲刀を腰にさげ、アラビア風の鎧を纏った戦士。
海戦大隊長ジェネラル・アルタルフだった。
青いフードローブが静かに言う。
「何を考えているのか聞こう。黄金級機の設計図は、お前の手で失われてしまったぞ……」
笑いをかみ殺すアルタルフ。
「つまり、万が一にも他所の手に渡る可能性は無くなったわけだ。そして魔王軍にたてつく実験体どもも、スイデン国の隠し基地も消滅。面倒な懸念は全て消えた。今回の件が奇麗に片付いて良かったではないか」
赤いフードローブが抑えた声で言う。
「基地の位置を探るため泳がせていた所に海戦大隊が割り込むなら、先に一言あるべきではないのか」
アルタルフは不敵な笑みを消さずに言った。
「おや、連絡が行っていなかったか。何せ俺自らが出向いたのでな、確認が不十分であった。それは詫びよう。いや、すまんすまん」
黄のフードローブが怒鳴る。
「そんな事はどうでもいい! 黄金級機の設計図を破壊しておきながら、その態度は何だ!」
言われたアルタルフは。
笑いを嚙み殺すのに必死だった。
「各軍団長が一機ずつ保有している黄金級機……もし二機持つ軍団ができたら、その力は他の軍団を大きく超えてしまうな。そのような危険な状況にならなくて良かったではないか。これからもともに魔王軍のため、力をあわせて戦おうぞ」
いけしゃあしゃあと他の三人に言う。
その目は明かに三人を見下していたが。
険悪な雰囲気の中、赤いフードローブが言う。
「設計図は海戦大隊の親衛隊が制作した物だったな。その時使った資料がもし残っているとしたら、やはり海戦大隊が握っているという事になる」
アルタルフの笑みが薄れた。
構わずに赤いフードローブは続ける。
「親衛隊一人だけの力でそう簡単に作れる物でもない。その上にいる物が協力していなければ……」
黄のフードローブが怒鳴った。
「だから我らに目をつけられた設計図は、無くなった方が都合がいいと。そういうわけか!」
笑顔の消えたアルタルフは肩をすくめる。
「憶測で物を言ってもらっては困るな。まぁ設計図が無くなった惜しさで混乱しているという事にしておいてやろう。泣こうが笑おうが、もはやあの基地があった場所には何も残っていないのだから」
そこへ青いフードローブが静かに言った。
「だが基地のあった所から離脱した艦が一隻ある」
「なんだと……?」
アルタルフは驚き、柱にもたれるのをやめた。
黄のフードローブが笑い声をあげる。
「実験体かもしれんな! もしそうなら考えを改め、奴らを少しは評価してやってもいい。それは陸戦大隊が確認してやろう!」
他の三人が黄のフードローブを睨むが、黄は自信満々に告げた。
「奴らにぶつけるつもりだった親衛隊が、まだ近くにいるのでな」
「ぬう……」
唸るアルタルフ。
その時、青いフードローブが他の三人へ言った。
「静まれ。いや……控えろ」
その場の皆がそこで会話を止めた。
青いローブに従ったのではない。気配を感じたからだ。
闇に閉ざされた部屋の奥からの、強烈な、強大な……。
そこから乾いた足音が響く。
四人は黙って待っていた。
足音の主が姿を見せた時、四人はいっせいに膝をつく。
「「「「暗黒大僧正!」」」」
四人は足音の主、彼らの主の名を口にした。
その者――闇黒大僧正はギリシャ風のローブ……トガを纏った、枯れ木のような老人だった。石英の大きな円盤に座し、それに乗って宙に浮いている。頭は包帯でぐるぐる巻きにされ、目も鼻も口も一切露出していない。
他の四人と異なるのは……その周囲の空間が、歪んで見えること。
陽炎のように……波打つように……あるいは色彩が滲んで混ざり合うかのように。
それはその者の放つなんらかの「気」による迫力かもしれないし、本当に空間に干渉する魔力が漏れ出ているのかもしれない。
ただ、他の者とは根本的に何かが違う。
それだけは確かだった。
人類の生息圏から遠く離れた、この時代の邪悪の中枢。
吹雪が吹きつける城塞の、その中の奥で。
ジン達を襲う執拗な魔手が、再び伸ばされようとしていた。
Xが途中で止まっているのを最近まで忘れていた。
まぁそれを言うならMXも最後のプレイを途中で止めてるんだがな。
流石に今から戦闘早送りの無い作品をプレイ再会するのはちと辛い。
メイオウを撃ちまくれるようになれば終わりはすぐと、頭ではわかっているんだが……。




