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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
51/353

51 黄金 9

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

この世界最強の兵器の設計図を運んでいる艦の護衛を続けるジン達は、巨大艦を集めて作られた基地へやってきた。

だが、そこに魔王軍が奇襲をかける。伝説の黄金級機も出現し、基地は消滅した――。

 案内された部屋は、パンゴリンの時同様、二段ベッドが両壁に設置された共同部屋だ。居住性はあくまで据え置き――向上しているわけではない。個室など艦長用に一つしかないのだ。


 煌々と輝く月が窓から見えている。

 片方の上段に寝そべり、ゴブオが不満も露わに言った。

「マジでどうします? 黄金級機(ゴールドクラス)まで出てくるんなら、もうこの部隊で働くのも潮時ッスよ。アニキらならどこかの街の防衛部隊にでも売り込めば……」

「いっそ冒険者になっちゃうのはどうかな? 傭兵みたいに思われてるけど、調査とか運搬とか、戦闘以外にもいろいろお仕事あるよ?」

 窓の側を飛びながら提案するリリマナ。だがゴブオはそれには不満そうだ。

「それだとあんま成り上がれねぇ気が……」


 やはり民衆が崇めるのは自分達を救ってくれる英雄だ。

 そうなるためには敵との戦闘は不可欠――リリマナの言う「それ以外」では、この世界のこのご時世、あまり有り難られないのである。


 ゴブオとリリマナが語り、後の三人は寝転んでいる、そんな部屋の戸がノックされた。

「入って、いいか?」

 ヴァルキュリナである。声には少し躊躇うような所があるが――

「いいぜ」

 ジンがベッドに寝転んだまま、どこか上の空で答えた。


 扉が静かに開く。中を窺いながら、ヴァルキュリナがおずおずと顔を覗かせた。

「何の用ですか」

 そう訊ねるナイナイには、どこか険悪な雰囲気があった。


 少し気おくれした様子を見せながらもヴァルキュリナは話し出す。

「私達は黄金級機(ゴールドクラス)設計図をまだ持っている。それを王都へ運ばなければならない。その任務はまだ続いている」

 ぷい、とそっぽを向くナイナイ。

「僕らはスイデン国民でも軍人でもないよ。死んでも戦えって言われたら嫌だ」

 うつむき加減でヴァルキュリナは頷く。

「そうだな。それに関しては、相応の報酬を出す……としか言えない」

「具体的には?」

 さほど興味なさそうに、寝転んだまま訊くジン。

「金と地位。それしか用意できない」

 ヴァルキュリナは言い辛そうにそう告げた。


 それを聞いて、ハーッ!とわざとらしく溜息をついて見せるゴブオ。

「おいおい、せいぜい傭兵の相場ぐらいの報酬に色つけてもらって、騎士団だか何だかに入れるかも程度だろ。そんでどうせ入隊した先で化け物呼ばわり、またぞろ痴漢だの安い薬だのを押し付けられるんだろうが。俺はうっかりで斬り殺されてご臨終! はーつっかえ、王様貴族様の椅子でもなけりゃ命かける価値ねーよ」

 ゴブオは嬉しそうに勢いよく言い放つ。人を責める立場を得た時は、こいつが最も活き活きする時だ。

 責められたヴァルキュリナは――神妙に頷き、こう言った。

「そうだ。だから貴方達を貴族にする」


 思いがけない言い分に、一瞬言葉を失うゴブオ。やがて呻くように漏らす。

「お……おうおう、どうやって?」

 それに対しヴァルキュリナは、俯いていた顔を上げた。

 決意を込めて、ゆっくりと告げる。

「誰か一人を私の夫にする。次期フォースカー子爵当主になれば、この世界の貴族だ。他の者はその食客として終生居てくれればいい」


 部屋がしんと静まり返った。しかし――

「それを信じろというの?」

 ナイナイは上段のベッドから疑惑の眼差しを向ける。

「そ……そうだぜ。都合悪い事を、だんまり決め込んでた前科があるッスよ」

 ゴブオが気を取り直してそう続けた。言葉の後半はジンの同意を得ようと横目で見ながら。

 ジンは黙ったまま、寝転んでじっと上を見たままだ。ヴァルキュリナの話に、さほど興味があるようには見えない。


 ジンの態度を見て、ヴァルキュリナは……自分の鎧に手をかけた。

 留め金を外し、装甲を一つずつ床に置いて行く。

 鎧を全て外すと、ボディラインがはっきりわかる薄手のアンダーウェアしか身に着けていなかった。

 それさえも脱ぎ、胸と腰を隠す僅かな下着だけになる。

 均整のとれた、すらりとしてはいても肉付きの良い健康的な肢体が露わになった。

 胸を巻く帯から大き目の乳房がこぼれそうになっており、それを片手で隠している。

 臍も太腿も晒され、下着とともにもう片方の手で股間を覆っている。

 再び俯き加減となり、羞恥で奇麗な顔が紅く染まっている。両の手も隠しようがなく震えていた。

 小さな声で、それでもはっきりと、必死に訴える。

「約束の証だ。この場で私を差し出す。好きにしてくれ……いや、そうしてください」



 ベッドの上段で跳ね上がるゴブオ!

「ゴブリンのおぉ! 本能うぅ!!」

 叫んで跳んだ! ヴァルキュリナへ、露わになった女騎士の肉体へ! 血走った眼で、涎をまき散らしながら!

「とあァッ!」

 リリマナが叫ぶ! そして飛ぶ! 宙のゴブオの側頭部に矢となってドロップキックが刺さった!

「ぶべらッ!」

 ゴブオが呻く! 宙でひっくり返り、床に頭から落ちた! 白目を剥いて痙攣! 嗚呼無残!

 一連、僅か数秒!


 ダインスケンがのそのそと動き、ゴブオを毛布でぐるぐる巻きにすると、ポイとベッド上段へ放り込んだ。

 そしてまたのそのそと自分のベッドへ戻る。



「よっこらせ」と呟きながら、ジンがベッドから身を起こした。

 ヴァルキュリナは一瞬びくりと震えたが、裸身を晒したに近い状態のまま、受け入れようとそこに立っていた。

 が……ジンは彼女を見て「ヒュウ」と口笛一つ吹きはしたものの、横を通り過ぎて廊下へ出てしまう。

 戸惑いながらその背を見るヴァルキュリナ。ジンは背中越しに言った。

「好きにしろ、と言ったな。艦長さんのお墨付きだ。そうさせて貰うからよ」

 そのまま廊下を歩いて行ってしまう……。


「ジン? 待ってよ!」

 わけがわからず混乱しながら、ナイナイが廊下へ追いかけて来た。

 隣へ走って来たナイナイを横目で見るジン。

「どうした? めくるめくオネショタハッスルだ。男にしてもらってこいよ」

 ナイナイは頬を紅潮させながらジンを睨む。

「そんな事言って、冗談で誤魔化そうとして……ジン、どうしてまだ戦うつもりなの?」


 口にしていないジンの決意を、ナイナイは既に察していた。

あと一週間で30発売か。

まさかここまできて延期は無いと思うが……新の時は一週間刻みで発売日が伸びた頃があったからな。

まぁダウンロードで修正、という事ができるようになった今のご時世、発売日にはとりあえず出せる事は出せるしな。


特撮大戦の時にそんな逃げ道さえあれば、ブラックキングで詰まなくなった物を……。

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