4 召喚 4
地球から異世界へ転移したジン。
到着早々戦闘に巻き込まれ、巨大なロボット兵器に乗る事になる。
己の能力に加え、同乗する妖精の加護をも受け、敢然と敵へ立ち向かうのだった――。
ジンが操縦席で嘆こうと、敵の砲撃は止まない。
一応ジンも反撃は行っているが、まだ一機も倒せていなかった。
なのにジンの機体がさらに被弾する! 敵機体は廃墟の目の前まで迫っていた。その数は三機――どれも古代ギリシャかローマの兵士のような、甲冑姿の巨人だ。顔は鉄の面頬に覆われ、右手には剣、左手装甲には弩が設置されているという武装。
「巨人!? これもロボットなのか?」
「中身は人工物だよ。巨人・猛獣・鳥空・魔竜・深海・不死・妖虫の七種類あるうちの巨人型。世界で一番普及してる一般的な機体なんだ」
リリマナの説明を聞き、ジンは愚痴る。
「一番普及してるのが人型なのに、俺の選択肢は全部が怪人型だったのか! 泣けるでぇ……」
そう言いつつも、ジンは焦りながらカーソルを敵に合わせた。
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魔王軍兵 レベル1
Bソードアーミー
HP:2565/4500 EN:170/170 装甲:1300 運動:95 照準:145
格 ソード 攻撃2700 射程P1―1
射 ボウガン 攻撃2700 射程1-5
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(おう、マジで魔王軍の兵士なのか。つーかこのツラ……)
敵ステータスには操縦者の顔も表示されていた。兜を被った、牙の生えた鬼のような顔……ゴブリンとかオークとかいう魔物なのであろう。
迎え撃とうとするジン。だが三方向を同時に撃つのは無理だ。万事休す――
と、その時。
一番近くの敵機が叩き斬られ、爆発した!
続いて損傷していた別の敵機に光の輪が当たり、その機体も爆発する!
ジンの機体のすぐ側に、新たな二機のケイオス・ウォリアーが現れた。モニタ上のアイコンは青色――友軍だ!
「ありがてぇ! 一緒に戦ってくれるのか」
『ゲッゲー』
リザードマンをそのまま巨大化させたような機体から鳴き声が届く。
ジンはその機体にカーソルを合わせた。
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ダインスケン レベル2
Bクローリザード
HP:4500/4500 EN:170/170 装甲:1300 運動:110 照準:145
射 スケイルシュリケン 攻撃2500 射程P1―3
格 ブレードクロー 攻撃3000 射程P1―1
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モニターの隅には操縦者も表示されている。一緒に目覚めた複眼トカゲ男だ。
彼はおそらく外見でその機体を選んだのだろう。
(あー……こいつ、ちゃんと名前あるのな)
少し感心するジン。正直、ギギとかガガとか鳴き声みたいな名前ではないかと薄々思っていた。
一方、もう片方の機体からも声が届く。
『おまたせ! 動かすのに手間取って……まだよくわからない事も多いけど、とにかく手伝うよ』
細長い魚の頭部を持つ魚人兵士のような機体から少女(?)の声。今度はカーソルをそれに合わせると――
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ナイナイ レベル2
Bバイブグンザリ
HP:4000/4000 EN:180/180 装甲:1200 運動:100 照準:145
修理装置
補給装置
格 アームドナックル 攻撃2500 射程P1―1
射 ソニックショット 攻撃2500 射程1-5
射 インパルスウェーブ(MAP) 攻撃3200 射程1-5
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「ん……? 修理装置に補給装置? (MAP)って……マップ兵器ぃ!?」
目を丸くするジン。
どれも地球で遊んでいたゲームでよく見た単語だ。
「回復魔法とか復元魔法とかの応用で造った、全機種対応の修理装置があるんだ。強化パーツ【レスキューマシンナリー】っていってね、あの機体にはそれが装備してあったの」
リリマナの説明を聞けば効果はわかった。やっぱりというか、予想とほぼ同じ物だった。
となると、もう一つ気になるのは――
「あの、MAPとか書いてある武器は?」
「正式には何て言ったかな……」
首を傾げるリリマナにジンは試しに言ってみる。
「大量広域先制攻撃兵器、か?」
「だったかな? モニターマップの広い範囲ドカンする武器、だったかも」
物凄く適当な答えだが、それでジンには理解できた。
「そうか……大体わかった」
「わかるんだ!? 凄いねジン!」
名称の話だけで理解したらしいジンに、目を見張るリリマナ。
それを他所に、ジンは他の二人に伝える。
「二人とも廃墟から出ないでくれ。ダインスケン、前衛は任せる。ナイナイは弱った奴へのトドメを。ただしHPが半分以下になってる味方の修理を優先でな。各人、味方を援護できるよう、できるだけ固まって戦ってくれ」
『え? うん? や、やってみるよ』
『ゲッゲー』
方針が決まるや、三機は固まって廃墟の一画に走った。一機だけ残っていた敵のBソードアーミーが弩を射てきたものの、三機の攻撃をたて続けに受け、後続が合流する前に哀れ撃破されてしまう。
それを見て、次の敵小隊が廃墟へ迫ってきた。
(さぁて……流れはこちらへ来たと、信じたいが……)
己を鼓舞するジン。初対面の連中との協力がどこまで上手くいくかは不安でしかないが、今、他に選択肢は無いのだ。
味方が三機チームになったが、この三機が合体するとかそういう展開は考えてない。
小ロボ→合体→巨大ロボだと、1クールも過ぎればだいたい合体バンクするしか小ロボの仕事無くなるよな。
合体まとめ売りが高いから小ロボ1個しか買ってもらえなかった子供の悲しさは言葉では表現できませんよ……。
機体解説
Bソードアーミー
古代ギリシャ重装兵のような外観の機体。
尖った所は全く無く、クセの無さから新兵にも扱いやすい。
特殊な武装が無いという事は生産性・製造コスト的には優れるという事でもあり、最も普及している量産機となった。
Bクローリザード
巨大なリザードマンといった外見。
両腕の爪は伸縮自在の刃「ブレードクロー」で、これを用いた近接戦闘で力を発揮する。
半面、射撃武器は腰にマウントされた棒手裏剣しかなく、戦闘可能な射程は短い。
とにかく敵に近づかねばならない機体なので、運動性は高くなるよう造られている。
Bバイブグンザリ
頭部のイメージはナガヅエエソ。
頭部のアンテナを展開して放つ「インパルスウェーブ」は高周波振動で広範囲を撃ち砕く強力な武器であり、これによる制圧能力を目当てに運用される。
ただしエネルギーの消耗は激しく、魔力光輪「ソニックショット」でもエネルギーを消費するため、継戦能力は低い。
機体の防御力にも難があり、一発屋の傾向が強い機体である。