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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
39/353

39 不穏 7

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

一行へスイデン本国から屈指の精鋭騎士団が合流してきたのだが、その不埒な魔手がナイナイを襲い、関係は最悪に。

そこへ襲撃する魔王軍。不和を抱えたまま戦うジン達は、敗北の一歩手前まで追い込まれ――。

 (この状況――どうする!?)

 Sフェザーコカトリスと睨みあいながら、ジンは必死に打開策を考えた。


(奴の戦意(モラール)を下げてもこっちの火力不足は変わらねぇ。こっちの戦意(モラール)を上げるには交戦するしかないが、奴のクソデバフ攻撃を食らったらまともな力は残らねぇ。そもそもこちらの攻撃が奴に当たる気がしねぇ)

 ジンはモニターを操作し、自分の攻撃の予測命中率を算出させてみる。


 敵の戦意(モラール)を低下させ【見切り3】を使わせない前提で、32%±武器の命中補正。

 発動された状態ではさらに15%低下。

 逆に敵の反撃は100%命中。


(反撃食らえば2発でこちらがやられるのに、この命中率で運ゲーはできねぇ! 奴に攻撃を当てて反撃を避けられるのは、スピリットコマンドを使ったダインスケンだけだ。だが……消費を考えると、多分2回も交戦すれば余力は残らねぇ)

 そして2発でコカトリスを撃墜できる武器は、無い。

戦意(モラール)を下げても、奴は時間経過とともに再び高める……)

 ジンがどう考えても、勝利へ繋がる道は見えなかった。


 ギリギリと歯軋りするジン。

「不味った……俺の致命的なミスだ」

「どういう事?」

 心細い声で訊くリリマナ。

「勝つ事に本気になって無かった。タコスケども相手に揉め事を起こす、それ自体は仕方ねぇが――それを敵襲だというのに引きずった時点でな!」

 ジンの心は後悔でいっぱいだ。もし態勢が十分に整っていれば、この強敵相手にでも勝ち目があったかもしれない。

 だが、対応を完全に誤った。


 騎士達を助けに飛び出し、不十分な状態で勝ちを逃がすぐらいなら、もっと寛容になって共に戦うべきであった。そうすれば勝機はあっただろう。

 あくまで騎士達と共闘しないなら、ヴァルキュリナの指示を無視して見捨て、周囲の敵をじっくり片づけてマスターウインドへ挑むべきだった。騎士達を捨て駒として見殺しにする事になるが、勝ちは拾えたのではないか。


 結局、中途半端な態度が……不和を引きずりながらも見捨てきれなかった事が、己らの首を絞めている。


(天の神様に依怙贔屓クソチートでも貰えて、敵の一桁も二桁も上の能力値をもらえてりゃ、好き放題しながら楽勝なんだろうがな……本当にショボイ身の上だぜ!)

 歯軋りするジン。

 ムシのいい超パワー願望を持つ者の気持ちが、今、痛いほどよくわかった。


 かくなる上は――

「ナイナイ、ダインスケン。落ちてる騎士共を拾って艦へ逃げろ。俺がギリギリまでこいつを食い止めるからよ」

 言ってコカトリスを睨むジン。

『え? でも、ジン……』

「いいから早くしろ!」

 戸惑うナイナイにジンは叫んだ。

「この機体の耐久性ならそれなりに()つ! お前らが逃げるまでは壁になる。その後はまぁ撃墜されるだろうが――脱出して奴から隠れきれば、生き延びる事はできるだろうよ」

 それを聞いて、マスターウインドは余裕をもって笑った。

『ほう。私の目から、な。そう上手く行くか?』

「ちょっとォ! 絶対それやられちゃう!」

 肩で悲鳴をあげるリリマナ。

「決めつけんなよ。脱出の訓練もしてるだろうが。まぁ世話になったな、お前はナイナイ機へ移れ」

 そう言ってジンはハッチに少し隙間をあけた。リリマナを掴み、そこから押しだそうとする。

「バカ馬鹿ばかァ!」

 必死に抵抗するリリマナ。


 そんなジン達を見ながら、マスターウインドは……笑った。

『フフフ……』

「ご機嫌よろしいようで。なら今日は帰ってくれねぇか?」

 精一杯の軽口を叩くジン。そんな彼にマスターウインドは訊ねる。

『機嫌というより、お前たちがそこまで必死になっているのが滑稽でな。あの艦が手に入れた物が何か、お前は知っているのか?』

「……知らん」

「ちょ、ちょっとォ!」

 正直に答えるジン。不穏な流れを感じて焦るリリマナ。

 そしてマスターウインドは、遠慮なく事実を告げた。


『あの基地には密かに残されていたのだ。黄金級(ゴールドクラス)ケイオス・ウォリアーの設計図がな。あの艦はそれを手に入れ、本国へ持ち帰ろうとしている』

 そう言われても、ジンにはいまいちピンとこない。


 青銅級機(ブロンズクラス)・ランクB、白銀級機(シルバークラス)・ランクSがあるのだから、その上に黄金級機(ゴールドクラス)があっても驚きはしない。

 それが白銀級機(シルバークラス)を上回る物だろうとは教えられるまでもなくわかる。


 だがそれほど大事(おおごと)なのか?

「あ、あァ……」

 しかしリリマナは目に見えて狼狽えていた。秘密が露わになった事で。


『この世界最強の機体、他の世界なら「伝説の武具」といった所か。或いは……戦略級の切り札と言うか。黄金級機がある国は、持たない周囲の国に対し軍事的に圧倒的優位に立つ。この話がわかる世界からお前が召喚されたかどうかは知らんがな』

 マスターウインドの説明を聞きながらジンは考える。

(俺のいた地球なら、空母……いや、核兵器みたいな扱いか? )


『お前はスイデン国の利益のために利用――というより踏み台にされているようだが。事実を知らされていないという事は、納得してやっているのではあるまい? 自分を一方的に利用している連中の、薄汚い権力闘争……そのために一命をかけるのは随分と酔狂に見えるのだが』

 マスターウインドはジンがこの世界のパワーゲームに利用されていると言いたいようだ。

 確かにいい気はしないが……

「あんたの話が本当だとして……まぁそこまでの物なら機密にもなるだろう。別に納得してもいいがよ」

 身分はあっても一兵士のヴァルキュリナ。彼女がジン達に全てを話せないのも仕方が無いのかと、ジンには思えなくもない。


 だがマスターウインドは、さらに、意外な事も告げた。

『物わかりが良いな。だが、お前たちの体は魔王軍に造られた物だと知らされているか?』


「どういう……事?」

 そう訊いたのはジンではない。肩にいるリリマナだ。

 彼女にとっても初耳なのである。

『言葉通りの意味だ。お前達の体は本来と異なっているはず。その体は改造されたのではない。魔王軍が魔法と技術で()()()()()()()()()だ。元の体はまだ魔王軍にある。だからこそ、他のどこに行っても()()事などできはしない。それはあの艦の連中も知っているだろうに……それをお前達に教えていないなら、都合の悪い事は伏せてお前達を抱きこんでいるという事ではないか?』

「え? え?」

 マスターウインドの話に、リリマナは目をぱちくりさせるばかりだ。

「リリマナも知らないのか?」

 ジンの言葉に頷くリリマナ。

「私が隠し部屋の入り口を見つけて、調査班と一緒に入ったけど……なんか書類とかアイテムとかいっぱいあって。でも私、どれが何なのかなんてわかんないし。あの中に黄金級機の設計図があったって言われたけど、それしか……」


『本当に聞いていないのか?』

 笑いを帯びた声で問いただすマスターウインド。


『僕、そんなの聞いてない!』

 叫んだのはナイナイだ。

『では聞いてきたらどうだ。本当の事を。お前たちにお前たちの情報を隠して協力させている連中に』

 マスターウインドがそう言うと、Sフェザーコカトリスは背を向けた。

『私も先日、知ったばかりだが……お前達三人の能力は当初の予定以上に発揮されているようだ。こちらへ来るのなら、その腕に見合った待遇は約束できよう』

 そしてコカトリスは地を蹴り、空へ飛ぶ。その姿はすぐに雲間に消えた。

 去り行くのを、誰も止めなかった。

見たか無敵の、と歌ってはいるが、昭和GEッターロボを見てみると

G含めて「敵が情に絆されたから勝てた」みたいな話がいくつもある。

人の心より強い物は無い、という思想が根底にでも流れていたのか?


「君は君だヨ!」と叫べば敵の男がメロメロになってくれるKIラ准将君も大概だったが

ハニトラに騙されてるだけだったのに敵の女戦士(騙していた張本人)が土壇場で急にメロメロになって命捨てて尽くしてくれるRョウマは

それさえ超えるナニカかもしれん。

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― 新着の感想 ―
[一言] 見たか無敵の……と言いつつ、スパロボ遊ぶようになったあとでビデオ借りて見たら、第2話でいきなり大破炎上してたんで腰抜かしたんですが(笑)。
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