37 不穏 5
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
一行へスイデン本国から屈指の精鋭騎士団が合流してきたのだが、その不埒な魔手がナイナイを襲い、関係は最悪に。
そこへ襲撃する魔王軍。出撃する騎士団に止められ、ジン達は敵を前に格納庫で待機する――。
壁越しに響く爆発音。頻繁に機体を揺さぶる振動。
格納庫で待機していても、安心して寝ていられるわけではない。この状況で外を気にしないでいられる神経があるわけもなく、ジンはモニターに戦闘MAPを映してはいた。
敵軍が一方向から押し寄せている。かなり後方にいるのが敵の隊長機か。見覚えのあるアイコンである。
(Sフェザーコカトリス……マスターウインド! いよいよ奴との戦いか?)
今まで何度か出会ってはいるものの、本格的に戦った事はまだ無い。
一方、貴光選隊はよく戦っているようだった。先陣をきるSランスナイトは魔王軍の量産機を次々と撃破していく。
ジンはそのアイコンにカーソルを合わせた。
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ケイド=クイン レベル14
Sランスナイト
HP:6000/6000 EN:200/200 装甲:1700 運動:110 照準:150
射 シールドビーム 攻撃3000 射程1―6
格 ナイトソード 攻撃3500 射程P1
格 ランスチャージ 攻撃4500 射程P1―2
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ジン達の乗る量産機よりは明らかに高い数値。だがジンは顔をしかめる。
「おいおい……敵の白銀級機とHPが一万ぐらい違うんだがよ?」
その肩でリリマナもモニターを眺めて呟いた。
「スピリットコマンドに制限をかけて機体性能を上げる事もできるし……あと魔王軍の技術なのかなァ」
「かなって……大丈夫かこれ」
不安になったジンは操縦者のステータスも確認する。
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ケイド=クイン レベル14
格闘173 射撃173 技量197 防御142 回避116 命中116 SP66
ケイオス2 指揮官2 戦意限界突破2
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(さすが一般兵とは違う。確かに弱くはないんだが……)
ジンは難しい顔でリリマナに訊いた。
「ケイドはスイデン国最強なんだよな?」
「たぶん。本当に一番かどうか知らないけど、有力な候補だよ」
リリマナはそう答える。
戦闘MAPではケイド機が敵の量産機を倒し、徐々に敵隊長機へと迫っていた。的確で強い攻撃、隙のない防御。教科書のような戦いをハイレベルにこなす姿は、表示されたステータスが間違いない事を示している。
無論、部下の騎士達もその後に続く。彼らも周囲の魔王軍兵を明らかに圧していた。
一見好調子だが、ジンの懸念は消えない。
以前見た敵親衛隊のステータスを思い出しながら――
「魔王軍の親衛隊どもより強いかというと、どうだろうな?」
「わかんない。魔王軍はどの国よりも大きくて強いし、親衛隊はそれの上から三番目だから」
リリマナの返事はますます不安を大きくさせる物だった。
ジンは自分の現在ステータスを表示させる。
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ジン レベル12
格闘171 射撃169 技量194 防御152 回避101 命中114 SP84
ケイオス3 底力7 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド 【スカウト】【ウィークン】
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表示された値は、ケイドの物とそう変わらない。ランクづければ同程度だろう。
(でもな……敵の親衛隊は、俺達一人一人より地力では優っていただろ。その俺とだいたい同じぐらいって事は……)
ついにケイド機が量産機の群れを突破した。敵隊長機まで阻むものは無い。
隊長機同士の激突である。
(……ヤバくねぇか?)
それこそが、さっきからジンが感じていた不安そのものだったのだ。
だが格納庫のジンが考えている事など知る筈もなく、ケイド機は槍の切っ先を敵の大将へ向けた。
『スイデン国貴光選隊隊長、ケイド=クイン! Sランスナイトが貴様を成敗する!』
高らかに名乗りをあげ、敵へ機体を走らせるケイド。
『ほう、ご丁寧な事だ。魔王軍空戦大隊・親衛隊が一人、マスターウインド。Sフェザーコカトリスがお相手しよう』
敵も名乗りをあげた。その口調にはどこか揶揄するような響きもあったが。
(この声、どこかで……)
ジンには聞き覚えがあった。
ケイドの部下達は、敵の量産機達を食い止めていた。隊長機の一騎打ちを邪魔させまいと。
彼らは隊長の勝利を疑っていなかったからだが――
Sランスナイトが必殺の槍で突きかかった。単機の攻撃力としては、ジンの見てきた中で最強の武器である。
当たれば流れは一気にケイドが掴むだろう。
だが――電光石火のその一撃は、天へ飛び立ったSフェザーコカトリスを捉えられなかった。
『お前の動きは大体見切ったのでな』
マスターウインドのその声と共に、フェザーコカトリスの羽根が無数に天を舞い、吹雪のように吹き荒れ、竜巻となってランスナイトを襲った!
『こ、これは!?』
驚愕するケイド。ナイトの白銀に輝く装甲が、灰色にくすんで亀裂が走り、砕けてゆく! まるで風化した石のように。
ジンは見た。モニターに表示されるダメージ……4500以上!
一撃で半壊に追い込まれたSランスナイト。
己と大差無い操縦者の乗る高性能機が追い込まれた惨状。それを見たジンは急いで敵のステータス、その武器の性能をモニターへ映した。
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マスターウインド レベル20
Sフェザーコカトリス
HP:15000/15000 EN:200/200 装甲:1700 運動:120 照準:155
格 ヘブンズソード 攻撃3200 射程P1―3
射 ブレイドフェザー 攻撃3700 射程2-7
射 ペトリフィケーション 攻撃4200 射程P1-6 機体能力全低下2
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マスターウインド レベル20
格闘186 射撃186 技量210 防御156 回避129 命中129 SP100
ケイオス4 見切り3 闘争心3 戦意高揚2
※見切り3LV:戦意130以上で命中・回避・クリティカル率+15%
※闘争心3LV:戦闘開始時の戦意+10
※戦意高揚2 :一定時間ごとに戦意+2
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(こ、こいつ! 能力は明らかにこっちより上! それもあるが……戦意で発動するスキルと上昇を補正するスキルを組み合わせてやがる!)
それが昔遊んでいたゲームでは育成の常套手段の一つだった事をジンは思い出す。
そして敵の武器性能は――
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射 ペトリフィケーション 攻撃4200 射程P1-6
戦意110 消費EN20 条件:ケイオス2
特殊効果:機体能力全低下2
※機体能力全低下2 命中時、敵機の攻撃力・装甲-500、照準値・運動性-20
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(全ステ低下! なんちゅうクソ技! スジが通らねぇ!)
ジンの見る限り、ランスナイトに勝ち目はもう無かった。もう一撃食らえば終わるというのに、機体の各部が石と化し、満足に動けないのだ。
『いかん! ジン、出撃してくれ』
ブリッジからヴァルキュリナの声が飛んだ。
その時、マスターウインドの声が通信機から届く。
『スイデン最強の騎士でもこの程度か。あの艦には我らを手こずらせた聖勇士達がいるだろう? 彼らに助力を頼むがいい……いや、いっそ交代してもらえ。足を引っ張ってはそれこそ騎士の名折れだ』
それを聞いてナイナイが声をあげる。
『思い出した! コウキの町で僕らと戦った人だ!』
それを聞いてジンもようやく思い出した。
クロカと合流した町で、暗殺者をけしかけ、自らも格闘術で自分達三人を圧していた恐るべき拳法の達人を。
(あの男……だったのか!)
ジンの首筋に嫌な汗が流れた……。
評価とブックマークがまた増えていました。
ありがとうございます。
好き勝手にやっている作品ですが、やはり少しでも評価があると嬉しい物であります。
そういうのが今までガチで0だったからな……
いっそ今後は登場人物全員をレオタードの美少女にして、覗いてくださる方々に媚びてみるか。
まぁNAガイゴーの漫画に出そうな奴にした方が、ここを見るような紳士には喜ばれるかもしれんが……。




