129 出発 1
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。
ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。
ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。
ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
アル:冒険者の少年戦士。
パーシー:スイデン国所属の少年騎士。
コーラル:スイデン国所属の青年騎士。
アリス:元魔王軍魔怪大隊長。
ポルタ:アリスの造ったアンデッド系人工使い魔。
「本当に行ってしまうのか? この国の王になって、捜索はそれ用の部隊に任せた方がいいと思うんだが‥‥」
「俺はそうは思わない。それだけだからよ」
訴えるようなヴァルキュリナに、ジンは強い口調で言った。
「見つかりませんでした、と報告された時に。そうだったのか仕方がないな、と言えるのか。この件に関してだけはそれは無い。だから自分が行くしかねぇんだ」
もう決めた事だし、それは仲間達にはっきりと伝えた事でもあるからだ。
行方不明の――生死も限りなく絶望的な不明の、ダインスケンを探す旅に出る事を。
スイデン王城の一室。
ジンと、その隣にはナイナイ。
対面するのはヴァルキュリナ、その後ろにレイシェルとノブ。傍らにはアル、パーシー、コーラルの三人。そしてアリス。
「大国の皇帝になって世界を支配して生き神として崇められる、何もかも全てが手に入る立場なのに‥‥本気で行くんですか」
アリスは呆れていた。
まんまとスイデンの宮廷魔術師に加わわり――昔、魔王軍の四天王だった事は、ベビーフェイスターンしたのでノーカンだとスイデン国王に泣いて訴えて認めさせたそうだ――安泰な生活を手にした彼女から見れば、ジンとナイナイは酔狂以外何物でもないだろう。
そんな彼女に、ジンは鋭い目を向ける。
「外せない物が欠けているのを全てとは言わねぇんだ」
ジンの視線に気圧されて「そ、そうですね」と呟き、アリスはこそこそと下がった。
ジンは昨夜、ナイナイを連れて、共に戦った者達へ告げたのだ。
ダインスケン捜索の旅に、二人で出る事を。
生きているなら探し出す。
死んだならそれを確認する。
見つかるまで戻らない。
「もし、一生見つからなかったら?」
そう、ヴァルキュリナに問われた。
ジンの答えは――
「一生ここには戻らない。それだけだからよ」
それでも行くのだ。
相談ではなかった。決定だった。
ヴァルキュリナが――思った通り、引き留めるのが無駄に終わって――俯いた。
「そんなジンだから、ここまでやってくれた。それはわかるけど‥‥」
見ていたレイシェルが溜息をつく。
「王が頭を抱えてましたわよ。魔王軍を打倒した勇者の拠点となった国で、神蒼玉の過半数を所持していて、黄金級機まで有しているのに‥‥鬼甲戦隊三人がみんないなくなってしまうなんて」
だがジンの口調は変わらない。
「君ら二人がいるから何も心配はしてねぇ。何なら王と王妃になっちまえばどうだ。次の時代の世界のリーダーとして立派にやっていけるだろ」
「必要とあらばそうしよう。レイシェルはクイン家が安泰ならばそれで良いようだから、僕はその意を尊重するが」
そう言って頷くノブは、いつもと変わらぬ調子だった。
彼はジンとナイナイの旅立ちに、否定的な気持ちはなかったからだ。
「野心が無ぇな、ノブも」
ジンの顔に、やっと笑みが浮かぶ。
ノブも微かに笑った。
「いいや。僕はこの世で最も大切な者を得た、最強の霊能者だ。これに満足しないほど、物の価値を知らぬわけではない。それだけだ」
赤面するレイシェルの傍で、ジルコニアが宙で肩を竦めてジンに言う。
「すまんな。もうコイツは隙あらばノロけるふやけ脳味噌になっちまっててさ」
「頼りがいがあって結構じゃねぇか」
そう言うジンの横でナイナイも微笑み、頷いた。
そんなジンとナイナイを見送るパーシーは、涙を堪える事ができないでいた。
「さようなら‥‥」
「な、泣くんじゃねぇよ!」
そう言いながら、アルも涙をごしごし拭いている。ポルタも貰い泣きしながらふよふよ浮いていた。
二人と一つの横で、コーラルも沈んだ面持ちのままだ。
「貴公とは奇妙な縁になったな。どう礼を言えばいいのか‥‥」
そんなコーラルへ、ジンははっきりと笑いかけた。
「お互いにな。ま、仲間内で水くせぇ真似はやめようや」
ぐっ、と言葉に詰まるコーラル。
表情を締めると、背筋を伸ばし、ジンに敬礼した。
「幸運を祈る!」
ジンは‥‥表情を締めると、背筋を伸ばし、敬礼を返した。
「ありがとう! いつか、また会えん事を」
――スイデン首都の門――
街の門は、今日も出入りする人々で賑やかだ。
魔王軍が滅び、スイデン国がその中心を務めた事で、訪れる人の数も以前の倍では利かなくなっている。
それを差し引いても、今日は外が何やら騒がしい。
旅装束に荷物を背負い、ジンとナイナイは外への列に加わった。
「行くか」
ナイナイを見るジン。
「うん!」
満面の笑みで応えるナイナイ。
門の外に出る――その時‥‥。
ここが最終話だと宣言しておいたな?
すまん、予定が変わった。
あと1話だけ続くんじゃ。
すんまそん、ワシは嘘つきではないのです←でもこれも嘘なのです‥‥。




