128 久遠 15
インタセクシルという世界で、一つの大きな戦いが終わった。
そして――その頃、その星の住民にとっては遥かに遠い、宇宙全部で見ればほんのすぐ側では――
光の速度の数十倍速で突き進んでいた蔓は、最も近い信号を見失った。
残り百数十時間で絶対の捕捉圏に捉え、その数分後には発信元の星に達し、己の滋養としていた筈だった。
だが、蔓は目指す星を見失ってしまったのだ。
しかし‥‥そんな事など、特にどうと言う物でもない。
蔓は、それを伸ばしているアザナワン――遠い古代に滅ぼされた、宇宙の果てのどこかの知的生命体種族の言葉で「完全な終焉」だか「最後の運命」を意味する名だったらしい――は、無限大の存在だ。
宇宙に進出した高度な文明を、いくつも星ごと吞み込んできた。
強大な星間国家、一つの銀河を丸ごと支配していた超文明を銀河ごと呑み込んだ事もある。
半エネルギーの生命体、不老であり個体で宇宙空間を旅する存在を星ごと呑み込んだ事もある。
宇宙最強の魔術師だの、時空最強の超能力者だの、全宇宙規模のスキル所持者だの、計測不可能のパワーを有するだの、生と死を超越しただの、レベル無量大数だの、存在自体が上位だの、概念的存在なので不滅だの、究極神だの、惑星破壊だの宇宙破壊だの時空破壊だの‥‥己を大きく大袈裟に表現しておいて、そのくせ一つの星の上で息巻いているだけの「最強者」達を、数えきれないほど星ごと呑み込んできたのである。
アザナワンにそうした「最強者」達のような、本人達でさえ言葉で上手く説明できないような能力は乏しい。
ただ無限大なだけだ。
無限から1を引いても無限。
無限は1つをこぼしても気にはしない。
今この瞬間も、幾多の銀河の多数の星が吸収されているのだ。
そのうち1つを取りこぼしたからといって、それが何だというのだろうか。
何でもないのだ。
蔓は進路を変えた。
次に近い信号へと。
その先にある星にも生命体がいるかもしれない。
それらは助かるのだろうか? 無に等しい可能性を拾いうるのだろうか?
まぁ‥‥それはまた別の、その星の話だ。
インタセクシルと住民が呼ぶ星がある。
その星は滅びの運命を乗り越えた。
次回、最終話。




