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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
350/353

127 淘汰 10

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。

ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。

ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。

リリマナ:ジンに同乗する妖精。

レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

 レイシェルは見た。

 砕けゆく世界樹の上に立ち尽くすサンダーカブトを。

 その片翅が、付け根からもげているのを。


 最終決戦のダメージはそこまで深刻であり、それが表面化したのがこのタイミングだったのだ。


「そんな! ここまで来て、そんな事って‥‥」

 地上へ運ばれて離れてゆくGXウイングロードからのレイシェルのその叫びは、途中で途切れてカブトには届ききらなかった。



 レイシェルの離脱を見送り、操縦席で一息つくジン。

 飛べないならせめて彼女を助ける。それは果たせた。

 だが‥‥やはり、ここまで来ての脱落に無念がこみあげて来る。

「よりによってここでヘバるのか。この程度のモンだったのか? もう少しだったのに、スジが通ら‥‥」

 己の乗機に歯軋りするジンだが――その考えは途中で変わった。


 脳裏に浮かぶはこれに乗っての激闘の日々。

 どんな強敵のどんな攻撃にもぶつかって突破した戦いの記憶。


(なんだ‥‥コイツなら大丈夫、コイツならやれる。そう思って無茶ばっかやらせてきたのは、俺じゃねぇか)

(コイツは今まで応えてきたじゃねぇか)

(ここで駄目になったんじゃねぇ。ここまで、持ち堪えてくれたんだ)


 だから、口から出たのは――

「今までありがとうよ、相棒」



 変身が解ける。ジンの体は右腕以外、元の人間に戻った。

 高度は落ち続け、周囲は震え、世界樹はどんどん砕け、足場は狭くなり続けている。

 そんな中だというのに‥‥奇妙に、心が落ち着いていた。

(これならこれでいいのかもしれねぇ)

 そうとさえ思えた。

 だがふと、肩のリリマナが気になって、そちらを見る。


 彼女と視線が合った。

 妖精の少女は、一瞬どきりとしたようだが、すぐに笑って見せた。

「えへへ‥‥ナイナイに、ヴァルキュリナに、クロカにも悪いなァ。ジンと最後まで一緒にいるの、私だよ」

 恐怖を隠せもしないくせに、彼女は茶目っ気を見せようとして笑っていた。


 ジンはもう一度、歯軋りしなければいられなかった。

(後一人! 後一人でいい、それだけでいいんだ‥‥どうにかならねぇか!)



 その時、世界樹が激しく揺れた。

(いよいよ終わりか!?)

 焦り、振り向いたジンが見た物は――

「ダインスケン!?」


 未起動のブースターを脇に抱えたSブレイドバジリスク。

 そのすぐ側にはブースタードライバーが世界樹に突き刺さっている。

「そ、それでここまで来たのか? そういや、この戦闘で使ってなかったな‥‥」

 目を丸くするジンに、ダインスケンは「ゲッゲー」と応えた。

 いつも通りに。いつもと何ら変わる事なく。



 ブースターは一基。機体は二機。

 恐らく、力不足だ。

 三角コーンを抱え、バジリスクに支えられたカブトの中で、ジンは笑った。

「もし帰れたら万歳だ。駄目だったら‥‥まぁ多分駄目なんだが‥‥その時は、三人で同じ世界に転生できる事でも祈ろうぜ」

「その時はね! 私もジンと同じ大きさで、ダインスケンもお話しできるようになったらいいな!」

 リリマナも笑顔だ。さっきとは違い、もう恐れは無い。

「よっしゃあ! 行くからよ!」

 ジンは叫んだ。晴れ晴れと。

 カブトは跳んだ。全力で。

 バジリスクはカブトの背中を突き飛ばした。全力で。世界樹の崩れ行く幹を踏みしめて。


 バジリスクはブースターを掴むカブトの背中を全力で押したのだ。

 跳ばなかったのだ。


 ジンには、何がどうなっているのか、すぐには理解できなかった。

 ジンは一緒に跳んで、無理を承知の帰還を試みるつもりだったのに。

 ダインスケンはジンとリリマナを助けるために、死地に残って全力でカブトを押した。


 ジンがふり向いた時。世界樹はついに粉々になり。ブレイドバジリスクは虚空に投げ出された。

 燃えゆく無数の破片の向こうに、その姿が流れ、消えて見えなくなる。

「おい? おい‥‥おいぃ!!」

 ジンのその叫びは果たして届いたのか‥‥?



 既に飛行能力を失っていたカブトだが、もしジンが一人なら、それでもダインスケンを追ったかもしれない。

 けれど、肩で呆然とするリリマナに、絶望の底でやっと拾った命を一緒に捨ててくれとは‥‥ジンには言えなかったのである。



――崩壊する世界樹が遠目にやっと見える宙域では——



「あれ! レイシェルさんだよ!」

 ブースターで地上に向かいながら、ナイナイは遠く後方に黄金の機体を見つけた。モニターにはその機体名・GXウイングロードが表示されている。

「お嬢は無事か。ならあの三人もなんとかなるだろ」

 ジルコニアはそう言いながら、モニターに送られたメッセージを再度見た。

 送信者はダインスケン。ナイナイとノブが止める間もなくドライバーブースターで飛んでいく、その直前に送信したメッセージ。


<だいじょうぶだおれがいく>



 ジンもナイナイも、旅の途中、身の振り方に悩んだ事がある。戦う事に疑問をもったり、嫌になったりした事がある。

 ダインスケンにそんな事はなかった。いつも二人について来て、一緒にいただけだ。

 彼の旅の目的も理由も、最初から一つしかなかった。


 兄弟(とも)よ、お前のためならば。


 ただそれだけだ。



 この日。この時代の魔王軍との戦いは終わった。


 ダインスケンは、勝った。

設定解説


・ブースターは一基。機体は二機


ダインスケンの予定では、一基のブースターにバジリスク・カブト・ウイングロードの三機でしがみつき、カブトとウイングロードの飛行能力で補助しながら地上を目指すつもりだった。

この方法でなら帰還の成功は十分にあった。


現場についてみたらウイングロードはいないしカブトは飛べなくなっていた。


なお急行前に文字でメッセージを送ったダインスケンだが、発声できないからといって文盲なわけではないので、やろうと思えばこれまでも筆談は可能だった。

だがジンとナイナイは自分の意思を理解してくれるので、誰かと筆談する必要を感じておらず、今まではただやらなかっただけなのである。

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