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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
348/353

125 淘汰 8

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。

ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。

ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。

リリマナ:ジンに同乗する妖精。

レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

 新たな影から放たれた無数の輝きが五機を飲み込んだ。 

 それが止んだ時――この世界最強の五機は、ある機体は膝をつき、ある機体は倒れていた。


「自機中心型のMAP兵器、だと‥‥」

 呻くジン。

 当然のように言うタレスマン。

『この形態を出すという事は、敵に囲まれている恐れがあるという事。そのぐらいは予想がつく』


 アザナワンは植物である。知性は無い。

 だが頭脳を持つ生物を取り込み、知性を使う能力はあった。

 取り込まれたタレスマンはあらかじめ用意していたのだ。

 無敵の魔王機どもの鉄壁の守りを突破し、()()と直結した最強の守護者を打ちのめす者達が現れた時のために。

 切り札となりえる物を。


 アザナワンは植物である。知性は無い。

 生存し、成長し、生き続けるため、全能力を常に使うのだ。

 奢りや油断という余分な要素はそこには無い。


 その一部であるタレスマンは、周囲の機体をまだ一機も撃墜していない事実を認識していた。

 だからとどめを放つ。

 蔓を通して()()から供給されるエネルギーを胸部に集めた。

 胸に結晶が生じ、それが眩く輝く。

 周囲の敵全てをそれで、今度こそ――



 その時、電撃が迸った!



 強烈なエネルギーがスパークし、世界樹が激震する!

 その中心はタレスマン機。

 そして膨大なエネルギーが収束する結晶へ、放電する拳を打ち込んでいるGXサンダーカブト!

「悪いな。まだ俺のターンは終わってねぇからよ」

 操縦席でジンが呟いた。


【ゴールドライド】による攻撃加速能力。

 この場の全機体で最も頑丈な耐久度。

 ジン自身の底力。

 全てを振り絞り、ジンは敵の攻撃を遮ったのだ。


 いや、遮ろうとはした。

 だがアザナワンの破片はそれでもなお止められなかった。

 カブトの拳は結晶に触れる手前、僅か数ミリの所で食い止められていた。

 膨大なエネルギーで力場が生じ、黄金級機(ゴールドクラス)の拳を持ってしても紙一重で届かない‥‥!


『ターンの前にお前の命が終わる』

 冷酷に言うタレスマン。

 だがジンは敵機を睨みつけた。

「俺の命が終わる前に、もう一つ手をうつからよ」


 カブトがもう片方の手を突っ込んだ。

 両掌を敵の結晶へ、包み込むかのように伸ばす。

 そして、黄金のオーラに包まれた全身の、発雷結晶(エレクトロオーブ)の全てが放電する!

 カブトがMAP兵器として放つ全パワーが、魔王機が放とうとする全パワーとせめぎあい、食い止めていた。

 行き場を失ったエネルギーが荒れ狂い、二機を包み、覆う‥‥!


『私ごと砕け散る気か』

 冷酷に言うタレスマン。

 だがジンはそれを睨みつけた。

「いいや。こいつ(カブト)なら耐えられる。そんな気だ」


 大爆発が起こった!

 世界樹の、二機がいた周囲の枝と葉が粉々になって消滅する。

 哀れ、片側はほとんど裸だ。

 幹にしがみついて爆炎をやり過ごしながら、ナイナイが悲痛な声で呼びかける。

「ジン! ジーン!」



 爆炎が散る。

 四機の操縦者達は見た。

 魔王機アミルアリアンはまだ立っている‥‥!

 しかしその全身はひび割れ、欠け、燃え、半壊していた。

 結晶は粉々になっている。強力な再生能力で徐々に復元はしているが、砕けて壊れている。


 そして、GXサンダーカブトも立っている!

 爆炎で吹き飛ばされそうになったのを踏み止まったのか、間合いは離れてしまっているが。

 全身はひび割れ、欠け、燃え、半壊しているが。鞘翅には亀裂が走り、片方の翅はズタズタになっているが。

 立っている。


 操縦席のジンが、四機のモニターに映った。


 首から下全てが強靭な甲殻の鎧に覆われた、バイオ系人造人間としての戦闘形態(バトルフォーム)

 ナイナイが神蒼玉(ゴッドサファイア)の力に触れる事で変身能力を掌握したように、同系の人造人間であり、同系統の()()であるジンもまた、己が有していた変身能力を掴んでいたのだ。


 そして――ケイオス・ウォリアーは操縦者の能力をダイレクトに反映する。

 同等に傷つきながら、いかなる銀河より巨大な生命体の細胞よりも先に、ジンは叫んだ。

「ナイナイ! ダインスケン!」


 二人は動いた。

 ジンが何を求めているのか。どう応えるべきか。言葉として理解するよりも早く、声を聞いたと同時にわかった。


 魔王機がよろめいている。


 パールオイスターとブレイドバジリスクはサンダーカブトの後ろ、両翼に駆け込んだ。


 魔王機が体勢を立て直した。


 三機が内から光を放つ。光の球になる。オイスターとバジリスクが一つずつ、カブトの両腕が一つずつの、四つの巨大な光の球が生まれた。


 魔王機の結晶が再生した。


 オイスターとバジリスクがカブトの肩を掴む。二機のエネルギーがカブトへ流れる。カブトが両腕を組み、高々と掲げた。


 魔王機の結晶が無数の輝きを、一つ一つが超高熱の破壊の波を放った。


 カブトが組んだ腕を突き出す。

 そこから光線が放たれた!


 四つの神蒼玉(ゴッドサファイア)からパワーを引き出し、一つに収束し、直接撃つ。

 単純な攻撃である。

 どの機体にもそんな機能は無いが。今のインタセクシルの技術でそんな機能は造れないが。

 ジン・ナイナイ・ダインスケンの三人は、複数の機体間で秘宝のパワーを融合させ、操っていた。

 三つの意思が一つになって、三つの体をもつ一個の生き物のように。


 カブトから光線が放たれた。

 魔王機が放つ超高熱の煌めきの波が、貫かれ、魔王機そのものが撃たれた!

 光線はどこまでも伸びる。星空を貫く一条の道のように。



 だがしかし。光の道に半身を吹き飛ばされながら、アミルアリアンは――まだ、動いていた‥‥!

 半壊、どころではない。右肩がごっそり抉れ、片腕が無い。頭はおかしな方向に曲がり、両足がたわんでヨタついている。

 それでも動くのだ。

 残る片方の腕に粒子が集まり、破壊光線が充電される。


 全身全霊を振り絞る三機には、それに対処する余裕は無い。

 それどころかパールオイスターの黄金のオーラが薄れ、機体がよろめく。余力はもはや僅かだ。

 隣のブレイドバジリスクのオーラもまた。

 そしてカブトのオーラも、また揺らめいて薄れゆく――


 ——その時、青い燐光がカブトの周りを舞った。

 ムーンシャドゥの操縦席で、ノブがその煌めきを放っている。

「ええい、持ってけぇ!」

 ジルコニアが叫ぶ。その体がぼんやりとした光を放った。

 そして、カブトの操縦席で。

「最後の、最後お!」

 リリマナの体もきらきらと光る。


 直後、カブトの放つ光の道がさらに威力を増した!

 ジンの目がギラつき、光線が太さを増し、魔王機を吞み込んで――


 大爆発が光の奔流の中で弾けた。

 世界樹が激震する。



 ノブが放ったのはスピリットコマンド【サプライ(補給)】。

 ケイオス・ウォリアーのエネルギーを回復する力。

 ジルコニアが放ったのはスピリットコマンド【エクスペクティション(期待)】。

 SP(精神力)を回復する力。

 リリマナが放ったのはスピリットコマンド【アウェイクン(覚醒)】。

 行動速度を上げて連続行動を可能にする力。

 その三つの力に後押しされたジンが、己のコマンドも振り絞って放った、最後の一打で‥‥


 

 魔王機は、消滅した。



 カブトから、他の機体全てから、黄金のオーラが消える。

【ゴールドライド】の効果時間が尽きたのだ。


 胞子への道を閉ざす最強の守護者は砕けて散った。


 だが、これでさえ時間が経てば再生する駒でしかないのだ。

 敵の真の核、アザナワンの胞子を破壊せねば元の木阿弥である。


 だがその時。

 世界樹が激しく揺れた‥‥!

設定解説


・トリニティロード


GXサンダーカブト、Sパールオイスター、Sブレイドバジリスクの三機に内蔵された四つの神蒼玉のパワーを集積・収束させて放つ破壊光線。

そんな機能は三機に内蔵されていないので、操縦者の意思で各神蒼玉の魔力を操作している。

ナイナイとジンは神蒼玉で己の体を変身させた際、その使い方を掴んだ。ダインスケンは超個体戦闘員としての共感能力で、二人が神蒼玉の力を操作するのを即興でマネしてやり遂げた。

よって厳密には武器ではなく、三人がかりでの「技」である。理屈の上では生身でもほぼ同じ事ができる筈だ。


武器性能(10段階改造時)

射 トリニティロード 攻撃力8200 射程1-9 戦意140 消費60 合体技

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