125 淘汰 8
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。
ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。
ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。
リリマナ:ジンに同乗する妖精。
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
新たな影から放たれた無数の輝きが五機を飲み込んだ。
それが止んだ時――この世界最強の五機は、ある機体は膝をつき、ある機体は倒れていた。
「自機中心型のMAP兵器、だと‥‥」
呻くジン。
当然のように言うタレスマン。
『この形態を出すという事は、敵に囲まれている恐れがあるという事。そのぐらいは予想がつく』
アザナワンは植物である。知性は無い。
だが頭脳を持つ生物を取り込み、知性を使う能力はあった。
取り込まれたタレスマンはあらかじめ用意していたのだ。
無敵の魔王機どもの鉄壁の守りを突破し、本体と直結した最強の守護者を打ちのめす者達が現れた時のために。
切り札となりえる物を。
アザナワンは植物である。知性は無い。
生存し、成長し、生き続けるため、全能力を常に使うのだ。
奢りや油断という余分な要素はそこには無い。
その一部であるタレスマンは、周囲の機体をまだ一機も撃墜していない事実を認識していた。
だからとどめを放つ。
蔓を通して本体から供給されるエネルギーを胸部に集めた。
胸に結晶が生じ、それが眩く輝く。
周囲の敵全てをそれで、今度こそ――
その時、電撃が迸った!
強烈なエネルギーがスパークし、世界樹が激震する!
その中心はタレスマン機。
そして膨大なエネルギーが収束する結晶へ、放電する拳を打ち込んでいるGXサンダーカブト!
「悪いな。まだ俺のターンは終わってねぇからよ」
操縦席でジンが呟いた。
【ゴールドライド】による攻撃加速能力。
この場の全機体で最も頑丈な耐久度。
ジン自身の底力。
全てを振り絞り、ジンは敵の攻撃を遮ったのだ。
いや、遮ろうとはした。
だがアザナワンの破片はそれでもなお止められなかった。
カブトの拳は結晶に触れる手前、僅か数ミリの所で食い止められていた。
膨大なエネルギーで力場が生じ、黄金級機の拳を持ってしても紙一重で届かない‥‥!
『ターンの前にお前の命が終わる』
冷酷に言うタレスマン。
だがジンは敵機を睨みつけた。
「俺の命が終わる前に、もう一つ手をうつからよ」
カブトがもう片方の手を突っ込んだ。
両掌を敵の結晶へ、包み込むかのように伸ばす。
そして、黄金のオーラに包まれた全身の、発雷結晶の全てが放電する!
カブトがMAP兵器として放つ全パワーが、魔王機が放とうとする全パワーとせめぎあい、食い止めていた。
行き場を失ったエネルギーが荒れ狂い、二機を包み、覆う‥‥!
『私ごと砕け散る気か』
冷酷に言うタレスマン。
だがジンはそれを睨みつけた。
「いいや。こいつなら耐えられる。そんな気だ」
大爆発が起こった!
世界樹の、二機がいた周囲の枝と葉が粉々になって消滅する。
哀れ、片側はほとんど裸だ。
幹にしがみついて爆炎をやり過ごしながら、ナイナイが悲痛な声で呼びかける。
「ジン! ジーン!」
爆炎が散る。
四機の操縦者達は見た。
魔王機アミルアリアンはまだ立っている‥‥!
しかしその全身はひび割れ、欠け、燃え、半壊していた。
結晶は粉々になっている。強力な再生能力で徐々に復元はしているが、砕けて壊れている。
そして、GXサンダーカブトも立っている!
爆炎で吹き飛ばされそうになったのを踏み止まったのか、間合いは離れてしまっているが。
全身はひび割れ、欠け、燃え、半壊しているが。鞘翅には亀裂が走り、片方の翅はズタズタになっているが。
立っている。
操縦席のジンが、四機のモニターに映った。
首から下全てが強靭な甲殻の鎧に覆われた、バイオ系人造人間としての戦闘形態。
ナイナイが神蒼玉の力に触れる事で変身能力を掌握したように、同系の人造人間であり、同系統の兄弟であるジンもまた、己が有していた変身能力を掴んでいたのだ。
そして――ケイオス・ウォリアーは操縦者の能力をダイレクトに反映する。
同等に傷つきながら、いかなる銀河より巨大な生命体の細胞よりも先に、ジンは叫んだ。
「ナイナイ! ダインスケン!」
二人は動いた。
ジンが何を求めているのか。どう応えるべきか。言葉として理解するよりも早く、声を聞いたと同時にわかった。
魔王機がよろめいている。
パールオイスターとブレイドバジリスクはサンダーカブトの後ろ、両翼に駆け込んだ。
魔王機が体勢を立て直した。
三機が内から光を放つ。光の球になる。オイスターとバジリスクが一つずつ、カブトの両腕が一つずつの、四つの巨大な光の球が生まれた。
魔王機の結晶が再生した。
オイスターとバジリスクがカブトの肩を掴む。二機のエネルギーがカブトへ流れる。カブトが両腕を組み、高々と掲げた。
魔王機の結晶が無数の輝きを、一つ一つが超高熱の破壊の波を放った。
カブトが組んだ腕を突き出す。
そこから光線が放たれた!
四つの神蒼玉からパワーを引き出し、一つに収束し、直接撃つ。
単純な攻撃である。
どの機体にもそんな機能は無いが。今のインタセクシルの技術でそんな機能は造れないが。
ジン・ナイナイ・ダインスケンの三人は、複数の機体間で秘宝のパワーを融合させ、操っていた。
三つの意思が一つになって、三つの体をもつ一個の生き物のように。
カブトから光線が放たれた。
魔王機が放つ超高熱の煌めきの波が、貫かれ、魔王機そのものが撃たれた!
光線はどこまでも伸びる。星空を貫く一条の道のように。
だがしかし。光の道に半身を吹き飛ばされながら、アミルアリアンは――まだ、動いていた‥‥!
半壊、どころではない。右肩がごっそり抉れ、片腕が無い。頭はおかしな方向に曲がり、両足がたわんでヨタついている。
それでも動くのだ。
残る片方の腕に粒子が集まり、破壊光線が充電される。
全身全霊を振り絞る三機には、それに対処する余裕は無い。
それどころかパールオイスターの黄金のオーラが薄れ、機体がよろめく。余力はもはや僅かだ。
隣のブレイドバジリスクのオーラもまた。
そしてカブトのオーラも、また揺らめいて薄れゆく――
——その時、青い燐光がカブトの周りを舞った。
ムーンシャドゥの操縦席で、ノブがその煌めきを放っている。
「ええい、持ってけぇ!」
ジルコニアが叫ぶ。その体がぼんやりとした光を放った。
そして、カブトの操縦席で。
「最後の、最後お!」
リリマナの体もきらきらと光る。
直後、カブトの放つ光の道がさらに威力を増した!
ジンの目がギラつき、光線が太さを増し、魔王機を吞み込んで――
大爆発が光の奔流の中で弾けた。
世界樹が激震する。
ノブが放ったのはスピリットコマンド【サプライ】。
ケイオス・ウォリアーのエネルギーを回復する力。
ジルコニアが放ったのはスピリットコマンド【エクスペクティション】。
SPを回復する力。
リリマナが放ったのはスピリットコマンド【アウェイクン】。
行動速度を上げて連続行動を可能にする力。
その三つの力に後押しされたジンが、己のコマンドも振り絞って放った、最後の一打で‥‥
魔王機は、消滅した。
カブトから、他の機体全てから、黄金のオーラが消える。
【ゴールドライド】の効果時間が尽きたのだ。
胞子への道を閉ざす最強の守護者は砕けて散った。
だが、これでさえ時間が経てば再生する駒でしかないのだ。
敵の真の核、アザナワンの胞子を破壊せねば元の木阿弥である。
だがその時。
世界樹が激しく揺れた‥‥!
設定解説
・トリニティロード
GXサンダーカブト、Sパールオイスター、Sブレイドバジリスクの三機に内蔵された四つの神蒼玉のパワーを集積・収束させて放つ破壊光線。
そんな機能は三機に内蔵されていないので、操縦者の意思で各神蒼玉の魔力を操作している。
ナイナイとジンは神蒼玉で己の体を変身させた際、その使い方を掴んだ。ダインスケンは超個体戦闘員としての共感能力で、二人が神蒼玉の力を操作するのを即興でマネしてやり遂げた。
よって厳密には武器ではなく、三人がかりでの「技」である。理屈の上では生身でもほぼ同じ事ができる筈だ。
武器性能(10段階改造時)
射 トリニティロード 攻撃力8200 射程1-9 戦意140 消費60 合体技




