122 淘汰 5
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。
ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。
ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。
リリマナ:ジンに同乗する妖精。
ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。
クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
GサンダーカブトとEムーンシャドゥ。その二機が竜艦Cガストニアに着いた時、格納庫のハッチは既に開いていた。
その内側、壁際に誰かがいる。【宇宙A】と書かれたガラスのヘルメットを被ったクロカが、ロープで体を固定してしがみついているのだ。
手動開閉装置でハッチを開けて待っていた彼女は、気圧差で外へ飛ばされそうになりながらも、手持ちの小型通信機で必死に呼びかけてきた。
『ジン、こっちだ! 操縦席のハッチを開ける準備しながら中へ入れ!』
「無茶してねぇか!?」
度胆を抜かれつつもジンは急いで格納庫へ飛び込む。もたもたしているとクロカが吹き飛んで行きそうで怖い事この上ない。
すぐにムーンシャドゥも続き、二機は壁際のハンガーへ背中を押しつけるように立った。
『格納庫の戸が閉まったら即、操縦席を開けろよ!』
怒鳴りつつもハッチを閉めるクロカ。完全に閉まる前に早くも移動しようとしてロープを引っぱり、艦外へ吹き荒れる気流に逆らってカブトへ向かおうとする。
「だから無茶すんなって!」
焦るジンに、ノブからの通信が届いた。
『彼女に死なれては困るな。僕がなんとかしよう』
シャドゥのハッチが開き、ノブが身を乗り出した。荒れ狂う気流をものともせず、マントをなびかせて立つ。
青い粒子を舞わせ、ノブがその手を振った。
するとクロカを不可視の力場が包み、その体が気流に逆らって宙を滑るように動く。
『おわわわっ!?』
混乱してジタバタするも、クロカは真っ直ぐノブの眼前まで漂った。
テレキネシス――念動力で手を触れずに物を動かす、超能力系呪文の一つ。その力の強さは術者の魔力に直結する。
ノブがポケットから神蒼玉を取り出した時には、ハッチは閉まって気流は止まっていた。宝玉を手渡され、クロカはおっかなびっくりながらノブに頼む。
「あ、あんがと。このままカブトの操縦席までお願いしたいんだけど‥‥」
「おやすい御用だ」
ノブが指を振ると、クロカはそのままカブトの操縦席前へ移動した。
カブトのハッチを開けるジン。
「言われた通り開けたが、どうすればいいんだ?」
「もちろん取り付けるんだよ!」
そう言ってクロカは操縦席に入り、ジンの膝の上によじ登った。
「お、おいィ?」
たじろぐジン。
部品を取り付けるというからには、どこかの装甲を外して回路の途中に組み込むのだと思っていたが――
「すぐ終わる! 前もって準備してるから!」
ジンの膝の上で壁の開口部を開けながらクロカが怒鳴る。
中には丸い結晶がはめ込まれていたが、彼女はそれを外して外へ投げ捨てると、代わりに神蒼玉を嵌めこんだ。
ジンは気づく。
「操縦席から取り付けられるようにしてたのか!」
「そうだよ! ここに配線を迂回させてたんだ。整備の手間考えたらバカだけど、戦地で即改造するかもだったから!」
そう叫びながら、クロカはポケットからいくつかの小さな部品を取り出しては神蒼玉やその周囲に取り付けていく。ドライバーやピンセットのような工具を操る的確さと素早さは流石の一言だ。
だが本来そんな作業をする場所でも体勢でもなく、せわしなく動く肘でリリマナががんがん押される。
「狭いぃ‥‥」
「しゃあないだろ! この際ヘンな所触ってもいいから! 今は許すから! だから文句は言うな!」
作業の手を止めず視線も動かさず、クロカがヤケクソ気味に怒鳴った。
「ありがてぇ。泣けるぜ」
太腿の上で片膝立ちされる痛みに耐えつつ、ジンは呻いた。
なお付け加えるなら、種族的な事もあり、クロカの体型は決して豊かではない。
むしろ直線が多い。
ともかく、実際にはあっという間だ。
クロカが開口部を勢いよく閉める。
「よしできた! すぐに発進しろよ、いいな!」
そう言って操縦席から飛び出し、ハンガーに命綱をひっかけて飛び降りつつ、手持ちの通信機に怒鳴った。
『こちら格納庫! 準備OK、ハッチ開けてくれ!』
それはブリッジへの指示である。
当然、ヴァルキュリナはハッチを開けるようクルーに指示した。
よってハッチは開き――また気圧差で外への気流が吹き荒れ、クロカは命綱を頼みに柱へしがみついて耐える。
モニターでそれを見て、リリマナの顔が青くなった。
「うわぁ、死んじゃうんじゃない?」
「つっても今はどうしようもねぇ。俺らにできる事は、出撃だけだ!」
ジンは機体をハンガーから離す。
モニターには機体の状態が表示されていた。その新たな名前も。
その名でジンは通信を入れる。
「GXサンダーカブト! 起動!」
一瞬の後、新たな力を得た、この時代最後の黄金級機が、竜艦から出撃した――!
――艦の外は激戦の只中――
撃墜されては補充される魔王機アミルアリアン。
鬼甲戦隊とクイン星輝隊が宙域のあちこちで戦う中、一機がすり抜けて竜艦に迫る。
それを食い止めようとナイナイのSパールオイスターが横から光線を撃つが、一対一の戦闘では黄金級機並の力を持つ魔王機相手には不利だ。
幾度か撃ち合い、焦熱の光線がオイスターを掠める。
「きゃあ!」
悲鳴をあげながら、それでも体勢を立て直すが、そこへ敵の次の射撃が――
「させん!」
黄金の機体が割り込む。
ジンのカブトが熱線を受け止め、遮った。
その横を流星のように抜けるムーンシャドゥ。
カブトと同時に再出撃したその機体からノブの通信が届いた。
「ジン! 動け!」
「おう!」
ノブの一言で意図を理解し、ジンのカブトは飛ぶ。
黄金の雷光と青い煌きが魔王機へ向かい、閃光のように打った。
合体攻撃・ルナティックプラズマ――同時に叩き込まれる背中合わせの後ろ回し蹴りが一辺の慈悲もなく敵を粉砕する!
吹き飛ばされながら爆発四散するアミルアリアン。
それを背にジンは通信を送った。
「待たせたな、すまん」
「ううん、来てくれるって思ってたから!」
声を弾ませるナイナイ。
そんな二人へ別の魔王機が、原子分解の魔力を掌に秘めて襲い掛かろうとした。
が――横から首を刎ねられる。
「ゲッゲー」
いつもと変わらず鳴くダインスケン。
Sブレイドバジリスクもジンとナイナイに合流した。
ジンとノブが戻ったのを見て、眼前の魔王機を聖剣で叩き斬りながらレイシェルが叫ぶ。
「正念場ですわね。行きますわよ!」
戦場に――通信機越しではあるが――響き渡る声。
「【ゴールドライド】!」
「【ゴールドライド】!」
「【ゴールドライド】!」
「【ゴールドライド】!」
「ゲッゲー」
五つの機体の全身を金色の輝きが染める。
偽りなく文字通りの、生存か絶滅かの戦いが、今、決着の時を迎えるのだ‥‥!
設定解説
・アミルアリアン(強)
ディーンとディーアが乗る物。
アミルアリアンはアザナワンの細胞が増殖・変化して生成される物なので、分類としてはケイオス・ウォリアーではない。
じゃあ何なのかというと微妙に区分し難いのだが、暗黒大僧正やってる連中が自分の皮で服つくって着ているような感じが一番近いだろう。
異世界の異星物を地球の物に例えて説明するのは難しい事もある筈だ。
基礎ステータス(3段階改造)
HP:72000 EN:345 装甲:2770 運動:145 照準:230
HP回復・大
EN回復・大
射 流星光線(MAP) 攻撃4300 射程1-6直径5
射 破壊光線 攻撃4800 射程1-8
格 死の接触 攻撃5300 射程P1-3




