116 神意 7
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
エンク:枝分かれした麒角を持つ精悍な青年。光速戦闘を可能とする能力者。
ラン:長い赤毛の後ろ髪に孔雀のような尾羽の混ざった、強気な目つきの女性。無限再生と敵を即死させる能力を持つ。
サイシュウ:メガネをかけた陰険そうな猫背の禿。ただし頭皮は黄色い。望んだ物を消去する能力者。
『敗れていた、か‥‥確かにな。だがいくらあがいても、アザナワンを滅ぼす力などこのインタセクシルに存在せん』
倒れた黄金級機からの、ジェネラル・ルードの呟きには、どこか無念と――諦めがあった。
そんなルードにノブは言う。
「滅ぼす必要は無いだろう。それは先に行った皆も気づいているはず。貴方も‥‥わかっていたのではないか?」
束の間、沈黙があった。
再び漏れる、無念の声。
『私では暗黒大僧正どもに勝てぬ』
「僕ら一人一人もそうだ。だから全員でぶつかる。僕の考える貴方の過ちは、一人でできる事だけで答えを出そうとした、そこだ。それゆえ行き詰まった」
ノブの声にははっきりと批難があった。
「貴方が決意を持っていた事も、目的をもっていた事もわかる。それが僕らと同じ道であれば‥‥と、考えずにはいられないのだ」
Gエリアルターミガンの腕が動いた。
砕けた胸甲の中から、何かを抉り取る。
小さなボックス状の部品――それが何か、ノブにはわかった。
神蒼玉が内蔵された、ジェネレーターの一部である。
『持って行け』
ルードが促した。
「無論だ」
ノブのEムーンシャドゥがそれを受け取った。
ボックスが離れると、ターミガンの腕が力を失って地に落ちる。
そしてルードは言った。
『離れろ。この機体は爆発する』
今度はノブが促した。
「脱出するんだ」
しかし、ターミガンに動きは無い。
ただルードからの通信が返ってくるだけだ。
『せんよ。是非はともかく、己の出した結論と行動の結果だ。己が負わねばならぬ。ノブよ‥‥』
「なんだ」
『もう、行け』
一瞬だけ、迷いを見せはしたが――ムーンシャドゥはターミガンに背を向け、その場を離れた。
雪の降る雪原を、未だ続く戦いの場へと歩く。
その背の向こうで、火柱と爆音が起こった。
ムーンシャドゥのマントがはためく。
四大隊長最後の一人が、今、息絶えた。
ムーンシャドゥは雪原に倒れたカマセイル隊の側を通る。
横たわる三機の側に膝をつかせ、通信を送った。
「おかげで勝てた。ありがとう」
サイシュウから通信が返る。
『ふん。ラスボス戦がまだ終わってねーだろ。ま、頑張りな』
その声はどこか晴れやかで、笑っているようでもあった。
『こっちはここまでね。楽させてもらうわ』
ランからの返信も同じく。
怪獣と戦う連合部隊から、率いるグスタの叫びが通信機越しに漏れてくる。
『もう少しだ! やれるぞ!』
彼の乗る牛頭人身の機体が鎖鉄球を振り回し、手足をもつ巨大ミミズを叩きのめした。周囲の機体も次々と怪獣どもを打ち倒してゆく。
無論、連合部隊の機体もかなりの数が撃墜され、雪原に残骸を晒している。しかしそれでも、もう流れは完全に連合部隊が掴んでいた。
エンクからも通信が入った。
『ルードの言葉ではないが、行け』
「了解だ」
そう返信すると、ノブは機体を再び立ち上がらせる。
そして真っすぐに、不時着した天空の城へと向かった。
戦場を離れ、城の前まで来て。
ノブは城へと通信を入れる。
「ディアブロ。先に行ったニ艦を追う。ブースターの準備をしてくれ」
天空の城倉庫に入れてある、予備の移動用ブースター。
本来は脱出のための物だが、先行した二艦を追うために使う事はできる‥‥というより、使わなければムーンシャドゥでは大空の向こうへ追いつけないだろう。
『了解だぜぇ。しかし休憩なしで大丈夫か?』
ディアブロからの返信を聞きながら、ノブは城に機体を入れる。
「大丈夫かどうかは問題ではない。僕は託された神蒼玉を持って行かねばならない」
モニター越しに肩をすくめて見せるディアブロ。
『はいはい。じゃあ回復アイテムもあるだけ用意しておくぜぇ』
設定解説
・使わなければムーンシャドゥでは大空の向こうへ追いつけないだろう
飛行用パーツと移動力補強パーツで‥‥という案は却下となる。
肝心なのは戦闘に間に合う事であり、全部が終わった後にのろくさ辿り着いても全くの無意味だからだ。
しかし行くだけなら行けるのか‥‥と考えると、飛行できるロボのある星には「未知の秘境」なんか無い気もしてきた。
この作品にも秘境だの未知の土地だのを何度か出した気もするが‥‥まぁなんで飛行型の機体でそこらへんを調べにいく奴がいなかったのかは今から考えるとしよう。
描写しなかっただけで、クソでかい洞窟の中だったのかもしれないな。




