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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
33/353

33 不穏 1

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

新たな補充人員を仲間に加え、一行は差し向けられた親衛隊をまたもや撃破した。

だがそれはさらに強力な刺客を放たれるという事でもあった――。


「ねぇ、ジン。先に出るけど、見ないでね……」

 体をタオルで隠し、沈んだ顔で懇願するナイナイ。

「わかったけどよ……もう最初から女の方に入ればいいんじゃねぇのか?」

「ゲッゲー」

 溜息をついて了解するジン。鳴くダインスケン。

 その後ろをそそくさと通り過ぎるナイナイ。体を隠してはいるものの、濡れたタオルごしに浮き出る控えめながら柔らかな胸や腰の輪郭は、ぎりぎりまで出た太腿の曲線は、すらりとした少女のものだった。

 背中と尻は全く隠せていない、裸である。ジン達がふり向く事は無いとわかっているものの、やはり羞恥は抑えられない。ナイナイの頬は真っ赤だった。



 その日の特訓を終え、ジン達は艦内の浴室で体を拭いていた。この世界の艦にシャワーや風呂などという物は無い。だが汗を拭き垢を落とすという習慣はあり、それは体を湯で拭く部屋を用意して行われていた。

 浴室(よくしつ)とは言うが、湯に体ごとつかるわけではない。高熱を発する魔法をかけた石で湯を沸かすための大きな桶があり、それにタオルを浸して体を拭くのだ。

 この世界にも入浴という概念はあるが、それは軍艦で毎日やるような事では無いのである。日本に比べて遥かに湿気の少ない地である事も無関係ではないだろう。


 広めの部屋ではあるが、それでも使用は数人ずつの交代制だ。誰が決めるでもなく、自然とジン達は三人で使っていたのだが――途中でナイナイの体が女性になる事がたまにあった。

 そうなるとジンとダインスケンは並んで壁を睨み、その後ろをナイナイが急いで出ていく……という事になる。

 ナイナイの性別が変化するサイクルも、だんだんわかっていた。

 寝る前から朝起きるまでは女。起きてしばらく、戦闘訓練をする頃になると男になる。そしてまた寝る前には女になっているのだ。

 ……が、確実に何時から何時まで、と決まっているわけではない。これが結構大きな変動があり、下手をすれば変化のタイミングが数時間ずれる事もある。

 マスターファングを倒した直後ぐらいは「寝るといつの間にか女になっていた」ような状態だったが、ここ数日は男の時間が終わるのが早くなっていた。浴室の中で戻るのはこれで二日連続である。


(妙な体にされたな、あいつも。まぁ改造できるなら元に戻す事もどこかでできると思うんだが……)

 ジンは甲殻に包まれた己の右腕をタオルで拭きながら、自分に言い聞かせるようにそう考えていた。



「アニキ、嫌な話を聞いたっス」

 部屋に戻った三人へ、二段ベッドの上からゴブオが声をかける。

 ゴブリンには入浴の習慣は無いそうで、ゴブオは風呂が嫌いだった。放っておくとガンガン臭くなるのでジンは体を洗うよう命じたが、結果、適当な時間に格納庫の片隅で雑に水を被るだけだった。それも二日に一度だ。

 一応臭いはマシになったので、もう好きにさせている。

「で、話ってのは?」

 自分のベッドに腰掛けて訊くジン。


「へえ! 味方に白銀級機があるとはな」

 感心して声をあげるジン。

 ゴブオが食堂でつまみ食いついでに盗み聞きした話によると、スイデン国の正騎士団、ケイオス・ウォリアーの操縦者達が何人かこの艦に増員として派遣されるという。

 そしてその隊長は白銀級機(シルバークラス)の機体に乗っているというのだ!


(まぁ魔王軍にはあれだけ何機もあるんだからな。どこぞの王国にも数機はあっても不思議じゃないだろう。味方に加わってくれれば戦闘は俄然楽になるぞ)

 ジンがまだ見ぬ助っ人に期待していると、ゴブオが不満を漏らした。

「新顔のヤロウがアニキを差し置いてデカいツラしねぇか心配っス」

「ははは」

 苦笑するジン。そして事もなげに言う。

「そりゃするだろ。国の正規の騎士で上位機種に乗ってるとあっちゃな」

「あ、アニキ!? 新参にイキられていいんですかい?」

 狼狽えるゴブオ。


 下級モンスターの世界では、自分の地位を脅かす奴に寛大になる事などありえない。蹴落とされた者はとにかく侮られ、侮蔑の対象となる。だからジンの態度は全く理解できなかった。


 そんなゴブオの気持ちは梅雨知らず、ジンは笑いながらベッドに寝転がる。

「つっても俺らはしょせん雇われ者よ。正規の兵が来るならそっちが主力になるわな。まぁ頼りになるリーダーが来る事を期待しようじゃねぇか」

 ナイナイもわくわくしながら、二段ベッドの上からひょいと顔を出す。

「どんな人だろ? 僕らと仲良くしてくれるかな?」

「凛々しい女騎士様かもしれないぜ。ナイナイを可愛がってくれるかもな」

 ニヤリと笑いながら言うジン。ナイナイはムッと眉をひそめた。

「そう言う事言う。僕を子供か女の子みたいに……」

「ゲッゲー」

 ダインスケンがいつも通り鳴いた。



 翌日、昼前。

 街道そばの山影にCパンゴリンは踏み込む。そこが味方との合流地点なのだ。

 岩山の崖の陰に、果たして、四機のケイオス・ウォリアーが待機していた。

 うち三機は見た事がある。魔王軍も多用している量産型機、Bソードアーミー。ギリシャかローマの兵士のような、剣と弩で武装した巨人型機。

 そして残りの一機を、ジンが窓から眺めながら呟く。

「あれが貴光選隊(きこうせんたい)白銀級機(シルバークラス)、Sランスナイトか」


 貴光選隊(きこうせんたい)……ロイヤルライトセレクテッド。それはスイデン国騎士団で1、2を争う精鋭小隊。

 その隊長機が白銀級機(シルバークラス)・Sランスナイト。

 ケイオス・ウォリアーは共通の設計になっている部品も多く、胴体の腰から上はボディアーマー状の、双肩は肩当て状の装甲で覆われている。これは青銅級機(ブロンズクラス)白銀級機(シルバークラス)も同じだが、簡素な青銅級の装甲に比べ、白銀級の装甲は厚く頑丈で装飾も施されている。これは人間の歩兵と騎士の鎧の違いがそのままスケールアップしたような物だ。

 Sランスナイトはその名の通り、白銀の甲冑に身を包んだ騎士のようだった。手には巨大な槍を持ち、それも銀色に輝いている。

 美しさという点では、ジン達が戦った魔王軍の半人半獣機よりも遥かに勝っていた。


「ま、挨拶にでも行くか」

 ジンは仲間を促し格納庫へ向かう。途中で軽い振動――倉庫に着くと、開かれたハッチから貴光選隊(きこうせんたい)が既に着艦していた。

ケイオス・ウォリアーの鎧については、以下のように考えている。


青銅級機

胴体はブレストプレート+肩当て

腕も覆うが、肘から先を覆うガントレット状の装甲。

足は膝から下をグリーブ状の装甲が覆う。


白銀級機

青銅の物が大きく・厚くなる。

加えて胴体部には下半身の装甲(腰当だの草摺だの呼ばれる部分)が追加。

上腕や太腿もある程度覆われる。


もちろんこれらには各機ごとの差があり、敏捷性重視で軽装になっている機体や、逆に重装甲になっている機体もある。

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