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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
327/353

104 双星 3

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。

ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。

ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。

リリマナ:ジンに同乗する妖精。

ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。

クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。

レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。

エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。

アル:冒険者の少年戦士。

パーシー:スイデン国所属の少年騎士。

コーラル:スイデン国所属の青年騎士。

アリス:元魔王軍魔怪大隊長。

ポルタ:アリスの造ったアンデッド系人工使い魔。

エンク:枝分かれした麒角を持つ精悍な青年。光速戦闘を可能とする能力者。

ラン:長い赤毛の後ろ髪に孔雀のような尾羽の混ざった、強気な目つきの女性。無限再生と敵を即死させる能力を持つ。

サイシュウ:メガネをかけた陰険そうな猫背の禿。ただし頭皮は黄色い。望んだ物を消去する能力者。

老人:ナイナが転がり込んだ、ボロ長屋の一室の持ち主。実は滅んだ大国の前天王ディーヴだった。

 突入用ブースターと黄金級機(ゴールドクラス)の製造は順調に進む。

 そんな日々の中、スイデン国軍にも変化があった。


 近隣諸国から続々と戦力が集結したのである。


 ナーラー前天王ディーヴはスイデンに留まった。

 壊滅状態になったナーラー国よりもスイデンの方が周辺国に連絡をとり易いと判断して、である。

 そして己の名で諸国に檄文を飛ばした。最終決戦の準備は着々と進んでいる、志を共にする勇士よ来たれ‥‥と。


 流石に世界でも屈指の権力者だった男である。文自体はすぐに大陸中に広がった。

 だが壊滅した三大国の前王が他国から飛ばした檄文を、何か裏があるのではと怪しむ者は多かった。

 よって世界中が一丸となる‥‥などと都合良くはいかなかった。

 しかし、それでも駆け付けた者達はいたのだ。



 入城したレジスタンス【リバーサル】。その部隊を率いるのはリーダーのグスタ。

 彼はレイシェル達を見ると、勢いよく手をふって駆けて来る。

「よう! 今のケイト国には出せる部隊がないんで、俺達が来たぜ」

 今の彼はレジスタンスのリーダーであると同時に、ケイト帝国からの増援でもあるのだ。

「お、本当にいた。おっすリュウラ!」

 レイシェルの傍にいる顔なじみに上機嫌で挨拶もする。

 そんなグスタの後ろからひょっこり顔を出す少女が一人。

「ね、言った通りでしょ」

 副隊長のエリザドラである。

 元同騎士団員だったリュウラは、そんな二人に‥‥

「あ、うん‥‥」

 気乗りしないまま生返事をするだけだった。


 リュウラにとって、この二人のように人の輪にいる事が普通の者達は違う世界の住人だ。

 あまり親しい間柄でも無かった。


 しかしグスタはそんな様子に気づきもせず、張り切って拳を握る。

「ヘヘッ、元ガデア騎士団員達が魔王軍討伐の中心になるなんてな! 勝利の暁に再建するコノナ国は、このメンバーで新王制ブチ上げといくか」

 その横でくすくすと笑うエリザ。


 それを眺めて顔をしかめるジルコニア。

「あんにゃろら‥‥ゴーズのおっさんにボコられて裏切ってやがったクセに。都合悪い事全部忘れてやがんな」

「自分達が主役みたいな事言ってるゥ!」

 リリマナも不満そうだ。

 その横でポルタも頷いていた。

 その横でファティマンのシランガナーもポージングしながら頷いていた。



 そんなレジスタンスから、三人組がナイナイを囲む。

「ナイナ! 元気してた?」

 溌剌(はつらつ)とそう言うのは元カマセイル隊、鳳凰獣人の女戦士ラン。

「みんな!」

 彼女を、他の二人を見て、ナイナイの顔が明るく輝いた。

 それを前に、麒麟獣人のエンクも嬉しそうに微笑む。

「俺達の力がどこまで通じるかはわからん。だがナイナと爺さんだけを危険には晒せんからな」

 空亡獣人のサイシュウも楽しそうに笑い‥‥ながら、上から下までしげしげとナイナイを眺める。

 半袖短パンリボン付きの軍服を前に、顎に手を当てて言うには――

「男になっても変わらねーな。これなら女のままでいいじゃねーか」


「へ、変かな?」

 ちょっと恥ずかしそうに、戸惑いながら自分の体を見下ろすナイナイ。

 それをランが、後ろからがばりと抱きしめる。

「可愛くていいと思うわよ。こいつもそれには同意なんじゃない?」

 彼女の悪戯っぽい視線を送られ、サイシュウは「フン」と鼻を鳴らしつつ、それでも笑顔は崩れなかった。

「元より否定はしてねーよ。俺は女の方が好きってだけの、個人の好みでしかねー」



 なお、もうちょっと堅物(かたぶつ)な連中もいる。

「前天王! 我らも馳せ参じました!」

 そう言って前天王ディーヴにひざまずく騎士達が。


「あれは?」

 訊ねるアルに、コーラルが教える。

「ナーラー国の騎士団、その生き残りだ」

「彼らも騎士道を(まっと)うするために来たんですね」

 同じ騎士として感じる物があるのか、パーシーはその一団を嬉しそうに見ていた。



 そこへ二つの旗を立てた部隊も到着する。

 旗は家紋——フォースカー子爵家とファンデム伯爵家の混成軍だ。

 集まる軍を見渡し、ヴァルキュリナの父・フォースカー子爵が「ふむ」と呟く。

「見合いがどうこうという雰囲気ではなさそうだな」

「父上!」

 赤くなって叱咤するヴァルキュリナ。

 一方、ファンデム伯爵も娘に手を振り大声で呼ばわる。

「おーい、リュウラ。我らも助太刀に来たぞ」


 呼ばれたリュウラはそっぽを向いて聞こえないふりをしていた。



 また、独特の臭いを放つ一団もあった。

 様々な魚類や頭足類の頭部を持ち、スケイルアーマーと槍や銛で武装した一団が。

 それらを前に、ダインスケンが「ゲッゲー」と鳴く。

 一団の先頭にいたウミヘビの半獣人|(頭部が完全に動物のタイプ)が「シャー」と応えた。


「あの水棲生物の獣人達は何だ?」

 首を傾げるエリカに、水竜の賢者ヨルムンが教える。

『竜人国からの援軍だ。神竜セブンセンシズも何もしないわけではない』

 レイシェルが額を抑える。

「その、もうちょっとこう、意思の疎通がし易ければ助かるんですけど‥‥」



 また片隅には、屈強な修行僧の一団もいた。

 全く同じ胴着を纏い、顔は般若の面で隠されている。

「面白い。我ら大往生十六漢だいおうじょうじゅうろっかんも命を捨てて戦おうぞ」

 十六人の修行僧からは、ただならぬ闘気が放たれていた‥‥!


「あんな奴等いたか?」

 疑わしそうに眺めるクロカに、ノブは当然のように答える。

「ミノー国・闘臨寺(とうりんじ)からの援軍だろう。地獄の荒行を潜り抜けた最強の超人拳士達だと聞く」



 いかにも荒くれ者の一団も来ていた。

 大柄な戦士達なのだが、よく見ればトロールやホブゴブリン、ミノタウロス等の魔物達である。

「ゴーズ様の仇打ちだあ! 歯向かう奴はブッ殺せ!」

()れ! ()れ! ()れ! ()っちまえ! 破壊(Destroy)ーーーーー!!」

 耳障りな声で怒鳴る魔物達。

 城の兵士達は顔を見合わせて戸惑いはするのだが、あまりに当然のように入って来たのでどうした物か困っている。


「元陸戦大隊の一部か」

 遠巻きに眺めるオウキ。

「魔王軍の本丸を攻撃する事、理解してるのかしら‥‥」

 遠巻きに困るレイシェル。

「つーかアイツら檄文の字を読めたのか」

 遠巻きに呆れるジルコニア。



 さらに片隅には剣と盾を手にした白骨がぞろぞろと突っ立っている。

「なんだこの骸骨は!」

 仰天するヴァルキュリナ。

「まさか?」

 驚き振り向くレイシェル。

 視線を向けられたアリスがしどろもどろで言った。

「あ、いや、少しでも役立つならと‥‥」


 城の外から一人の兵士が駆け込んでくる。

「おい! 近くの墓地で無縁仏の墓が片っ端から暴かれたぞ!」


 ヴァルキュリナがアリスに詰め寄った。

「バレる前に戻せ! 埋め直せ!」

 リュウラは冷たい目で槍を構える。

「このバカも埋めようよ」

 アリスは涙ぐんで頭を抱えた。

「ひっ!」

 彼女を慌ててアルが庇う。

「お、落ち着けよ。多分悪気はないと思うからさ」

 ジルコニアがクソデカい溜息をついた。

「有ったら問題だっての‥‥」



「これだけ色々な奴らがやる気になってるのか。こりゃ張り切るしかねぇからよ」

 集まった戦力を見渡し、感慨深く呟くジン。

 かつての追われる日々に思いを馳せる。

 だがそんなジンの肩で、リリマナは不安そうに空を見上げた。

「これだけいっぱい来たら、魔王軍も気づくんじゃないかなァ?」


 丁度全くそのタイミングで、息を切らせて駆け込んでくる兵士がいた。

「敵軍、接近しています!」

設定解説


大往生十六漢だいおうじょうじゅうろっかん


ミノー国闘臨寺の修行僧の頂点に位置する最強のモンク達。

近隣諸国より拳を極めんとする物達が一歩間違えれば絶命必至の荒行に邁進し、六年六カ月に及ぶ修行の果てに「赤熱した鉄箱を粉砕して中の卒業印を掴み取る」最終試練・熱火窟の業を修めた者のみで構成される。

その起源は神話の時代にまで遡る事ができ、あまりに壮絶な強さゆえに時の権力者から疎まれて追放の憂き目にあった記録もある(本人達は秘境に籠ってあまり出てこないのでほぼ被害無し)。

胴着も仮面も全員お揃いなので誰が誰か一見で見分けはつかないが、これも敵を攪乱する術の一つとは本人達の弁。

また装着の義務があるわけでもないので、いざ戦闘となれば仮面も胴着も外して好き勝手な武装で戦う。

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