表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
323/353

100 再起 9

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

エンク:枝分かれした麒角を持つ精悍な青年。光速戦闘を可能とする能力者。

ラン:長い赤毛の後ろ髪に孔雀のような尾羽の混ざった、強気な目つきの女性。無限再生と敵を即死させる能力を持つ。

サイシュウ:メガネをかけた陰険そうな猫背の禿。ただし頭皮は黄色い。望んだ物を消去する能力者。

老人:ナイナが転がり込んだ、ボロ長屋の一室の持ち主。実は滅んだ大国の前王だった。

 ジンとナイナが二人でいる間。

 部屋の中では、リリマナが老人に話しかけていた。


「お爺ちゃん、お孫さんは魔王軍に操られてるんだよ。あの人が悪いんじゃないからね?」

「知っておるのかな?」

 老人が片方の眉をピクリと上げた。

 リリマナは頷く。

「ウン! レイシェルのお兄ちゃんも同じなんだ。操られてホントの魔王の部下にされちゃって‥‥」


 老人の顔に陰がさした。

「操られて、か。それより手足そのものと言うべきなのだがな」

 いつにない老人の雰囲気に戸惑いながらもエリザが訊く。

「それは、どういう事なんですか?」

 老人の声が、どこか重くなる。

「魔王軍の首領、暗黒大僧正。その正体は誰も知らん。だからこそ知らねばならん、勝つために。儂らはかつてそう考えた」


「自分から過去を話すぶんにはいいんだよな?」

 ジルコニアが訊くと、サイシュウは酒を呷りつつも頷く。

「自分からならな」



「調査隊を組ませた。隊は影から裏から、敵の首領の情報を集た。そのため、魔王軍の領域にさえ踏み込んだ」

 老人の話は、同居人達でさえ初めて聞く内容だ。

「三大国の一つが誇る精鋭達じゃ。徐々に情報は集まった。世界樹を掌握した事、神々の国に出向いた事、秘境に居城を構えている事、名高き賢者と同一人物の可能性がある事」

 ここまではノブやレイシェルも旅の間に得た情報である。


 そしてこれも、だ——

「首領である筈の、暗黒大僧正もまた操り人形だという事」


「「「ええっ!?」」」

 元カマセイル隊が驚愕の声をあげる。

 だがレイシェル達は黙って次の言葉を待った。


 老人は続ける。

「何かが背後にいるのじゃ。だが、操るというのは――そうとも言えるが、そうで無いとも言える。それは他者を蝕み、乗っ取り、己の()()にする。自我が残りはするが、己を()()と同一視して‥‥己の意思と思考で、背後に有る()()のために行動するようになる」


 操られて影武者になっている。

 そう指摘した時、女魔法戦士は笑いとばしていた。

 彼女にとってはちゃんちゃらおかしな話だったのだろう。

 彼女は、あくまで、()()のために行動していたのだから。

 自分にして、自分を取り込んだ()()のために。


 ではその()()とは――

「アザナワン‥‥どこの何語か知らんが、()()の名前らしい」


 老人は懐中から小さな水晶玉を取り出した。

 魔法の道具、一種の記録装置である。

「幾つもの世界を渡り歩いてきたそうな」

 老人が言うと、玉から宙へ、映像が投影された。


 風景の画像がいくつか。

 滅んだ文明跡だった。

 建物、乗り物、街道。その形や様式、石材や金属。それらが違うので、別の場所の異なる文明である事はわかる。

 見た事もない奇怪な建築物ばかりだが、全てが朽ち果て、無人となっていた。

 見渡す限り一面、苔むし、地衣類とも菌類ともわからぬ絨毯に覆い尽くされている。

 そして、遥か遠くに、巨大な柱が立っていた。地上から天空を貫きその頂は見えない、途方もなく巨大な柱が‥‥。


「どれもこれも、バカデカい柱しかねえぞ?」

「何かも絶滅してるわね。苔ぐらいしか残ってないわ」

 サイシュウとランが揃って首を捻る。


 ノブが老人に訊いた。

「この映像‥‥拡大はできないか?」

「無理じゃ。送られてきた映像を残してあるだけじゃからな」

 首を振る老人。

 エンクが逆にノブへ訊ねる。

「何か気づいたか?」

 ノブは映像を睨んだ。

「先ず地を覆う苔だが、旅の途中で何度も戦った怪獣達にもそっくりな物が生えていた」

「あ! 魔王軍のモンスターにも、生えてる奴いるよね」

 思い当たって声を上げるリリマナ。


「そして柱。遠くてはっきりしないが、所々に、紅い結晶が密集しているようにも見える」

 ノブのその指摘に、今度はジルコニアが叫んだ。

「エイリアンズの機体にくっついてるアレか!?」



 呆然としてレイシェルが呟く。

「あちこちの星をこんな有様にして‥‥宇宙からやってきたのが、黒幕のアザナワンという宇宙人ですの‥‥?」

「「「宇宙人!?」」」

 元カマセイル隊の三人が、揃って目を丸くした。



 半人半虫の異星人シュリテイスから聞いた、暗黒大僧正は宇宙から来たという情報。

 レイシェルはそれを、スイデンに戻った折に仲間達へ(つげ)はしたのだが——ナイナが失踪したので棚上げ状態になっていたのである。



「調査隊は黒幕‥‥アザナワンの目的を掴めたんですの?」

 改めてレイシェルは訊いたが‥‥老人は首を横に振る。

「この映像が最後じゃった。戻ってきたのは一人だけ。国のため一族のために自ら立候補した隊長、皇女の一人にして魔法戦士の‥‥我が孫娘、ディーアだけじゃった」


 老人の目が遠くを見た。

「魔王軍を手引きし、最古の国ナーラーを一夜にして滅ぼした。逃亡する王家一族の前に立ち塞がって、その手で、親を、兄弟姉妹を(たお)した。もはや‥‥あの子ではなかった」

 声からは、力が失われる一方だった。

「生き延びたのは儂だけじゃ」


 老人が溜息をつく。深く、深く。

 部屋を沈黙が覆った。


 レイシェルは、老人の前に立った。

 労わるように、だがはっきりと言う。

「前王様。私達に力を貸してくださいまし」


 顔をしかめるジルコニア。

「うわ‥‥お嬢、またか‥‥」

 ランはレイシェルへ食ってかかる。

「ちょっと! 年寄りに何をさせるの!」


「元三大国の天王ならツテなり何なりあるでしょう。できる事が無い筈がありません。このままここにいてはいけませんわ」

 レイシェルのその言葉に、サイシュウが酒瓶を手に声を荒げる。

「いいじゃねぇか! 好きにさせろよ!」

「よくありませんわ! 孫娘さんを解放しなければならないでしょう! お爺さん!」

 毅然と言い放つレイシェルのその言葉は、サイシュウではなく、老人に向けられていた。


 老人は、射抜くような視線をレイシェルへ向けた。

「お嬢さんはお兄さんを、か?」


 レイシェルは黙って頷いた。

 はっきりと、力強く。



 老人が一転して笑った。

 おかしそうに、けれど穏やかに。

「他人事だと思いおって、と‥‥同じ目にあった者相手でなければ言えたのにのう」


 老人は諦めた。

 諦めの中へ無気力に引き篭もる事を。

 諦めて、おそらく最後のこの鼓舞に、抜け殻になった身を委ねる事にしたのだ‥‥。

超久しぶりにFAイナルファイトを起動したが最終面に入る事さえできずにゲームオーバー。

腹が立ったのでコンティニュー連打で無理矢理クリアする。

市長のバックドロップを繰り出すため、このゲームは墓場まで持って行こうと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ