96 再起 5
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。
ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。
リリマナ:ジンに同乗する妖精。
ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
「【光熱の領域、最終第七の段位。真なる極小の核は分かれ融合する。速き風は光と共に全てを滅する】――ニュークリアーブラスト!」
レイシェルの凛とした詠唱が響き、敵群を結界が包んだ。
熱核撃の魔術が、光と風と熱が膨れ上がる。それは敵兵士達の悲鳴さえ呑み込み、範囲内にある物全てを焼却してしまう。
光が収まり、結界が消える。
焦げた地面が煙あげる中、向かってくる敵などどこにも存在しなかった。
「街中でえらく派手な技を使うのね、貴女は」
そう言って嗤う女以外は。
フードローブは焼き払われて失せていた。
だがそれを纏っていた女は――火傷一つない。
長い髪にも、白い肌にも。
切れ長でやや吊り気味の大きな目にも。紅の唇にも。
その身に纏う、谷間を見せる豊かな胸と、妖艶な腰と、膝から先と肘から先とだけを覆う、紫水晶のごとき鎧にも。
片手に握られた長剣にも。
損傷などどこにも無かった。
「さて‥‥最古の王国の王女だった女の力をお見せする時ね」
そう言って女は空いている掌をかざす。
「我が名はディーア。貴女と同じ魔法戦士でもあるわ」
そう自己紹介する女魔法戦士の掌に、赤黒い球体が生じた。
「ハンガーロゥカスト」
ディーアがそう囁くや、球から蠢く雲が噴き出した。
耳障りな羽音が唸る。その雲は蟲の群れであった。一匹ずつは指よりやや大きい程度の蟲――黒っぽい蝗である。
だがその蟲には目が無かった。頭全部が鋭い歯の大顎であった。
魔界の深部に生息する魔物。一帯を埋め尽くし、全てを齧り砕き食い尽くす地獄の蟲の群れである‥‥!
「クッ‥‥!」
急ぎ再度、熱核撃の呪文を放つレイシェル。蟲の群れに呑まれる寸前、なんとかそれは間に合った。
超高熱の凝縮された魔力球が蟲の群れを正面から焼き払う――
――筈だった。
だが蟲の群れは球に躊躇いなく飛び込む。そして次々と焼かれて蒸発はするのだが‥‥球の魔力は目に見えて消耗してゆく。
踏み込めば地獄の魔獣さえ骨片も残さず食い尽くされる魔虫は、岩をも溶かす熱にさえ即死せず、蒸発させるために魔力を費やさせる。
その群れは恐るべき核撃の力を、その生命力と無尽蔵の数で消失させようとしていた!
渾身の力を籠め、レイシェルは魔力球に全力を注ぐ。
押し切られれば命は無い。
蟲群を焼却しながら球が前進する。引き換えにその力を削られながら。
その径を縮小しながらも球は群れを呑み込み、進み続け――
――蟲を吐き出す敵の魔力球に、ぶつかった。
結界が広がり、爆発!
敵の魔力球は光と熱に消し飛ばされ、蟲の群れももはや現世にはわいてこない。
なんとか、レイシェルは競り勝ったのだ。
汗を流し、大きく息を吐き、体がよろめく。
「流石ね。熱く疼いちゃうわ」
嗤いながらそう言うディーアは、レイシェルのすぐ横、すぐ側にいた。
手にした剣を既に振りかぶって。
魔法は囮であり、敵の体勢を崩す牽制。
それをレイシェルが理解した時、もはや敵の剣を避ける事は不可能だった。
「レイシェル!」
エリザが悲鳴をあげる。
金属のぶつかる甲高い音が響く。
二ふりの剣がぶつかっていた。
レイシェルを襲うディーアの剣と、それを食い止めるレイシェルの剣が。
なぜ防御が間に合ったのか?
ナイナの投げたナイフが、ディーアの脇腹に刺さっていたからだ。
それが剣速を削いだのである。
だが刃が刺さったまま、ディーアは嗤う。
「ナイスアシストね」
ナイフが、内から押されでもしたかのように抜けて落ちた。
急激に敵の力が強まるのを、剣ごしにレイシェルは感じる。
(人間では、ない‥‥?)
戦慄。
しかしレイシェルは剣に力を籠めた。
(魔物であろうと、負けるわけにはいきませんわ!)
その意思を受け、剣は敵の刃を押し返した。
だがディーアはさらに力を籠めて剣を押し込んでくる。
すぐに刃の押し合いには決着がついた。
甲高い音が響き、剣が折れたのだ‥‥!
折れたのはディーアの剣だった。
折ったレイシェルの剣は、そのままディーアの体を深々と斬り裂いた。
人間であれば絶命は必至である。
だがディーアは、後に飛び退いた。
顔には初めて驚きを浮かべていたが。
「こちらの剣もミスリルの業物だったのだけどね‥‥その剣は一体?」
レイシェルは答える。
「エクスカリバー」
と。
――それはスイデン国を発つ直前の事――
「これを貴女に渡そう。使ってくれ」
出航前、ヴァルキュリナは彼女の剣をレイシェルへ渡しに来た。
「エクスカリバー!? 伝説の聖剣‥‥こんな物を?」
驚くレイシェルの手に、ヴァルキュリナは剣を持たせる。
「ナイナイも私の命と使命の恩人だ。力にはなりたい。けれど国の守りでここから動けないから、せめてできるだけの事はしたい」
レイシェルは思い出していた。
敵艦Cムツベロスで、敵の鬼人サムライに大苦戦し、ジンに助けられた事を。
昔に比べて遥かに腕を上げたとはいえ、慢心など到底許されはしない。
「そう、ですわね。お借りしますわ」
剣を受け取り、レイシェルは頭を下げた。
――義姉になる筈だった女性に感謝しながら、レイシェルは聖剣を構え直す――
夥しい流血を気にする素振りもなく、ディーアは折れた剣を捨てた。
「やるじゃない。じゃあ仕切り直しさせてもらうわ」
彼女の傷から血が止まる。
そして、地面が震えた。
すぐ側の家屋を超えて、人造巨人が顔を覗かせる!
それを見てエリザが悲鳴のような声をあげた。
「あ、あれは、暗黒大僧正の!」
アミルアリアン。
暗黒大僧正の影武者どもが乗る謎の機体だったのだ。
「まさか貴女も、操られているの!?」
驚くレイシェル。
ディーアは嗤った。
「操られている? ウフフ‥‥アハハ!」
そんな彼女を、アミルアリアンが手を伸ばして掴む。
無造作に、物を拾うように。
そして鳩尾に生じた開口部に、突っ込むように入れた。
「とにかく逃げましょう!」
エリザ、ナイナ、一緒にいた老人。皆にレイシェルは叫ぶ。
しかし敵の巨人は無慈悲にその掌を叩きつけようとした。
『そうはさせない!』
そう言ってアミルアリアンを蹴り飛ばすのは、ノブのEムーンシャドゥ!
『女の間に割って入るヤロウが参上だぞ』
ノブの肩でジルコニアが笑った。
『それも二人だからよ』
そう言いながらジンのSサンダーカブトも姿を現す。
『やっちゃえ!』
ジンの肩で、リリマナが拳を振り上げた。
合間合間に30の3週目。
流石に2回もクリアしているとエンディング到達は目標にならない。
全キャラ撃墜数300以上にするため戦線をひたすら周回する。
未視聴作品の脇役の撃墜数稼ぎをやっていると何か疑問がわかないでもないが、こいつらにだって実績を得るチャンスがあっていいだろう‥‥。




