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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
318/353

95 再起 4

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。

ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。

リリマナ:ジンに同乗する妖精。

レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

老人:ナイナが転がり込んだ、ボロ長屋の一室の持ち主。

 ノブを前に、後からジンがついて行く。

 二人はノウェアの街の通りを歩いていた。

 無論、ノブが【追跡(パースート)】の呪文を使った上で。

 二人はどんどんと、薄暗く入り組んだ裏道へと入っていく。

 周囲の店舗も大通りに比べて小さくなり、軒や看板も古ぼけて汚れが目立っていた。


(まぁ流れ者が宿を探すならこんな場所にもなるか‥‥)

 多少の不安を覚えながらも納得はするジン。

 が‥‥ノブが立ち止まった。


 二人の前に、フードローブを纏って顔を隠した者が立ち塞がったのだ。


「おいおい、まさか‥‥」

 ノブの肩で警戒するジルコニア。

 相手はビール瓶を取り出すと、それを一口呷ってゲップを吐いた。

「この街に来るとはな。見つけた以上、このエイリアンズ最強の親衛隊マスターロックがその首をもらうぜ」

 そしてフードローブを外す!


 全身が石片に覆われた奇怪な姿。

 カエルのような、両生類じみた容貌。

 左手にビール瓶、右手に大剣を握った、凡そこの世の生物とは思えない怪物である。


 その周囲にばらばらとわいて出る覆面の男達。

 その覆面を外すと、お馴染みゴブリンやオークの顔である。


「ちょっとォ! 魔王軍、街に入り込んでるじゃン!」

 リリマナが悲鳴のような声をあげる。

 周囲の通行人達が、本当に悲鳴をあげながら我先にと逃げ出した。



――その頃、レイシェルはエリザと共に別の場所を歩いていた――



 二人はどんどんと、薄暗く入り組んだ裏道へと入っていく。

 周囲の店舗も大通りに比べて小さくなり、軒や看板も古ぼけて汚れが目立っていた。

 実はジンやノブが入った区画の別の道なのである。


「こんな所に住んでいるんですのね‥‥」

 周囲を見渡し、小さな声で呟くレイシェル。

「空き瓶拾いで生計を立ててるわ。もう戦うのが嫌みたいなの」

 エリザがそう言うのを聞き、内心で思った。

(それを危険な(いくさ)に引っ張りだそうとしているわけですわね‥‥ジンには申し訳ないけど、そっとしておくべきかもしれませんわ)


 レイシェルが考えていると、エリザが声をあげる。

「あ! お爺ちゃん!」

 買い物途中だった老人が振り向き、にこやかに笑顔を見せた。

「おう、エリザさんか。またあいつらに声をかけるのかい。熱心じゃの。おや、今日は別の人も‥‥」

 レイシェルは一礼する。

「初めまして。クイン公爵家のレイシェルと申す者ですわ‥‥わわ!?」

 顔をあげたレイシェルは目を丸くした。

「わわ!?」

 老人のすぐ側からそっと離れようとしていた、小柄な人影。

 ナイナもレイシェルを見て、思わず声をあげてしまった。



 硬直しあう二人。

 はっと我に返り、レイシェルが掴みかからんばかりに詰め寄る。

「ナイナ! こんな所に! ジンが探してるんですのよ!?」

「え、いや、ちょっと、いきなり過ぎない!?」

 ナイナはまだ動顛していた。

 エリザはしょっちゅう見かけるので、落ち着いて隠れる用意はできた――顔を知られているとはいえ、すぐに見つけられるほど親しい相手ではない。

 だがレイシェルを連れて来るのは予想の外だったのである。



 そんなエリザだが、ようやく、ケイト帝国で見た事のある鬼甲戦隊(きこうせんたい)のメンバーがそこにいる事に気づいた。

 別に忘れていたわけではないが、後ろに潜んでいるのを見つけられるほどよく知っていたわけでもないだけだ。

 そして見つければ当然、驚きもひとしお。

「え? ナイナって‥‥え? お爺ちゃんと一緒にいたの?」

「まぁな」

 老人はそう呟いた。


 実は彼とて状況を完全に把握しているわけではない。

 ナイナの過去などあえて聞いていなかったのだから。


 しかし老人は一歩前に進み出る。

 その小さな背にナイナを庇うように。


「お爺さん?」

 戸惑うレイシェル。

 そんな彼女に老人は言う。

「まぁ落ち着きなさい。見ての通り、ナイナは動揺しておるようだ。大事な話なら日を改めると良い」


 レイシェルは、老人の後ろのナイナを見た。

 目を逸らし、俯くナイナを。

 ジンにベタつきながらからかっていた、小悪魔ぶりとは程遠い態度を。

 それが返って、レイシェルにこう言わせた。

「‥‥そうかもしれませんわね。けれど、それでは収まらない人がいますわ」



 だがしかし。

 そこに横から声がかかった。

「いや、後にして頂戴、レイシェルさん。貴女達よりは大事な用があるのよね」


 振り向く一同。

 声をかけたのは――フードローブで身を隠した、声と体格からして女。


「‥‥どこかでお会いしましたかしら?」

 相手の井手達を見て、十中八九、敵だろうと思いつつも、レイシェルはあえて訊いた。

 果たして、相手の返答は。


「そうとも言えるし、そうでもないとも言えるわね。まぁディーンから聞いていた事にしておこうかしら?」


「‥‥!」

 相手の意味深な言葉に出て来た、兄の名前。

 レイシェルは思わず息を呑む。


 一方、老人は、その相手を睨みつけていた。

 先ほどまでの温和な顔ではない。

 険しく、激しい感情が皮の下で荒れ狂う形相である。

「来おったか‥‥」

 低く籠った声で、そう呻いた。


 相手は――(わら)った。

 嘲りを籠めてせせら笑った。

「旧ナーラー国の元天王ともあろう方が、何を。孫が祖父を探して会いに来るのは、そんなにおかしいかしら?」

 相手が言うや、路地からばらばらとわいて出る覆面の男達。

 その覆面を外すと、やはりゴブリンやオークだった。

 悲鳴をあげて、周囲の住人が逃げてゆく。


「ま、魔王軍!?」

 慄きながらも抜刀するエリザ。

「込み入った事情がある事はわかりましたわ‥‥」

 レイシェルが言うと、相手は「ウフフ‥‥」と笑いながら片手をあげた。

 攻撃の合図だ‥‥!

設定解説


・マスターロック


別の剣と魔法の世界から召喚されたパラディン。

その世界ではデーモンに分類されてはいるものの、一応PC可能種族なので召喚魔法にひっかかった。

全身を覆うごつごつした皮膚は岩そのものであり、岩石の側でじっとしていると体色が同化して見えなくなる。

ビールが大好物な種族であり、故郷の世界では酒樽のある所以外で見かける事は稀。

酔っている時は温厚だが、酒がきれると酒樽を探して徘徊し、邪魔する物に容赦しないデーモン元来の性質を発揮する。

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