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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
31/353

31 増員 8

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

次の街で奇妙な少女と出会うジン達。それは新たな補充人員だった。

彼女を仲間に加え、一行は差し向けられた親衛隊をまたもや撃破した――。

 本当に感謝などするわけがない――と思い込んでいた彼女には、「お……おう」と漏らすのが精一杯だった。

 硬直した笑顔で、慌てて話題の流れを変えるクロカ。

「そ、それで、話を戻すけど……他に欲しいアイテムは? 今あるCOCPなら、時間をかければ結構なシロモノが造れるし」


 ふむ、と考えるジン。

「一応訊くが、ENや残弾が自動的に最大まで回復し続けるとか、地形適応が全部Sになって空を飛べるとか、そのクラスのアイテムはどうだ?」

 はあ~とクソデカ溜息をつくクロカ。

「そのアホな質問に答えてやるけど、無理に決まってんだろ。まー……私なら作成する能力自体はあるから、膨大なCOCPがあればできるけど」

 ジンは「ほう」と感心したようだ。

「そりゃスゲェな。マジ話、俺が欲しいのはデバフを無効化するような奴だ」

「ブツ次第だね。あらゆるデバフを100%無効化、と言い出したら厳しいわ」


(対象を絞るという事は、強敵は他のデバフ使うということ。100%でないという事は、肝心な時に外すということ。そういう事に思えるな……)

 ジンが昔から遊んでいたゲームシリーズで得た経験である。

「もう少し保留しておくか……」


 だが少し考えた所で、ジンには思いついた事があった。

「ところでCOCPで操縦者がスキルを習得する事は可能か?」

「できるよ。何を覚えたい?」

 クロカはあっさりと肯定。

 アイテム作成とスキル習得に必要なリソースが統合されている。これもジンが昔から遊んでいたゲームシリーズにあった。これもダメモトで訊いた事だが、こっちは期待通りだったようだ。

「では射撃して即動けるやつを頼む」

「ヒット・アンド・アサルト、通称H&Aか。オッケー」

 クロカの言葉にジンは疑問を抱く。

「アウェイじゃないのか……?」

 だがクロカは薄笑いで肩を竦めた。

「このスキルを身に着けた奴は大概、射撃しながら敵へと切り込んでいくから」


 ジンがこのスキルを欲したのは、射撃しながら味方と歩調を合わせ、陣形を組み続けるためである。

 だがそうすると、近接戦闘機のBクローリザードとともに前線へ突撃する事も多くなり……なるほど、クロカの言う通りの使い方になりがちだろう。


 クロカは薄いバインダーのような板を取り出した。

 異界流(ケイオス)の壺に指を入れ、何やら呪文を唱える。指先に七色の光が収束し――それをバインダーに押し付けた。

 バインダーの中央が青く光る。

「ほい、造ったよ。スキル本。読めば魔法が習得できる昔の【魔導書】の技術を流用してるから『本』と呼ばれてるけど、別に読む物じゃないから。この中のパワーをあんたの中に解放するだけだから」


 それを手渡されたジンは、青く輝く中央に触れてみる。

 光が粒子となり、ジンに纏わりつき、吸い込まれ――ジンは自分の中に宿る物を感じた。

(なるほど。流石は魔法の世界だな……)

 異界の技術に驚きを感じながら、ジンは光を失った板をクロカに返した。


 ジンは他の二人にも訊ねる。

「お前らも何か習得するか?」

 だがナイナイは眉を寄せて悩む。

「うーん……よくわかんない。ジンは理解が早くて凄いなぁ」

「ゲッゲー」

 ダインスケンはその隣で鳴くだけだ。

 だがそう言われても、ジンの「理解力」は「この世界の技術が、昔から遊んでいたゲームシリーズによく似てる所がたまたま多いから」故でしかない。


 腕組みして溜息をつくジン。

(ある意味、知識無双って奴か? まぁ無双と言えるほど楽勝してはいないがな……)



「確かに適応が早いな、ジン。召喚された者によっては何がどうなっているのか理解してもらうだけで数日かかる事もあるのだが」

 そう声をかけられ、ジンは振り返る。

 ブリッジからヴァルキュリナが降りてきていた。その言葉からして、いくらか話を聞いていたのだろう。

「やはりチキュウ人だからか」

「まぁそうとも言えるか……」

 先に来ていた地球人がどれ程いるのか、地球の事をどの程度この世界に教えているのか。

 ヴァルキュリナは「地球人は巨大ロボを理解できて当然」と認識しているようだ。現代日本から召喚された先人は確実にいるだろう。アニメやマンガの事を熱心に伝えでもしたのだろうか。


 そう考えたジンだが、ヴァルキュリナが次に言った言葉には衝撃を受けた。


「チキュウ界から召喚された聖勇士(パラディン)は、過去も含めれば数多くいる。その中には故郷で巨大ロボットに乗り、それで自国を毎週防衛したり、宇宙で戦争に参加していた者もな。似て非なる物が実在する世界の一つだから、チキュウ人がケイオス・ウォリアーに適正が高いのも納得できる話だ。ジンも故郷で乗っていたのか?」


 実際に巨大ロボに乗っていた「地球人」が、一人ならずこの世界に召喚されていた――!?


「なんだと……! 巨大ロボットに乗っていた奴らが……」

 いる筈は無いのだ。あくまで架空の物なのだから。

 だがヴァルキュリナは驚くジンに不思議そうな目を向けた。

「チキュウではあまり乗らない物なのか? 確かに、故郷で巨大ロボットに乗っていたチキュウ人は少数派だという。ロボットを全く知らない者も結構な割合でいたそうだし……そう考えるとロボットを知っているだけ、ジンは知識がある方なのか」


 ヴァルキュリナの言葉を聞くうちに、ジンには思いついた事がある。

 この世界・インタセクシルは、様々な世界から召喚魔法で人を呼び込んでいる。

 様々な世界から。異なる次元、異なる時空から。

 ならば……()()()()()()()()()が、複数あったら?

 地球から召喚された者からの情報が食い違う事もあるのでは?

 現に――コウキの町で襲ってきた魔王軍の拳法家は、核に包まれた世界から来たと言っていた。あれは一昔前に懸念されていた地球の可能性ではなかったか。


(並行世界!)

 ジンの頭にその単語がよぎる。

 ならば巨大ロボットが実在する世界から、このインタセクシルに召喚された者も過去にいたのだろう。


 そうなると仲間の故郷にも興味が湧いた。

「ナイナイの故郷はどんな所なんだ?」

 互いの故郷は食事の時の雑談でたまに出る程度――現状どうするかの方が圧倒的に重要だから――だったが、ジンは改めて聞いて見る。


 ちょっと嬉しそうに話し出すナイナイ。

「広くて大きい草原だよ。ロアスってみんな言ってる。そこではいろんな部族がいて、僕の部族はテイスで、馬に乗って牛と羊を飼って旅して暮らしてた」


 ナイナイの話だと草原がどこまでも広がっている世界に聞こえるが、少なくとも本人の認識ではその通りだ。

 草原の向こうは海か山脈で遮られ、向こうがどうなっているのか誰も知らない。そのどちらも他の部族からまた聞きで聞いただけで、ナイナイは自分の目で見た事が無い。

 ロアスで最も使われる乗り物は『馬』である。鞍とあぶみの職人はどの部族でも重宝される。

 武器は剣と弓。機械の武器は少数の弩ぐらい。鎧は布か革だ。

 最新テクノロジーは油を使うランプだ。テントに引火し難く、光源として持ち運びも容易なので『現代』の遊牧民達は大助かりしている。耐熱ガラスの加工技術を持つ部族から購入するしかない、非常に高度なアイテムであり、年寄には「こんな便利な物があったら人は堕落する」と嫌う物さえいた。

 ケガをしたら薬草を塗り、部族のシャーマンが精霊に祈る。


 そんなナイナイにとって、インタセクシルは驚異の塊だ。

「この世界ほど大きい町も、いろんな道具も、はっきり目に見える魔法も無かったよ。凄い文明だなぁ……僕らの世界に来たら全部支配できちゃいそう」

 天井の魔法照明を文字通り眩しそうに見上げるナイナイ。


(異世界の文明が遅れてるネタは山ほど見たが……世界が複数あればその間にも差があるか)

 納得しつつ、ジンはもう一人の仲間に訊ねた。

「ダインスケンは……」


「ゲッゲー」


「……そうか」

 いつかコイツの過去を知る日も来るだろう。

 今のところ、ジンはそう納得する事にした。

並行世界・異世界もSUパロボですっかりお馴染みになってしまった。複数の世界が重なるパターンももう10年以上になるのか。

まぁEXで既に異世界を舞台に異世界からの新規参戦まで混ぜて展開されていたからな。そう考えると30年の歴史の大半は異世界ドッキングしていたという事になる。

「バイストンウェルは四国のどこか。ラ・ギアスは中国地方の山奥。ペンタゴナは沖縄の島の名前」とかにしなかった時点で、既に路線は決まっていたと言えるだろう。


まぁ無理矢理同じ世界に詰めていたらじきに新規作品が出難くなる。

2010年以降、新参戦はとりあえずロシアのどこかに押し込められるという事になったら文字通り寒い話だ。いくら広いからってな。

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