66 再会 4
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。
エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。
アル:冒険者の少年戦士。
パーシー:スイデン国所属の少年騎士。
コーラル:スイデン国所属の青年騎士。
アリス:元魔王軍魔怪大隊長。
「あ‥‥本当にできてる。Sトライスタッグ‥‥」
初合体成功を目にしながら、持ち込んだ本人のリュウラは、喜びより驚きの方が遥かに大きかった。
ちょっと離れた所でアリスが眉を顰める。
「音速超えて飛行しながらの空中合体をナビゲートいっさいなしの目視だけでやらせるような頭の悪い機体、造った連中は豆腐のカドに頭ぶつけて死んだ方がいいですよ」
言い訳としては、それができる者達が召喚された事が昔あったのだ。
その時代、「俺達は故郷で合体変形機に乗っていた」という聖勇士達がいたのでその言い分を聞き、この世界の技術でできる限り再現した機体を造った所、その聖勇士達は獅子奮迅の活躍を見せた。
その記録がノーセ国に残っていたのである。
ただ――それが誰にでもできるのかどうか、確かに考えるべきではあったろう。
というわけで解決策として、アリスは合体ナビゲート用の使い魔を造って渡したのだった。
「ちょっと考えればわかるでしょうに。本当、バカってバカですね」
アリスがそう言った途端、ついにリュウラが槍を手にシートから立ち上がった。
呆れ顔から表情一転、アリスは「ヒッ!」と悲鳴をあげて顔を引きつらせて頭を抱える。
『おい、操艦と戦闘指揮をちゃんとしてくれよ! 合体はできたけど、こいつを実戦で使うのは初めてなんだぞ!』
アルが通信機ごしに怒鳴ったので、リュウラは舌打ちしながらしぶしぶシートに座ったが。
超音速で空中ドッキングをやってのけた三機。
コーラルの機体が白い上半身、パーシーの機体が青い足、アルの機体が背中の大きな赤いバックパックブースター。
大きな翅を広げて飛ぶ、額に鍬形の輝く武者。
その操縦席でコーラルが叫ぶ。
「いくぞ! 準備はいいか!?」
それに答えるアル。
「準備というけどさ。これ、操縦すんのは一人じゃんか」
機体と一体化して動かすというケイオス・ウォリアーの基本は、この機体でも同じだ。
合体させて人型の一機になった以上、上半身機の操縦者が戦闘のほぼ全てを担当する。
下半身とバックパックは動作に何も干渉できないのだ。
「す、スピリットコマンドを使いましょう」
「本当にそれしかやる事ないもんな‥‥」
パーシーの提案に溜息をつくアル。
一応、各人のスピリットコマンドは機体の性能に反映される。
その点では確かに合体する利点は大いにあった。
よってパーシーはモニターを操作し、自分のコマンドを表示させる。
「ええと‥‥この状況で有用な物は‥‥」
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パーシーのスピリットコマンド
【フォーチュン】次の獲得資金2倍。
【トラスト】味方1機のHPを3000回復。
【フレア】敵からの次の攻撃を100%回避。
【エイド】次の獲得経験値2倍。
【プロテクション】短時間、被ダメージを1/4にする。
【チアー】隣接する味方機の戦意+10。
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「お前、防御系とか他人支援ばっかじゃんか! これから戦うのは俺らだぞ?」
アルに言われて一瞬怯み、それでも言い返すパーシー。
「そんな事言われても‥‥僕が選んだわけじゃないし‥‥。僕は元々防御壁職を目指していましたし‥‥。それに君が防御系少ないから必要になるでしょう!?」
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アルのスピリットコマンド
【エナジー】 自機の戦意+10。
【ヒット】 短時間、命中率を100%にする。
【ガッツ】 自機のHPを最大値の30%回復。
【ダイレクト】 次の攻撃は敵の防御系スキル・特殊能力を無効化する。
【アサルト】 全ての武器を移動後使用可能として扱う。次の攻撃のみ有効。
【バーニング】 次の与ダメージを2倍にする。
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パーシーに言われて一瞬怯み、それでも言い返すアル。
「そんな事言われても、俺が選んだわけじゃないし! 俺は元々物理アタッカー職を目指していたし! それに誰かが攻撃する必要あるだろ!」
「落ち着け、お前達。今は敵に斬り込むぞ。幸い、私には命中回避系が豊富なようだ」
話を納めようとコーラルが口を挟んだ。
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コーラルのスピリットコマンド
【ヒット】 短時間、命中率を100%にする。
【フレア】 敵からの次の攻撃を100%回避する。
【アクセル】 次の移動は移動力+3。
【コンセントレーション】 短時間、命中率・回避率+30%。
【アジャストメント】 技量値で劣る敵のHPを10だけ残す。
【バーニング】 次の与ダメージを2倍にする。
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「じゃあ今必要なのはコーラルさんだけじゃん!」
文句を言うアル。宥められたというのに不満があるようだ。
「す、すぐにお前達二人も必要になる! 多分! だからとりあえず戦意は上げておけ!」
「チッ‥‥はいはい、【エナジー】やっときますよ! 三連発だチクショウ!」
コーラルの指示で、半ばヤケクソでアルは己のスピリットコマンドを連発した。
機体に満ちる力! 操縦者コーラルの気力がどんどん増してゆく!
アルが気張るとコーラルのやる気が満ちるというのも、この世界の合体式ロボにとっては何ら不思議は無い。
機体と一体化して操縦するケイオス・ウォリアーのパワーを上げれば操縦者に力が漲るのはむしろ当然と言えよう。
「よし‥‥行くぞ!」
ついに――本当にようやくと言うべきか――合体式ケイオス・ウォリアー、Sトライスタッグは翅を広げて戦場へと飛んだ!
その手に持つのは、各機の大顎だった刃が合体し、緩やかにカーブした曲刀。つまりカタナである。
飛翔しながらスタッグが剣を振る。
一閃!
刃から斬撃が迸り、進行方向にいる離れた敵機、ソードアーミーを両断した。
そのままスタッグは一気に前線へ躍り出る。先行していた他の機体に一気に追いつき、さらに前へ。
『うわあ? すっごいスピードね』
『フォーム1は高機動型、スピードと運動性重視だから』
ブリッジで感心するグリダにリュウラが説明した。
事実、そう話している間にもスタッグは次々と敵を斬り伏せていく。
『ほう‥‥勿体ぶっただけあって中々の物だ』
己も敵機を叩きのめしながらも、ノブは高い評価をくだした。
しかし敵もただ圧されるばかりではない。
穴の底からさらにケイオス・ウォリアーの増援が現れる。
それらは迂回コースをとって、クイン星輝隊の横腹を突こうとした。
『別方向から来ますわよ!』
叫ぶレイシェル。それにコーラルが応えた。
「ならば増援の方を頼む。ここは我々が抑えよう。パーシー、任せるぞ!」
「は、はい!」
緊張した声で、それでも了解するパーシー。
スタッグは一瞬にして分離し、再び三機のクワガタ虫型戦闘機になる。
そして‥‥
「チェンジ、フォーム2! スイッチオン!」
パーシーが叫んだ。
その側に、ゆらり、と陽炎が生じる。
そこからひょいと顔を出すのは、ナビゲート用使い魔のポルタ。
先刻同様、モニターに各機の位置と座標を映し出す。
三機のクワガタ虫が合体した。
武者のようなその姿はほぼ同じながら、今度は上半身が青、脚部が赤、背負うバックパックが白だ。
翅を広げ、空中で槍と盾を構える。
『これは頼れそうです。ここは任せました!』
そう言うとザウルライガーは迫る敵増援へと向かう。
周囲に残る敵機は、これよりSトライスタッグのフォーム2が食い止めるのだ。
敵の群れから矢と砲弾が雨のように降り注ぐ。
『まぁあのぐらいの数なら‥‥』
リュウラがそう言うと、まるでそれが聞こえたかのように、敵群の後方にいるFSデスイーグル‥‥ゴーズの機体が飛んできた。
『グゥヘヘヘヘ‥‥!』
狂気の笑みを浮かべ、ゴーズは機体の両腕から黄金の閃光を放つ!
爆発! 大地が抉れた。
しかもその爆発の中に敵の群れは容赦なく砲撃を叩き込む。
「わ、わぁあ!?」
予想以上の弾幕に呑み込まれ、パーシーの悲鳴が通信機から響いた。
『え!? ちょっと!? アルくん!?』
グリダが悲鳴をあげた‥‥。
設定解説
・Sトライスタッグ(フォーム1)
クワガタムシのケイオス・ウォリアー。地上・空中戦を得意とする白い高速の武者。
三形態中、運動性と移動力に特に優れる。
武器は「ホワイトキャリバー」という刀、それに高エネルギーを籠めて威力を上げた「ビートスラッシュ」、右腕に内蔵された「ビームキャノン」。
(10段階改造済み。戦艦の改造度が反映されたらしい)
HP:8000 EN:300 装甲:2300 運動性:160 照準:205
格 ホワイトキャリバー 射程P1ー3 攻撃力4500 消費10
射 ビームキャノン 射程1ー6 攻撃力4700 消費15
格 ビートスラッシュ 射程P1ー4 攻撃力5700 消費25 戦意110
・Sトライスタッグ(フォーム2)
クワガタムシのケイオス・ウォリアー。地上・空中戦を得意とする青い鉄壁の武者。
三形態中、装甲と射程に特に優れる。
先端が曲刀の槍(ヴージやサイズといった形状)「ブルースピア」、両眼から放つ光線「アイビーム」、盾から放つ破壊光線「シールドブラスター」を駆使して戦う。
(10段階改造済み。改造度が反映されたのは一時期召喚武器になっていた関係らしい)
HP:8000 EN:300 装甲:2500 運動性:150 照準:205
射 アイビーム 射程1ー8 攻撃力3900 消費10
格 ブルースピア 射程P1ー3 攻撃力4000
射 シールドブラスター 射程1ー7 攻撃力5100 消費25




