65 再会 3
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。
エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。
アル:冒険者の少年戦士。
パーシー:スイデン国所属の少年騎士。
コーラル:スイデン国所属の青年騎士。
アリス:元魔王軍魔怪大隊長。
ヘイゴー連合国最強の部隊が魔王軍と戦うのを尻目に、レイシェル達は世界樹へ向かった。
グリダに指示されるままクラゲ艦は宙を進む。
やがて、世界樹の場所が見えてきた。
そこだと、一見では皆が信じられなかったが。
「なるほどというか‥‥こういう事か」
「世界樹が、無い!?」
呻くノブ、唖然として叫ぶグリダ。
伝説では途方もない巨木が生えている筈なのだが‥‥ばかでかく、地の底まで抜けたかと思える深い穴がぽっかりと口を開けていたのだ。
少し考え込むリュウラ。
「どこかに持って行ったのよね、これ。どうやってかはわからないけど」
「ならば今から調べるだけだ」
ノブは魔法を使おうとした。これまでも何度か使用してきた追跡の呪文【パースート】を。
しかしその動きが途中で止まる。
霊能者の超感覚が、迫る物を鋭敏に捉えたのだ。
エリカがすぐに叫ぶ。
「敵の反応だぞ! あの穴からだ!」
直後、樹があった筈の穴から亡者のごとく這い出して来るケイオス・ウォリアーの群れ!
大半は青銅級機の量産型だが、何機かは白銀級機も混じっていた。
それらの半分は不死型、もう半分は妖虫型だ。骸骨・ゾンビ・アリ・ムカデなどと人型が混じった機体達が、地を這うようにクラゲ艦へ迫って来る。
エリカは急いでスピリットコマンド【スカウト】を連発し、敵のデータをモニターに映した。
「うへぇ‥‥もとがしぶといし改造段階も高いなぁ。敵全機、HPが10000超えてるよ」
とはいえこの程度の敵とは今までも戦ってきた。
だがエリカはシートから跳び上がらんばかりに仰天する。
「あーッ! あ、あの機体‥‥ゴーズのおっちゃんが乗ってる!」
見開かれた目は、最奥にいる白銀級機に向けられていた。
モニターに表示される名前はFSデスイーグル。
鳥人のスケルトンがくすんだ銀色の甲冑を纏ったような姿の機体である。だがその顔に両眼は無く、嘴以外の頭部全体に深紅の玉石が無数に埋め込まれていた。エイリアンズと名乗った集団の機体と同じように‥‥。
その機体の操縦者は、確かに【ジェネラル・ゴーズ】と表示されていた。
「また敵になりましたの!?」
戸惑うレイシェルがそう言うや、モニターにゴーズの顔が表示される。
血走った目を爛々と輝かせ、歯を剥きだして『グヘヘヘ‥‥』と笑う、狂気じみた顔が。
確かにゴーズその人の顔だが、青白い顔の血色は悪く、その頭には骨ばった蜘蛛か蟹のような節足動物を兜のように被っていた。
「頭の奴、何だ?」
アルが顔をしかめると、ノブが少し考えて思い出す。
「書物でしか知らないが‥‥おそらくゴンコングという魔物だな。寄生虫の一種で、宿主を操り人形にし、自分を守るために異常な生命力とパワーを与えるという」
「つまり、その虫に操られて敵になっているのですね」
パーシーがそう確認した直後。
『グヘヘヘ‥‥!』
狂気の笑い声をあげる操縦者に動かされ、デスイーグルは両腕から黄金の閃光を放った!
大地が吹き飛び、クラゲ艦が激しく揺さぶられる。
「いかん、襲ってくるぞ!」
ノブが叫んだ。
「あちゃあ、こりゃ倒すしかないのかな」
「そんな!?」
エリカが少し困りながらも言うと、レイシェルが抗議の声をあげた。
しかし――
「実際、倒すしかないのでは?」
冷静に判断するコーラル。
『やむをえません、倒しましょう』
賛同するライガー。
「ならば倒すか!」
決意するアル。
「うん。さっさと倒しちゃって」
むしろ推奨するリュウラ。
「ええ、倒してトドメを刺すのです」
扉の隙間から首を突っ込んで促す元魔怪大隊長アリス。
「満場一致というヤツだなー」
ジルコニアが肩を竦めた。
「ええ‥‥」
レイシェルだけがなんか言いたそうだったが、逆に言えば彼女以外は意見が揃っていた。
――全機出撃! Cオーウォーの前にケイオス・ウォリアーが、周囲にクワガタムシ型の戦闘機が、三機ずつ飛び出した――
敵を迎え撃つべく陣形を整えようとするクイン星輝隊。
ゴーズ機は他の機体を前に出して後ろに控える――と見えたが。
その両腕が輝くと、爆発的な閃光が炸裂し、レイシェル達の眼前の地面を吹き飛ばす!
『グヘヘヘ‥‥!』
ゴーズは目を血走らせたまま笑い続けていた。
『相変わらず凄いパワーですわね‥‥!』
冷や汗をかくレイシェル。
リュウラは顔をしかめた。
『本人自前の必殺技で、移動後使用可能の射程9ある格闘攻撃をしかけてくるみたい』
『そりゃまー届きさえすればどんな遠距離でも格闘の攻撃だろうけどなー』
ジルコニアはちょっとうんざりしていた。不公平感に。
しかし卑怯臭かろうと反則気味だろうと、手強い事に変わりはない。
それを察し、クワガタ虫型戦闘機でコーラルが叫ぶ。
『よし。やるぞ‥‥合体だ!』
『え?』
驚くエリカ。
『やりますの?』
驚くレイシェル。
『できるの?』
疑わしそうなリュウラ。
なにせ実戦で成功した試しが無いので、クルー達にはもう諦めている者も多かった。そういう者達の中では、もう艦の召喚攻撃で最後までいく事になっていたのである。
しかしアリスがブリッジに入り込み、小さな角の生えたドクロ頭のてるてる坊主・人工使い魔のポルタを取り出した。
「出番です」
それを聞くや、ポルタの姿が揺らめいて消える‥‥。
『チェンジフォーム1! スイッチオン!』
操縦席で叫ぶコーラル。
その声が消えぬ間に、空間が揺らめき、ポルタの姿が傍らに現れた!
ひょろ長い腕を伸ばしてポルタはモニターに触れる。
するとどうだ、モニターの隅に別ウィンドが生じ、三機の戦闘機がワイヤーフレームで映し出されたのだ!
しかも点線で罫線が引かれ、互いの座標と位置が数字で表示されている。
全く同じ映像が、パーシーとアルのモニターにも表示されていた。
しかも各機が押すべきボタンの番号も、だ!
『行けるぜ!』
アルが叫び、機体の変形と加速を同時に行う。
超音速で空中ドッキングをやってのける三機。
白い上半身、青い足、背中には大きな赤いバックパックブースター。
大きな翅を広げて飛ぶ、額に鍬形の輝く武者!
「あ‥‥本当にできてる。Sトライスタッグ‥‥」
初合体成功を目にしながら、持ち込んだ本人のリュウラは喜ぶどころか驚きで呆気にとられていた。
ちょっと離れた所でアリスが眉を顰める。
「音速超えて飛行しながらの空中合体をいっさいのナビゲートなしで目視だけでやらせるような頭の悪い機体、造った人は豆腐のカドに頭ぶつけて死んだ方がいいですよ」
設定解説
・FSデスイーグル
(4段階改造済)
HP:70000 EN:260 装甲:2360 運動性:130 照準値:210
格 ビセラボアー P1-7 攻撃力4400 バリア貫通
格 ストロンガーホーン P1-9 攻撃力5000
不死型のケイオス・ウォリアー。元は白銀級機だが、エイリアンズの物と同様の強化を施されている。
モデルとなったのは、冥界で半神の内臓を永遠についばみ続ける魔の鷲。
本来はあらゆる物を貫く嘴「ビセラボアー」で敵を攻撃する機体だったが、操縦者のゴーズがほぼ上位互換の技を使えるため、高空から力づくで全てを粉砕する戦闘スタイルになっている。




