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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
282/353

60 獣国 4

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。

リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。

エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。

アル:冒険者の少年戦士。

パーシー:スイデン国所属の少年騎士。

コーラル:スイデン国所属の青年騎士。

アリス:元魔王軍魔怪大隊長。

 ヤードック帝王に会った次の日、クラゲ艦Cオーウォーは早くも出発していた。

 広大な樹海へ向けて、山間を漂い続ける。



 そのブリッジでは、案内人のグリダが皆に自己紹介をしていた。

 彼女の種族を聞き、エリカが感心したように言う。

「グリダは鶴の獣人なのかー」

「ええ。父は別種族なんですが、母から受け継いだので。そういうエリカさんはオーガーハーフエルフなんですね。この世界にはいない筈の種族ですけど‥‥召喚された聖勇士(パラディン)なのですか?」

 興味深そうに訊くグリダ。


 エリカは決まり悪そうにほっぺたを掻く。

「あ、いや‥‥赤ん坊の頃に改造されてさ‥‥」

「あら、そうでしたの。カマセイル隊の方々と同じかと思いました」

 そう言ってグリダは肩越しに後ろを見た。

 同乗しているカマセイル隊三人を。


「そう、皆さんは聖勇士(パラディン)なのですね」

 レイシェルの言葉にランが頷く。

「そうよ。そして三人とも、この世界の獣人にはいない種族なの。私は不死鳥(フェニックス)の獣人よ」

 そういう彼女の顔は、どこか得意げであった。


「神獣かよ! 確かにそんな獣人種、聞いた事ないな。他の二人は‥‥」

 そう言って驚くジルコニアに、エンクは「フッ」と笑ってみせた。

「種族も、故郷となる世界も違うがな。俺は麒麟の獣人だ」

「オレは空亡の獣人だぜ」

 嬉しそうに自慢するサイシュウ。


 残念ながら最後の妖怪はこの世界・インタセクシルでは知名度が低いらしく、皆は戸惑って顔を見合わせていた。

 ただ一人知っていたノブだけは動じず、納得して言う。

「なるほど。貴方達の強力で特殊な能力も、そこに源があるわけか」



 だがしかし。

 それを聞いたサイシュウは「ククク‥‥」と含み笑いをする。

「ところがそれだけでもねぇのさ、これがな」



 エンクが説明する。

「実は俺も、他の二人も、世界を超えて生まれ変わった転生者でな。神から直に反則能力(チート)を与えられたのだ」

「え? この世界に、別世界から生まれ変わるなんて事は‥‥」

 基本的に無い筈だ。

 だがその例外がレイシェルである。もしや彼らも同じなのかと、驚きながらも疑った。

 しかし、エンクの話はまるで違った。


「勘違いするな。最初の故郷から転生して第二の故郷で生まれ変わり、その後、このインタセクシルに召喚されたのだ。この世界は俺達にとって第三の世界となる」


「えええ‥‥どんだけ渡り歩いてんだ」

 流石に驚くジルコニア。

「俺が望んでの事ではないがな。故郷の世界で事故死した俺は、第二の世界で反則能力(チート)を使って魔王を一方的に倒し、世界の王になったというのに‥‥さらなる別世界で必要とされるのも、俺が無敵過ぎるのが悪いのか」

 嘆くエンク。

 まぁ言葉の割にはどこか余裕が、あとちょっぴり自慢もあったが。



「他の二人は‥‥」

 パーシーが訊くと、ランが髪を掻き上げた。


「違う世界から召喚されたけど、経緯はだいたい私も同じね。故郷の世界で病死した私は、私以外全員イケメン男の村を作ってスローライフして、邪魔する奴らを転生で得た反則能力(チート)でコテンパンにして女神と崇められるようになったのに。こんな世界で必要とされるのも、私が無敵過ぎるから悪いのかしら」

 嘆くラン。

 まぁ言葉の割にはどこか余裕が、あとちょっぴり自慢もあったが。



「そしてオレはな‥‥」

 自ら語り出すサイシュウ。

 ちょっとうんざりしたジルコニアが口を挟む。

「あ、もういいや」

「聞けよ! 故郷の世界で学校のクラスごと事故に遭って! 第二の世界に皆で転生してな! クラスの奴らに虐‥‥妬まれて嫌がらせをされていた仕返しに、転生した元クラスメートを見つけては反則能力(チート)を使ってブチのめして復讐してやった! 直接手をくだしてた奴らは終わって、後は遠くで見てただけの連中に生き地獄を見せてやる番だったのに‥‥この世界に召喚されてよ! オレが無敵過ぎるから悪いのかァ!?」

 無理矢理嘆くサイシュウ。

 言葉に余裕なぞ全く無い。自慢もしようとはしているが、なんか必死でちょっと痛かった。

「うわぁ‥‥」

 ジルコニアは露骨に顔をしかめ、宙を後ろへ飛んで離れて行った。



 三人の転移転生者の話が終わるや、モニターの一つに格納庫が映る。

 そこにいるドリルライガー|(戦車形態)がランプを点滅させて言った。

『頼もしい味方である事はわかりました。善と正義を愛する心があるなら、故郷や種族は小さな事です』

「それがあるとは思い難いんだけど‥‥」

 リュウラがメイン座席でボソリと呟いた。


 サイシュウが額に青筋を立てる。

「はん! 言葉だけならいくらでも飾れるけどよォ。肝心なのは実力じゃねぇのかァ!? あんたらの誰よりも役に立って見せる自信はあるぜ」

「へいへい。頼りにしてるよ」

 ノブの後頭部にしがみつきつつ、頭越しに呆れた声を出すジルコニア。

 その側でファティマンのシランガナーが肩を竦めていた。


 カマセイル隊の話を聞き、コーラル・パーシーの二人は顔を見あわせる。

「「‥‥」」

 二人の間に、薄っすらと気まずい沈黙が流れた。

 だがそんな事に他の者は気づかず、話はカマセイル隊各人の第二の故郷がどんな世界だったかという話題に移る。

 二人は、目くばせするかのように視線を交えると、二人そろって黙ってブリッジを出た‥‥。

設定解説


・不死鳥、麒麟、空亡


いずれもインタセクシルには存在はする。

ただこれらの特徴・特性を持つ獣人は発見された事が無い。よってインタセクシルの住人は驚いているのだ。


なおジラフという動物はいるので、ワーキリンという種族は存在する。

もちろん変身すると首がにょきにょき伸びて高い木の枝の葉を食べられるようになるのだ。

だがこの種とダンジョンで遭遇して戦いになる事は滅多にないので、冒険者達の間ではマイナーなモンスターである。

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