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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
276/353

54 激動 6

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。

ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。

ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。

リリマナ:ジンに同乗する妖精。

ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。

クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。

ゴブオ:ジンについてきたゴブリン。

オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。

 寒々しい夜の廃墟を眺めるバルコニーで。

 ヨウファ姫はジンを見上げ、訴えるかのように訊ねた。

「わらわと結婚するのは、嫌か?」


 ジンは困って頭を掻いた。

「嫌とまでは言わんが、こうも突然言われて了解は出ねぇだろ」

「い、嫌ではないのじゃな?」

 必死に食い下がるヨウファ姫。

 ジンは溜息をつく。

「この状況で、なんで俺だ? 帝国再建に繋がる人選だとは思えねぇがよ」

「繋がるじゃろ! ケイト帝国を壊滅させた敵を退けた勇者じゃぞ!? 今後、魔王軍を相手にこれほど頼れそうな者はおらん。世界最大を誇っていたケイト帝国軍が、こんなにも容易く突破されて、首都を攻められて、この有り様なんじゃから! 法律を変えてでも皇帝になってもらって‥‥」

 そう訴えられても、いや、だからこそ、ジンには納得できない部分がある。


「無茶言う前に、戦いを見てたのか? 俺一人で勝ったわけじゃねぇんだが」


 それを、姫は‥‥

「お主が来れば、仲間の二人もきっとついて来るじゃろう」

 否定はしなかった。だが問題視はしていないのだ。

(まぁ、あいつらは俺が移籍するなら一緒に来てはくれるだろうがよ‥‥)

 そこにはジンも納得してしまう。

 しかし問題はそれだけでもない。

「機体はどうすんだ。あれ、スイデンの金で造った(もん)だぞ」


 今や、ジンはケイオス・ウォリアーの操縦にかなりの自信を持っている。この世界全体でも屈指のレベルにあると思っているぐらいには。

 だが、だからといって機体の性能を(ないがし)ろにできる気はしなかった。今Sサンダーカブトから降りて、魔王の影武者や本人と戦って勝つ自信は‥‥無い。


 だが姫もそこら辺の問題は考えていた。

神蒼玉(ゴッドサファイア)はお主らが手に入れた物じゃろう。権利は主張できよう。ついでに一緒に技術者を引き抜けば機体はまた造れる」

「機密部品と技師も持ってこいってか!? スイデン国の人間が聞いたら怒るんじゃねぇのかよ」

 ぶったまげるジン。

 そんな事をして見逃してもらえるとはちょっと思えない。


 実際、見逃してはもらえなかった。

 カーテンを乱暴にのけて、クロカが――その後ろには他の面々も――バルコニーに入ってきたではないか。

「怒るにきまってんだろ! ふざけんな! か弱い乙女心かと思えば、露骨に引き抜き工作じゃねぇか! 世の中汚え!」

「な、なんで聞いてるんじゃ!?」

 怒鳴るクロカ、驚くヨウファ姫。

 呆れて溜息混じりのジン。

「そりゃまぁ、俺に来いとは言ったが他の奴に来るなとは言わなかったからじゃねぇのか?」

「言っても来た気がするんじゃが!?」

 振り向いてそう抗議する姫に、ジンは頷く。

「まぁ俺もそう思うがよ‥‥」



 一転して気まずい雰囲気になったのだが‥‥全然気にせずリリマナが陽気に言う。

「それにさァ。スイデンに戻ったら、ヴァルキュリナとジンでお見合いするんでしょ? 聞いちゃったよ、わたし!」

「「「「えっ!?」」」」

 皆がそのことに驚愕する。ダインスケンとヴァルキュリナ以外。

 ヴァルキュリナは赤い顔で慌てふためいた。

「あ、いや、それは‥‥父が勝手に話を進めようとしていただけで、私は、別に、その‥‥」


「あの親父さんが? 俺をそんなに気にいったのか?」

 初めて聞く話に戸惑うジン。

 ヴァルキュリナは恥ずかしさからやや俯き気味に、しかしその事については説明してくれる。

「ジン達の活躍は認めているし、長年の研究成果を託した相手だし、あと‥‥父の故郷で人類の自由を守るために戦った戦士に、よく似ている所があると言っていた」

「へえ? ジンみたいな人がいたんだ?」

 ナイナがジンを横目で見る。ちょいとばかり、機嫌が悪そうな目で。


 一方、ジンは‥‥なんとなく、何かがひっかかっていた。

 何故だろうか、似ていると言われたのは行動や顔立ちの事ではない気がする。

()()()()? それは、この腕の事じゃねぇだろうな)

 改造された異形の右腕。それを見つめるジン。

 この腕も、元はどこかの地球から(もたら)された物だというが‥‥。



 だが物思いに耽るのを、クロカの大声が邪魔をする。

「どいつもこいつも‥‥! こんな時に浮かれた話ばっかしやがって‥‥お前ら全員脳味噌発情期で固定されてんのか‥‥神経が下半身に直結してんだろクソクソクソ‥‥!」

 地団太と歯軋りを交互に繰り返すクロカ。怒り心頭、頭から湯気が出そうだ。

「なんでお前さんがそんなに怒ってんだよ」

 そう声をかけたばっかりに、次はジンに矛先が向いた。

「うるせー! 腰部振動永久機関マシンが! アホンダラの一つ覚えみたいにハーレムハーレムのぼせやがって! 息から白い粘液の臭いがするんだよお前は!」

「なんで俺がそんな怒られるんだよ。スジが通らねぇ」

 言った覚えも無いハーレム発言を攻められ、呆れて天を仰ぐジン。

 星空だけはこんな日でも奇麗だ。なんか白々しいほどに。



「ええい、さっきからなんじゃ! 横から口を挟むな! わらわはケイト帝国のため、真剣なんじゃぞ!」

 騒がしくなったバルコニーで、今度はヨウファ姫が怒鳴った。

 ところがそこへ、新たな人影が入って来る。

『落ち着くのだ、ヨウファ』

 そう声をかけたのは、ハンマーのめり込んだ竜頭の魔術師——五行の水竜、ヨルムンであった。

 流石にヨウファ姫は姿勢を正す。

「せ、先生!? あ‥‥そうか、先生を探しに行ってたんじゃな」


 ヨルムンはヨウファ姫に近寄り、肩を優しく叩く。

『彼らには魔王軍と戦う使命がある。ケイトの運命は大切だが、それは彼らを妨げていい理由にはならない』

「うう‥‥でも、ケイト帝国が‥‥」

 弱気を見せる姫。

 だがそれを諭すヨルムンの声は、あくまで優しかった。

『まだ父君と姉君が亡くなったと決まったわけではない。今はレジスタンスと協力し、守りを固めなさい。平和が戻る日まで』

 そうまで言われ、ようやく姫は頷く。

「はい‥‥。でも、魔王軍に加えてヘイゴーのケダモノ連中も我が帝国に仇名そうとしています。それが不安で‥‥」

『大丈夫。ヘイゴーがここに全力で攻撃を加える事はおそらくない』

 穏やかに告げるヨルムン。

「そうなんですか!?」

 思わずそう訊いたのはヴァルキュリナだ。

 だがヨルムンは横から言われても落ち着いて頷いた。


『ああ。多分、あの国が一番危険なので。ここを攻める余裕もすぐ無くなるかと』

設定解説


・お前ら全員脳味噌発情期で固定されてんのか


地球の人間は割と本当にそういう生き物らしい。

理由は諸説あるようだが、まぁ繁殖と言う点で見れば有利なのは間違いないだろう。

という事はエルフやドワーフなどの人間外種族は繁殖期とその間という周期があってもおかしくないのだが、浅学ながら、そんな設定のある作品は見た事が無い。

まぁそこら辺は収斂進化とかで説明できるのだろう。知的生命体になっておきながら限られた繁殖時期しかもたない種族は生存競争に敗れて滅び、年中子作りしている人間やエルフが生き残ったのだ。

何にでも欲情できるオークやゴブリンがどのファンタジー世界でも繁殖しているのも納得というものである。

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