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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
258/353

36 帝国 2

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。

ナイナイ(ナイナ):異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。

ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。

リリマナ:ジンに同乗する妖精。

ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。

クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。

ゴブオ:ジンについてきたゴブリン。

オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。

 朝。

 ジンが目を覚ますと、同じベッドの中にナイナがいた。

 ノースリーブのシャツとパンツだけの、下着だけの姿だ。


 と、ナイナも目を覚まし、柔らかい朝日の中でにっこりとほほ笑む。

「おっはよ」

 上機嫌での、どこか甘ったるい囁き声だった。


「‥‥なんでここで寝てるんだ?」

 焦りを抑えて寝転んだまま訊くジンに、ナイナの笑顔に悪戯っぽさが混じった。

「んー? 覚えてないんだ」

 そう言って人差し指を自分の唇にあてる。


 だがジンは笑わなかった。

「酒に入ってるアルコール程度じゃ、俺は酔わねぇ。記憶がとぶ事もねぇ」

 だから覚えているのだ。

 ベッドには確かに一人で入った事を。

「うん。知ってる」

 ナイナは笑いながら、ジンの瞳を覗き込んだ。


 ナイナとジンの視線が交わる。

 しばらく、二人は無言で見つめ合った。


 動揺しつつも考えるジン。

(やっぱり、()()()ねぇ。悪ふざけだろうとナイナイがこんな事をするわけがねぇ)

 そう思いはするが‥‥それを訊いても本当の答えは返ってこないだろう。それはなんとなくわかった。


「‥‥何が言いたいの?」

 結局、沈黙を破ったのはナイナだ。

 ジンに言葉を促している。

「‥‥男にゃ戻らねぇのか?」

 ジンはそう訊いた。

 ナイナの人格が出てから、ナイナイには一度もなっていない。

 ナイナはクスクスと笑う。

「戻って欲しいんだ?」


 また二人はじっと見つめ合う。

 互いに、窺うように。相手が何を考えているのかと、それを読み取ろうと。


 今度も先に口を開いたのはナイナだ。

「ジンってさ。女性関係、おとなしいよね。体、気にしてるの? それでもいいって人がいたらどうするの?」


 ジンの右腕——改造された異形の腕の事である。

 これへ嫌悪の目を向けられた事は確かにある。

 だが今、ジンは、己の右腕などちらとも見ずに、ナイナの瞳を覗いていた。 

「いたら考えりゃいいだろう」


「もういると思うよ?」

 ナイナは言う。

 静かな声で。しかしはっきりと聞こえるように。


 ジンは小さく溜息をついた。

「ならまぁ‥‥考えるか。メシの後で、一日五分ぐらいな」

 そう言って身を起こす。

「ふーん。真剣に考える気は無いんだ。まぁいいけどね」

 ナイナはそう言って、自分も身を起こし、ベッドから出た。



――大盛りの朝飯を皆で食った後、鬼甲戦隊(きこうせんたい) もブリッジへ向かう――



 草原地帯を抜け、Cガストニアは山脈に向かっていた。

 山と山が途切れる、僅かな平地――そこに国境があるのだ。

 ただしケイト国との国境ではない。ケイトは周辺国を支配するケイト()()であり、そこへ着くためには別の国を通過する必要があるのだ。


 遠くに関所を兼任する砦が見えてきたので、ブリッジにてジンはヴァルキュリナに話しかける。

「もうじき国境か。証明証ってのは‥‥」

「これだ」

 ヴァルキュリナは金属製の紋章を取り出した。


 菊の花のような円盤で、中心の円から放射状に線が伸びている。これは花と日の出をイメージした形で、スイデンでは縁起が良い形状だ。



 だが関所ではそう簡単には通してもらえなかった。

 もう一つの大国・ヘイゴーと開戦したため、ケイト側の兵としては傘下に無い国へは慎重にならざるをえないのだ。

「ケイトまで同行する者達を用意します。少しお待ちを」

 守備隊の隊長にそう言われては、鬼甲戦隊(きこうせんたい)は待つしかなかった。



「ま、しょうがねぇ。さて、何して待ったもんかね」

 頭を掻くジン。

 その横でナイナがクスクス笑う。

「部屋に戻って、昨夜からの続き、しよっか」


「おいィ!? ナニの続きだ!?」

 クロカが青筋を立てて反応する。

 ヴァルキュリアも焦った視線をジンへと向けた。

(おいおい‥‥)

 呆れながらもジンが一言ナイナに言おうとした、その時――


 遠くから轟く爆音!

「戦闘だ!」

「なにぃ!?」

 モニターを見ながら叫ぶ、ヴァルキュリナとジン。

 戦闘MAPには黄色と赤の、二種類のアイコンがぶつかりあっている。


 壁にもたれてそれを眺めるオウキ。

「考えようによっては好機だな。ケイト側に味方をアピールする事ができる」

「もう片方の国の人達と戦っているのかもしれないよ?」

 リリマナがそう疑っても、オウキは「フッ」と笑うだけだ。

「構わんだろう。攻め込んでいるのが魔王軍か他の国かの違いだけだ」



『了解した。では我々と共に来てくれ』

 国境守備隊の隊長は、助っ人を申し出ると――少し迷いはしたが――受け入れてくれた。

 開かれた門を通り、ガストニアは隣国へ入る。

 誘導する守備隊ケイオス・ウォリアーの後ろについて、戦闘が行われているエリアへ向かった。



――そして平原の戦場で――



「マジで大国同士か‥‥」

 唸るジン。

 軍の片方にはケイトの、もう片方には大国ヘイゴーの紋章が刻まれていたのだ。

(しかし不自然な気がするな。傘下の国とはいえ、なんでケイトの紋章をつけた機体が戦っているんだ? この国にだってこの国の軍があるだろうに‥‥)

 疑問に思うジン。


 ぶつかりあう両軍を見ながらクロカが呟く。

「割り込むまでもなさそうだぞ」

 ヘイゴーの軍は青銅級の量産型しかなく、数もさほどではなかった。

 数体の白銀機を中心に、魔法も含めた射撃を繰り返すケイト側が次々と相手を討ち取っていく。


 しかしその光景を見ても、なおジンは指示を出した。

「いや‥‥出撃するぞ。手伝う気はあったという意思表示だ」



――ガストニアから四機の白銀級機(シルバークラス)が出た時、もはや戦闘は終わりかけていた――



 魔法の光線を食らって、ヘイゴー側のBソードアーミーが膝をつく。

 出撃はしたもののそれを眺めるだけのジン達。

 国境守備隊の隊長機から通信が届いた。

『問題なかったようですね。それでも皆さんの誠意は見せてもらいました』

 その言葉が終わるや、ヘイゴー側最後の機体が爆発した。


 そして()()()()()()()()()()()()——!


『んな!?』

 驚く守備隊の隊長。

 だが()()()()()()()を受け、ケイト側の機体が次々と倒れていく!

 上空にいるのは――半人半鳥の姿をした、鳥空型の機体の群れ。そしてそれを率いる、白銀級機(シルバークラス)の鳥空型機だった。

 その機体には魔王軍の紋章が刻まれていた――!

設定解説


・そこへ着くためには別の国を通過する必要があるのだ


一応ケイト帝国にも海に面した地域はあるので、海路でなら直接入国も可能。

だがスイデンからそのルートを通るよりは、周辺国を経由して陸路を使った方が早い‥‥と考えていただきたい。

和歌山から京都へ行くのに海路使う奴はいねーよというか。

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