25 転身 6
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。
ナイナイ:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。
ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。
リリマナ:ジンに同乗する妖精。
ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。
クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。
ゴブオ:ジンについてきたゴブリン。
アル:冒険者の少年戦士。
パーシー:スイデン国所属の少年騎士。
コーラル:スイデン国所属の青年騎士。
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。
エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。
オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。
火災対処の為の消化剤も、軍艦ともなればいくらかの用意はある。
燃え広がらないよう現場周囲の木を切り倒し、消化剤をほぼ使い切り、なんとかかんとか森を鎮火させる事はできた。
作業後、事態の報告や確認のため、クラゲ艦Cウォーオーの格納庫に鬼甲戦隊とクイン星輝隊の両方、及びその関係者が集まった。
‥‥が。
悪戯っぽくクスクスと笑うナイナイを前に、ジンは絶句した。
ダインスケンも「?」と首を傾げていた。
アルもパーシーもコーラルもオウキも目を白黒させている。
ノースリーブに腹部の出た、胸しか覆っていない上着。
太腿も露わなホットパンツを腰履き。
この世界の女盗賊にはたまにある格好だが、そういう者でも外套の一つぐらいは羽織る。しかしそれも無い。
何より驚かせたのは――露出した手足や腰回りの柔らかなライン、胸の控えめであるが確かな膨らみでわかる――体が女になっている状態で、それがわかるような恰好をしている事だ。
「え‥‥女だったの?」
戸惑うリュウラ。
「今まで男の子だと思っていましたわ‥‥」
困惑するレイシェル。
クロカが頭を掻いた。
「説明‥‥そういやざっくりしかしてなかったなー」
ジンの腕やダインスケンの複眼など、外部に出ている特徴もあるので、鬼甲戦隊が人造人間である事はクイン星輝隊側にも伝えてはいた。
だが各人の能力まで詳細に話したわけではなく、基本、それぞれの艦に居るわけなので、ナイナイの性別が変わる事は知らなかったのだ。
とりあえず、改めてナイナイの体の事も説明がなされる。
「とゆうわけで、今はナイナだよ。よろしくっ!」
上機嫌で、女性時の名前まで出すナイナイ‥‥改めナイナ。
「名前と性格まで変わんのかあ」
感心したように言うエリカ。
「いやいやいや、そうではなかった筈だが!?」
驚き慌てるヴァルキュリナ。
そんな周囲の反応を見て、ナイナはジンの側に来て上目遣いで見上げる。
「ダメかな?」
「あ‥‥いや‥‥そりゃまぁ他人がどうこう言う事じゃねぇが‥‥」
混乱するジンには、適当に当たり障りの無い返事しかできない。
そんなジンを見て、ナイナは陽気な声をあげる。
「はい! 隊長のジンが認めましたあ! これでオッケーでーす。だからジンって好きさ」
そう言って腕を絡めて密着してきた。
ジンはその感触と小悪魔っぽい笑顔に動揺し、たじろぎながら‥‥ナイナをじっと窺う事しかできなかった。
(おかしい。確かにナイナイだ、偽物なんかじゃねぇ。だがそれならなぜ急にこうも変わった? 魔術だの妖術だので狂わされているなら、俺とダインスケンにはそれがわかりそうなもんだが‥‥)
ナイナイの変化は鬼甲戦隊側を動揺させはしたが、今は優先すべき話もある。
少年戦士のアルは皆に魔術師の少女アリスを紹介した。
「この子を保護したんだ。便宜を図ってくれよ。冒険者のアリスだ」
「え? 魔怪大隊長のジェネラル・ガストでしょ? 知ってるよ」
ナイナが事もなげに口を挟む。
「「「「「「!?」」」」」」」
その場にいる者の半数が仰天した。
そうでない半数は、何を言ったかの理解ができずに呆然としていた。
「ナイナ。証拠は‥‥」
ヴァルキュリナがなんとかそう問いただす。
ナイナは大した事ではないかのように答えた。
「神蒼玉に教えてもらったよ。前の持ち主がその子だってね」
ナイナイが川底で見つけた神蒼玉は、Cガストニアへ持ち帰ってある。
この報告も、それをこの場で聞いた者達を大いに驚かせた。
それを探しに来たのではあるが‥‥だからといって、やはり「あ、そう」とはならない。
そしてナイナの言い分にジンは首を傾げる。
「神蒼玉って記録装置なのか?」
「似たような事をやれなくもないが‥‥」
やはり困惑しながら言うノブ。
クイン家が保管していた物は、レイシェルの前世を本人に見せた。
そうして貰えるよう、大賢者トカマァクが干渉・操作したのだ。
しかしそれは世界でも一、二を争う魔術の知識を総動員しての事。ナイナイにできるとは思えない。
そこでクロカがアルに訊く。
「なぁなぁ。もしかしてあんたに機体をくれたのも、このアリスか?」
「あ、ああ‥‥」
頷くアル。
するとクロカは困った顔で頭を掻いた。
「なら魔王軍の関係者だぞ、ほぼ確実に。あんたが貰った機体、自爆機能こみの遠隔操縦装置が組み込まれてあったからな。あれを修理しなかったのはそういう理由もある」
「「「「「「!?」」」」」」」
その場にいる者の半数が仰天した。
そうでない半数は、何を言ったかの理解ができずに呆然としていた。
「多分、状況次第で盾か地雷の代わりにするつもりだったんじゃないか? 使われる前に見つけて分解しちまったけど」
そう言ってクロカはアリスを見る。
アリスは‥‥
冷や汗をだくだく流しながら、一歩、後ろに下がった。
不穏な空気が流れる。
どう動いたものか判断しかね、皆が行動を決めかねていた。
そんな中、ノブだけは平然と指をふった。青い煌めきが宙を舞う。
途端に「うぐぅう!?」と苦痛に呻き、アリスが頭を抱えた。冷や汗は脂汗へと変わる。
それを見てリュウラは嫌悪感も露わに呟いた。
「またあれやってる‥‥」
【マインドリード】――読心術である。どこまで深く意識へ潜り込めるか、情報量を掴めるかは術者次第ではあるが‥‥。
強力な念を放つノブが、急に力を抜いた。
アリスは荒い息を吐きながら膝をつく。
ノブは「ふう」と溜息を一つ。
「大した抵抗力だ。だが情報一つ読めればこの場は十分。本当に魔怪大隊長ジェネラル・ガストだという、それだけでな」
ノブの魔力から全ての情報を隠しきる事は、魔怪大隊長ジェネラル・ガスト‥‥アリスにも不可能だった‥‥!
設定解説
・この世界の女盗賊にはたまにある格好だが~
そうでなければ全身タイツスタイルかであろう。DOラクエ3の女盗賊もそんな恰好だった。
そのスタイルを忠実に、スピンオフ外伝(Aバンのストーリーの奴)で踏襲したキャラ(MAァムの母)が「破廉恥な格好」呼ばわりされていた。
やはり戦士は賢さが低い‥‥「機能的だから他の職にも広めるべき」となぜ言えんのか。
なおDOラクエ3は女僧侶も前掛け+タイツなので、衣装の互換性を考えると僧侶と盗賊を兼任するのは非常に理に適っている。流石だ。あの外伝を高く評価したい。




