24 転身 5
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。
ナイナイ:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。
ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。
リリマナ:ジンに同乗する妖精。
ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。
クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。
ゴブオ:ジンについてきたゴブリン。
アル:冒険者の少年戦士。
パーシー:スイデン国所属の少年騎士。
コーラル:スイデン国所属の青年騎士。
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。
エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。
オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。
「ジン、どうするの?」
のたのたと地上でもがく三つの上半身を横目に、リリマナが訊く。
「とりあえず、今回はあっちをアテにするのはやめるか」
ジンはそう言うと敵への方へ向き直った。
Cウォーオーへと包囲を狭める敵の群れがあるのだ。
ある程度距離が詰まると‥‥一気に躍りかかって来た!
その先頭に三条の電撃が炸裂!
撃ったSサンダーカブトに、敵の射撃が雨霰と降り注ぐ。
受けるダメージがモニターに次々と表示された。
10ダメージ‥‥ただ当たったというだけの表示ばかりだ。
遠慮なく反撃を撃ち続けるジン。
電撃が、拳が、敵を捉える度に容赦なく打ち倒す。
(敵も無改造じゃないようだが、まぁ問題じゃねぇ)
油断するわけではないが、ジンは全く負ける気がしなかった。
敵兵士も戦闘力差を理解したか、一部は艦への攻撃を――やられている味方を囮同然にして――優先する機体もあった。
飛行型のBボウクロウが数体、弓と短剣を手に上から回り込む。
『ええい、クソ! このままやるしかねぇ!』
『止むを得んか!』
『いきましょう!』
アル、コーラル、パーシーが口々に叫び、地上から三体のクワガタ機が飛び立つ!
ジンが戦っている間に、なんとか元の形態に戻れたらしい。
なお合体の方は諦めたらしい。
三機は内蔵された機銃を撃ちながら敵の群れへ突っ込む。敵機へ近づくや、その大顎で相手を切り裂いた。
なかなかの機動力で、腕の差もあるのか、敵の鳥空型ケイオス・ウォリアーにもひけをとらない戦闘力だ。
クラゲ艦自体も触手を振り回し、敵機へ攻撃を加える。
そうしながら敵が集まって来ると、リュウラは呪文を唱えた。
『【大気の領域、最終第七の段位。大気は変質し崩壊の渦を巻く。荒れ狂う気流は全てを分解する】――デッドリー・エア』
艦を通して増幅された呪文が放たれ、やおら竜巻が発生した。
竜巻に呑まれた敵機には瞬時に亀裂が走り、次々と砕けていく!
(どうやら俺がこれ以上護衛する必要もなさそうだ。となると‥‥)
そう判断したジンはその場を離れた。
まだ敵が数機、艦へと向かっているのは見える。だがそれは艦とクワガタ機に任せ、ジンは残りの敵へと向かう。
「ゴールドライド!」
ジンは新機能を発動する。
カブトの中の神蒼玉が全身にエネルギーを送り、装甲が黄金に輝いた。
そしてカブトは走る。敵の群れを次の攻撃へ捉える絶好の位置へ駆け込み、そして止まる事なく即座に――
「マキシマム、サイクロン!」
リリマナが掛け声をかけた。
花開く電光の滝!
貫かれて次々と爆発を起こす敵機の群れ。
煙燻ぶる大地に動く物無し。
敵部隊の約半数が一撃で吹き飛んだ。
移動と発射を停止も溜めも無くこなせる能力は、MAP兵器の絶大な補助となっていた。
クラゲ艦へ向かった数機の部隊も、触手とクワガタ機達に迎撃されて次々と落ちる。
そして、艦やカブトへと向かわなかった敵兵士機は――
『ケケェー!』
Sブレイドバジリスクの刃が一閃、真っ二つにされ――
『ザウルファイヤー!』
ザウルライガーの炎が吹き荒れ、焼かれて爆発し――
――やはり全滅していた。
無論、兵士達も数を頼みに攻撃はしかけた。
だがバジリスクには掠りもしなかった。クローリザードをさらに上回る運動性と、ダインスケンの反射速度は、雑兵どもが捉えられる域に無かった。
ザウルライガーには当たっても効かなかった。この機体の装甲強度はカブトと同ランクにあり、多少改造されただけの量産機の武器ではそもそも通じなかったのだ。
不甲斐ない部下達が一掃されたのを見て、マスタートーチが怒りに吠える。
『おのれ! 崩壊の炎を食らえ!』
サラマンダーが炎の息をバジリスクとライガーへ吹きつけた!
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ルストナパーム(MAP)
射 攻撃力3800 射程1〜7幅3
装甲低下2LV
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敵の武器データを見て顔をしかめるジン。
「MAP兵器にまでデバフを入れてきやがったか‥‥何が燃えてるんだ、あの炎は」
ジンの疑問は他所に、炎の帯は相手を呑み込む!
だがバジリスクは跳躍一つ、高々と跳んで炎を避けた。
一方、ザウルライガーは炎に巻き込まれた。しかし――
『もはやデバフは受けん!』
力強く言い放ち、炎を撥ね飛ばす!
新たに装備した【フルコーティングアーマー】は、炎の威力と状態異常からライガーのボディを守った。
怯むマスタートーチ。
『ぐう、そんな装備が‥‥』
そう呻く間に、ダインスケンが声高に叫んだ。
『ケケェー!』
Sブレイドバジリスクの装甲が黄金に輝く!
レイシェルから貰った神蒼玉は、この機体に搭載された。
【ゴールドライド】の機能とともに。
『ケケェー!』
再度叫ぶダインスケン。
その声に応え、クラゲ艦のハッチが開く。そして中から凄まじい勢いで飛び出す物が一つ。
超音速で空気を突き破り飛ぶそれは、先端が高速回転するドリルになっているミサイル!
ケイオス・ウォリアーがひと抱えする程の大型のそれが、戦場めがけて真っ直ぐに飛ぶ。
「なんだありゃあ!?」
驚くジン。
リュウラが淡々と説明する。
『ドライバーブースター。新兵器だけどどの機体に装備させるか決定してなかったそうだから持ってきた』
その間にもブースターは飛ぶ。
バジリスクは跳んだ。ブースターに手を伸ばす。
ブースターの横には取手がついており、それを掴んだ。
ブースターの速度も勢いも質量も全て巧みに抑え込み、操り、地面に着地し、スピードを利用してさらに上乗せして加速し、走る。
真っ直ぐに、敵へ。
ほとんどゼロ距離まで迫り、大きく振りかぶって、全力で投げつけた!
ブースターが突き刺さり、サラマンダーのボディがくの字に折れる。
『おごおお!?』
マスタートーチの苦悶の声とともに、サラマンダーがブースターとともに吹っ飛んだ。
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ドライバーブースター
格 攻撃力6500 射程P1〜4 戦意130 弾数1
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新兵器のデータを見ながらジンは呆れる。
「弾数1かよ‥‥しかもあんな使い方で、何に装備させる気だったんだ?」
『ぐ、あ‥‥おのれ‥‥』
吹っ飛ばされながら呻くマスタートーチ。だがゴールドと同クラスのHPをもつサラマンダーはこの一撃でさえ致命傷にならない。
‥‥が、一撃では終わらなかった。
『ケケェー!』
その雄叫びに顔を上げたマスタートーチは、頭上から刃を繰り出し襲い来るバジリスクを目の当たりにする。
【ゴールドライド】により覚醒した操縦者と機体は、己が吹き飛ばした敵への追撃をやってのけたのだ。
一閃、切断!
突き刺さったブースターからサラマンダーを解放したのは、ボディを大きく切り裂いた斬撃だった。
地面に転がるサラマンダー。
だが謎の強化を施されたこの機体はなお耐えた。
しかしそこに、ザウルライガーが五つのドリルを回転させて突撃する!
『ドリルフィーバー!』
その巨大から噴き出る緑色の粒子は、ブレイブドライバーの力による勇気の輝き。
必殺の一撃がサラマンダーを貫いた!
その全身で起こる爆発は、機体の能力による炎ではない。
『ぐおぉ‥‥俺は燃え尽きる‥‥』
無念の声をあげるマスタートーチ。
サラマンダーは爆発し、吹き飛んだ。
戦い終わり、リュウラは全機に指示を出す。
『次は消火作業を。その間にレイシェル達も来ると思うから』
「はいな、了解っと」
返事をしながらジンは燃える森へ目をやった。
設定解説
・新兵器だけどどの機体に装備させるか決定してなかったそうだから持ってきた
ファンデム伯爵は試作品や試験途中の装備品をいくつも有している。
その一つ【ゴールドライド】が成功したので、他の試験品も使えるのではないかと判断し、リュウラはそれらを持ち出す事にした。
合体変形クワガタもその一つだし、ドライバーブースターもまたその一つ。
・ドライバーブースター
使用登録されている機体からコールが入ると艦から射出し、機体が受けとってそのまま敵に叩き込む大型のランス。
理論上はどんな機体にも「装備」できる汎用性の高い武器なのだが、使用試験する度にこの武器をキャッチし損ねて機体が粉砕される事故が起きた。
超音速で飛んでくるドリルミサイルを上手く掴んで敵へぶつけるノウハウが確立される前にテストパイロット達が試験拒否デモを起こしたので、しばらく冷却期間をおくため倉庫の隅で埃を被っていた。
今回、リュウラがそれを見つけ、動く事を確認した上でダインスケンに勧める。
「ゲッゲ?」と首を傾げたのを了解だと解釈し、新型機に搭載されるに至った。




