23 転身 4
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。
ナイナイ:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。
ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。
リリマナ:ジンに同乗する妖精。
ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。
クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。
ゴブオ:ジンについてきたゴブリン。
アル:冒険者の少年戦士。
パーシー:スイデン国所属の少年騎士。
コーラル:スイデン国所属の青年騎士。
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。
エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。
オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。
森を燃やし、木々を押しのけ、ジン達に迫る敵機FSファイヤーサラマンダー。
だが地面が揺れ、足元の地面が噴き上がった!
『やらせん!』
力強い声とともに飛び出すのは、戦車形態のドリルライガー!
ライガーは叫ぶ。
『タイタンケラトス!』
その声に応じ、大きな咆哮が響き渡った。
にわかに暗雲が立ち籠り、地平線の向こうから巨大な恐竜が走り出る。
それは装甲で覆われた、人造のトリケラトプス!
『フォームアップ!』
ライガーの声に合わせ、人造恐竜は変形した。
前足・後足がボディに収納される。
後ろ半身は二つに分かれ、腿が伸び、二本の足に。
前半身は腰と下半身に。
頭部は胸に。
そしてドリルライガーは二つに分離し、大きな両腕となった。
両腕は恐竜の変化したボディにドッキング!
同時に兜を被った騎士のごとき頭部がボディから出現!
両目が輝き、口はフェイスガードで覆われている。
『巨竜合体! ザウルライガー!』
変形合体したライガーの声が雄々しく響いた!
ザウルライガーとサラマンダーが激しい打撃戦を始めた。
剛腕と炎の腕が互いを打ち合う。それを横目に、ジン達は散開して走り出した。
「お前らはその子を保護してやんな」
騎士コーラルに言うジン。
アルとパーシーが頷き、少女魔術師のアリスを「こっちだ!」と誘導する。
ジンはリリマナを肩に乗せると、浮遊ボード・ジェットトルネードに跳び乗った。途端にボードは天高く昇り、リリマナの「うっひゃァ!」という悲鳴を残して森の上空を風よりも速く飛ぶ。
――Sサンダーカブトは山裾の岩陰に立っていた――
ボードは操縦席の前へ来ると、バックでその中へ入る。座席下の隙間にぴったりと嵌るボード。これは操縦席の床板を兼ねる形で収納されていたのだ。
腰を座席へ下ろし、前面ハッチを閉めれば、そのまま火を入れて操縦する事が可能だ。
カブトの複眼でできた目に光が灯る。
ジンと一体化したカブトは翅を広げた。地を蹴って空へ‥‥!
――燃える森に戻るカブト。戦況は一変していた――
「敵、増えてるじゃん!」
リリマナの批難するような声。
ライガーとサラマンダーは間合いを離し、数種の青銅級機がライガーを遠巻きに囲んでいた。
「部下を呼びやがったか。ならばこっちも味方増援だからよ!」
ジンは叫び、カブトはライガーの隣へ着地する。
『来たな‥‥鬼甲戦隊!』
敵意と歓喜の混じった声とともに、モニターに敵の操縦者が映った。
「なんで操縦席で燃えてるのォ!?」
素っ頓狂な声をあげるリリマナ。
そう、敵は全身が比喩なしで燃えていた。
全身無毛で服も来ていない、動くマネキンのような男が、瞳の無い目で笑う。
『このマスタートーチは発火能力を持つアンドロイドだからな。そしてこの機体は、暗黒大僧正が直々に御力をくだされ、強化された特別機!』
その声とともにFSサラマンダーもまた全身から炎を噴いた。
「それでFSとかつけて特別を強調してんのか。何の略なんだか」
呆れるジンに、トーチは『ククク』と笑う。
『実は知らん。まぁ最終か恐怖か何か+白銀だろう。機体性能がもはや黄金級機に近いのは間違いない!』
その声を聞きながら、ジンは敵機へスピリットコマンド【スカウト】をとばし、ステータスをモニターへ映す。
「なるほどな」
表示されたHP、実に35000。
海戦大隊長の黄金級機が40000‥‥及ばぬまでも後一歩という所である。
(こんな奴らを複数用意できるだと? 魔王軍に黄金級機、要らねーじゃねーか?)
ジンの疑問を他所に、マスタートーチの勝利を確信した声が響く。
『さあ、次期大隊長の力を見せてやろう!』
しかしその時。戦闘MAPに新たな機体が映った。
しかも識別色はジン達と同じ。
燃える森の上空に現れたのは、浮遊するクラゲ艦だった!
『お待たせ』
『Cウォーオー!』
リュウラの声に喜びつつも驚くライガー。
『うん。運んできたからさっそく出すわ』
リュウラが言うや、Cオーウォーの格納庫ハッチが開く。
『なにィ!?』
状況の変化に戸惑うマスタートーチ。
クイン星輝隊をCガストニアに乗せ、Cウォーオーは街に残っていた。
なぜかというと、新型機ができたら運搬するためである。
それがここに来たという事は――新型機をここに運んできたという事だ。
『Sブレイドバジリスク、発進』
リュウラが命令する。
格納庫の奥から一機の白銀級機が飛び出した。
『ケケェー!』
ダインスケンの声が轟く。
それもまた鎧を纏ったリザードマンといった姿だ。
無論、鎧は白銀級機に相応しく、運動性を下げない範囲で増量・強化がなされている。
体色は鮮やかな緑。特徴的なのは‥‥頭頂部に帆のようなトサカがあること。
着地した新型機・Sブレードバジリスクは前傾姿勢で身構えた。
その手の甲から鋭い刃が伸びる。
『ふん! 竜型機のタッグで挑もうというか!』
マスタートーチがそう言うと、サラマンダーは全身から火を吹きながら迫って来た。
それと同時に敵の兵士達の機体も包囲を狭める。
「おっと、艦の防衛が要るな」
敵兵士の半数が艦に向かうのを見て、ジンはカブトをそちらへ後退させた。
そこへ新たな通信が入る。
『我々も助太刀する!』
上空を高速で飛んで来るのは、三機のクワガタ機!
なかなかの飛行速度で、Cガストニアや他の機体より早く戻って来たのだ。
『ええい、また増援か! 卑怯な!』
「えー、そっちの方がまだ多いじゃん。意味わかんないもン!」
苛立つトーチ、言い返すリリマナ。
そんな争いを他所に、艦から三機のクワガタ機へ通信が送られた。
『いよいよその力を見せる時。ざっとだけど、操作は教えたわよね? 先ずは第一形態。コールは「チェンジ・フォーム1! スイッチオン」よ』
コーラル、パーシー、アルは、リュウラの指示に従い――躊躇いと戸惑いがありありだったが――教えられたとおりに操作する。
『『『チェンジ・フォーム1! スイッチオン』』』
クワガタ機が高速で飛行しながら変形した!
翅と脚が折りたたまれ、大顎が分離し、両腕が生じ、フェイスガードで口元を覆った騎士のごとき顔が現れる。
全く同じ変形を同時に行う三機。
巨人の上半身が三つ現れ、そして、並んで奇麗に地面に落ちた。
合体失敗‥‥!
(原因:全機が同じ部位になろうとしたから)
『なんで教えた通りにやらないの? スイッチ1が上半身、2が下半身、3が背中になる‥‥そう教えたよね?』
墜落した三機へ、苛々したリュウラから通信が飛ぶ。
『フォーム1は‥‥私がスイッチ1、パーシーが2、アルが3を押すんだったか?』
白い上半身から、コーラルの困った声。
『すいません、フォーム1と聞いてつい僕もスイッチ1を押してしまいました』
青い上半身から、パーシーの申し訳なさそうな声。
『つーか分かり難いだろ! 番号じゃなくて部位の名前で書けよ! 手とか足とかさ!』
赤い上半身から、アルの怒り声。
リュウラが『はあぁぁ‥‥』とクソでかい溜息をつく。
『腕の未熟をインターフェイスのせいにするなんて‥‥呆れた』
『不親切な仕様のツケを操縦者に回すなよ! それにこれ、クワガタに戻らねーぞ!』
アルはまだ怒っていた。
リュウラが『はあぁぁ‥‥』とクソでかい溜息をつく。
『合体解除とクワガタへの変形はスイッチ三つ同時押しって教えたよね?』
『なんでそこで変な操作が入るんだよ! 解除兼戻るスイッチを用意しろよ! 戦闘中に高速で動きながら操作するんだぞ、これ!』
アルはまだ怒っていた。
リュウラが『はあぁぁ‥‥』とクソでかい溜息をつく。
『文句ばっか‥‥いつも都合のいい機体に乗れるのが前提なんて、三流』
『こいつは特別都合悪すぎだろ! 特殊な機能前提なら練習させろよ! マジで口頭説明一回だけだったじゃねーか!』
アルはまだ怒っていた。
ジンはそれを困りながら眺めていた。
迫る敵機も、ちょっと困りながら遠巻きに眺めていた‥‥!
設定解説
・FSファイヤーサラマンダー
イモリを模した深海型ケイオス・ウォリアー。
水適応Sを誇りながらも強力な発火能力をもち、全身から6000度、口から60000度の高熱火炎を放つ。
もちろん水中では炎の威力が激減するので、機体と武器の適応が嚙み合っていないという問題点を孕む。
暗黒大僧正に強化してもらい、元は白銀級でありながらそれを超える性能となった(地形適応の問題は未解決)。
・マスタートーチ
故郷では第二次大戦時に造られた戦闘用アンドロイド。
全身からの発火能力を武器に敵を焼殺する自立型戦闘兵器。
しかし敵国の地雷原を突破しようとした時、周囲の地雷をことごとく引火させて盛大に爆死。
粉々に吹き飛ぶ筈だったが、インタセクシルの魔王軍に召喚されて間一髪助かる。
同じく発火能力を持つSファイヤーサラマンダーを乗機に選んだが、そのせいで水に入ると壊れる身なのに海戦大隊に編入される(機体が深海型だったので)。
それを恨んで大隊長の座を狙い、エイリアンズに参加する事となった。




